第54話 目覚めはじめた力
オッシーが悪い妖怪にさらわれた事を知った俺はショックと何も出来ない悔しさを同時に味わった。だが、天童とクロちゃんの会話から何かを掴みかけたとき、聞き覚えのない男の声がした。そして、俺の中の何かが目覚めた。
〈パズルを完成させろ……〉
『カミカクシヲワープゾーンノスルヨウカイイリグチトインターネットジョウデグチノハイパーリンクヨウジガユシッポセンサーハヨウキシカウカイサレルメホシドコロカホウスコドモノワライゴエラ、玉希ちゃんは僕が呼んだんだよ』
ぐああぁぁ!!頭が割れそうだ!!いろんな人の声がいっぺんに聞こえて脳みそをぐちゃぐちゃにされたような気分だぜ……しかもみんな何言ってるか訳分かんねえし……復活の呪文みたくなってんじゃん。唯一聞き取れたのはオッシーのエンジェルボイスだけだよ……
〈ダメダメじゃん……〉
おーい、どこのどいつか知んねえけどよ、こんな訳の分からんこといきなりアドリブでやれって言われても出来るわけねえじゃねえか!!そもそも何をやっているのかも分かんねえよ!!
〈それもそうだな……では、まずパズルのピースを形作るところから始めよう〉
『カミカクシヲスルヨウカイ、ワープゾーンノイリグチトデグチ、インターネット上のハイパーリンク、メホシドコロカモクゲキジョウホウスラ、ヨウジガユウカイサレル、コドモノワライゴエ、シッポセンサーハヨウキシカ、玉希ちゃんは僕が呼んだんだよ』
うおおおぉぉぉ!!頭が割れるううぅぅ!!だが、さっきよりもはっきりとした声になったぞ。
〈そうだろう?あと少しでお前は答えにたどり着く……〉
いや、待ってくれ。その前にこの頭痛は何とかならないのか?このままじゃ答えにたどり着く前に三途の向こう側にたどり着いて死んだ爺さんにハグしそうなんだが……
〈その心配はない……〉
そうか……それは良かっ……
〈なぜならお前の祖父は、もっと女の裸が見たいと言う未練にとらわれ成仏できずに現世を彷徨っている。主に女子更衣室辺りを……〉
おじーちゃーん!!そんな下らない理由でこの世を徘徊しないで!!お願いだからとっとと成仏してよ!!いっそのこと消滅してよ!!
〈そんな事より続きをしてもいいかな?〉
ああ、そうだったな……よし腹をくくったぜ!!死ぬほど痛いが死ぬわけじゃねえ!!オッシーを助けられるなら耐えて見せる!!さあ、来い!!
〈うむ。では、行くぞ!!〉
『神隠しをする妖怪、ワープゾーンの入り口と出口、インターネット上のハイパーリンク』
これは……天童の声……?
『目星どころか目撃情報すら、幼児が誘拐される』
天童と話していた妖怪のお兄さん……?
『子供の笑い声、尻尾センサーは妖気しか』
玉希ちゃんにクロちゃんの……ん、待てよ……?
『玉希ちゃんは僕が呼んだんだよ』
オッシー、お前……そうか、そういうことか……
「ぐ……!!」
痛え……痛えけど……けど、痛い思いをした甲斐があった。100%とは行かないまでも8割がた分かったきた。礼を言うぜ、謎のオッサン。
〈ふ……私は何もしていない。お前の中にくすぶっていたものに火をつけたまでの事……礼には及ばんさ〉
それっきりオッサンの声は聞こえなくなった。が、今はそれ所じゃねえ。
「おい、天童」
「何だよ管理人さん」
「俺が案内してやるよ……奴らの待ってる裏山神社へ」
「は……?」
天童は……いや、天童だけじゃない。みんながきょとんとしているので俺は一から説明してやる事にした。
「犯行の痕跡どころか目撃情報すら残さずの誘拐するなんてこれはもう“神隠し”しかない」
「ああ……それは俺にも分かるよ。だが、なんで裏山神社なんだ?」
「声がしたんだよ」
「声?」
「ああ、子供たちの笑い声がな」
この言葉にクロちゃんは敏感に反応した。
「そうか!!あの時の声はさらわれた子供たちの声だったのか!!」
「たぶん……なんだけどな」
「いや、十分可能性は高いよ!!異界ってのはこの世界とは別次元にあるものじゃないんだ。実は襖一枚隔てた隣の部屋のような世界なんだ。だから、声が聞こえてもおかしくはない」
「それに、あの時クロちゃんの尻尾センサーは妖気の反応を捉えた。つまり、あそこには妖怪がいた」
「それも、オイラや玉希ちゃん以外の妖怪が!!」
そういう事。つまり、あの裏山神社が子供を誘拐した妖怪のアジトだって事だ。てか……つくづくありがたみのない神社だな……今度、賽銭箱に犬のうんこでもいれてやろうか?
「よーし、それだけ分かれば十分だ」
「天童……?」
「あとは俺に任せてくれ。昼飯までには戻って来るぜ」
「いや、それはダメだ」
「何でだよ、管理人さん。昼飯ぐらいいいじゃねえか」
「そっちじゃねえよ!!一人で行くなって言ってんの!!」
「はぁ?なんでだ?」
まあ、こいつにとっては当然の疑問だよな。
天童は今まで一人で戦ってきたんだ。そして勝っていた。だから、今回も一人で何とかできるとたかをくくっているんだろう。だが、それは間違いだ。
「いいか、天童。良く考えて見ろ。お前一人で何とか出来るんなら、オッシーはなぜ誘拐犯の事をお前に教えなかったんだ?」
「…………は?」
「だから!!お前一人で片付くような相手なら、オッシーは昨日の時点でお前にその事を教えているはずだ。そうすりゃお前がカタパルトに乗って誘拐犯皆殺しにして事件解決だろ?」
「だろ?じゃねえよ。何、人を大量破壊兵器みたいに言ってくれてんだよ……俺だって相手がギブすりゃ殺しゃしねえよ?」
「あ、そうなんだ……てか、そういうことじゃなくてだな。敵が複数いてその中にお前でも敵わないような化け物がいるかもしれないってことだ」
「…………」
一騎当千、獅子奮迅のこいつにとってはそんな奴がいるなんて、やっぱり信じられないか……
「なるほど……それはあり得るな」
と、思いきや意外にも納得してくれた。
「俺でも敵わない強敵がいる……だから、あのチビ助は待ったのか……そいつを何とかできる助っ人が現れるのを……」
「ああ、そしてその助っ人が昨日登場した、と……」
俺達は同時に桜色の艶やかな着物をきた少女を見つめた。金色に輝く大海原のように波を描いた長い髪をかきあげ、玉希ちゃんはうなずいた。
「私の出番のようですね……」
「だったらミイナも行くー!!」
玉希ちゃんに先輩が抱きついた。なんか楽しそうな顔してるけど、状況分かっているのかな、この人は…………いや、分かっているから、お留守番が嫌なのか……でも、この娘も危ない目にあわすのは……
「では、一緒に行きましょう」
「え!?ちょ、玉希ちゃん?そんなあっさり決めないでよ!!」
「なんですか、良平君?」
「分かってるの?天童でも勝てないかもしれない妖怪の所から子供達を助けに行くんだよ?めちゃくちゃ危険なんだよ!?」
「ほほう……それはつまり私は危険な目に合わせてもミイナちゃんはそんな目に合わせられないと……?そういう事ですか!?」
「え、あ、いや……」
やべえよ、悪い妖怪に殺される前に今ここでこいつに殺されそうだよ。すでに懐に手突っ込んでるよ。出てくるよ、禁断の妖術、トカレフ君が!!
「おーい、お二人さん。夫婦漫才はその辺にしてそろそろ行こうぜ。時間が惜しい」
「そ、そうだな。天童の言う通り、善は急げだよ」
「で、最終的に何人で行く……?」
「は……それ俺が決めるの?」
「まあ、普通は俺が一人で行ってどうにかするんだが、今回は勝手が違うんだろ?それに今日のあんたは何だかさえてる。だから、あんたに作戦をたててもらったほうがいいような気がするんだ」
んな事言われてもな……う〜ん、それじゃ……
「神社に乗り込むのは俺と天童と玉希ちゃんと先輩にしよう。子供だけの方が相手の油断を誘える」
「なるほど……」
「烏丸さんとクロちゃんは俺達が敵の注意をひきつけている内にオッシーと子供たちを助け出してくれ」
「カラス天狗は隠密行動が得意だからね……お安い御用だ」
「美樹ちゃんは危ないからお家でお留守番を……」
“ブンブン”
「え……?一緒に行くの」
“コクリ”
「え、でも危ないよ……?」
「んー!!」
どうしたんだ?美樹ちゃんは俺の忠告なんか聞く耳持たない様子で、俺の腕の中から飛び降り地面に仰向けになった。
「おい、美樹。お前まさか“あれ”をやれってのか……?」
“コクリ”
「ち、しゃあねえな……」
“あれ”……?あれって何だ?何をする気なん……!!おいおい、天童の奴刀なんか取り出して何をする気だよ!?
「おい、天童!!」
「ふん!!」
“ザク”
やっちまった……天童の刀は完全に美樹ちゃんの体を貫通し地面に突き立てられている……これじゃ、助からな……ん……いや、待て。
美樹ちゃんの体が透けている……美樹ちゃんの体に刀を突き刺したと言うより、突き通したと言った感じだ。美樹ちゃんも平気そうな顔しているし、これはまじないか何かなのか……?
「彷徨える霊よ……我が刃の力となれ!!」
「な……!!」
美樹ちゃんの体が刀に吸い込まれ刀身が赤く染まっていく……これは……一体どういう事なんだ……?
「おい、天童……こりゃ……」
「見ての通りさ。美樹は……肉体を失った魂だけの存在……あの姿を維持しているのがやっとで、言葉を喋ろうものなら口から魂魄が抜けちまうんだ……」
「それでさっきあんなに苦しそうにしていたのか……」
「そして、俺の刀と合体して妖刀になる事ができるんだ。その名も鬼桜ってな」
「…………なあ、天童。どうして美樹ちゃんは……」
「そいつは…………企業秘密だ」
「そっか……」
天童の今にも泣き出しそうなほど悲しい顔を見た俺はそれ以上の事は聞けなかった……でも、そうでも無い奴もいた。
「バカですね、天童君」
「あん?どういう意味だ?」
「美樹ちゃんが幽霊だなんて……あんなかわいい顔で笑う子が死んだなんて思っているんですか?あの子はちゃんと生きていきますよ」
「玉希、お前……」
「そう、あの子はね……」
玉希ちゃん……
「プラズマの集合体よおおおぉぉ!!」
「はぁ!?」
「プラズマよ、プラズマ!!幽霊なんていてたまるかああぁぁ!!」
ああ、そういえばそうだった……君は幽霊とかオバケが大嫌いなんだったね……でもね、プラズマの集合体ってなんだよ……幽霊より恐いよ……あと、今のお前の顔も怖いよ……?
「なあ、管理人さん……本当にこんな奴が役に立つのか……」
「えっと……どうなんだろう……」
ほんの少し不安を抱えながらも俺達は悪党妖怪退治&子供達救出作戦に出発した。




