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第51話 良平の父(前編)

 徒然町の商店街。古いアーケードの下には八百屋に魚屋、おもちゃ屋はもちろんの事、高級ブティックやゲーセン、雑貨屋、ペットショップ、呉服店、本屋、etc……と何でもありで、駅前にデパートが出来て以来買い物客は減ったものの、人の流れは絶えない。

 そんな商店街に、すれ違う人全てが振り返り、思わず見とれてしまうほどの美少女が二人、仲良く手をつないでおしゃべりをしながら歩いていた。それはもちろん、先輩と玉希ちゃんである。そして、俺と天童は前を歩くそんな二人を悲しい目で見つめていた。


「なあ、天童君……」

「なんだい、管理人さん……」

「あんなにかわいい子が二人もいるのに両手に花とはいかないな……」

「ああ……そのかわり、両手にどっさりと大量の荷物があるぜ……」

「男の……」

「宿命か……」

「「はぁ……」」


 俺たちは同時にため息をついた。さて、何がどうしてこうなったか順に説明していこう。


 時をさかのぼる事30分前。いずこかへ旅だったクロちゃんを見送った俺たちはこれからどうしようかと話し合った。そして4秒でクロちゃんに新しい犬小屋を買ってあげようという結論に至ったのだが、玉希ちゃんがこれに猛反発。俺にバズーカ砲を向けるなどちょっと・・・・乱暴な事もした。けど、


「ミイナがクロちゃんの変わりに一緒に寝てあげる〜」


 という先輩の無邪気な発言に、クロちゃんズハウス購入を承諾してくれた。

 そして、商店街に来た俺たち4人はクロちゃんの犬小屋を買うついでに、オッシーの子供服も購入した。まあ、これで帰ってりゃ良かったものの、先輩に「ミイナにも〜」と甘えられ、ついレディースのショップに……そしたら、玉希ちゃんまで「あら、じゃあついでにあたしも……」と呉服店にて新作の和服を……さらに買うだけ買って彼女たちはその荷物を全て俺と天童にたくし、今に至る……


 ねえ、君たちは知ってるかな?服って大量に買うと結構重たいんだよ?特に和服ってかなり重たいんだよ?ていうかさ。ぶっちゃけお前らの方が腕力あるんだからお前らが持てよ。お前らのものだし……なんて事は口が裂けても言えない。それに女の子の荷物を持ってあげるのは紳士として当然だからな。


「しかし、玉希ちゃんこれ全部自分のお金で買ってたけどよくそんな金があるな……」

「ああ、管理人さんは知らねえかもしれねえが、妖狐族ってのはあの手この手で金を集めるのが得意らしい。中には相当あくどいやり方をする奴もいるらしいぜ」

「あくどいねえ……ま、どんなやり方か知らんがお前よりマシだろ」

「え、なんで?」

「…………」


 えっと……天童君?君はひょっとして記憶喪失なのかな?昨日のお昼ごろの出来事テロを覚えていないのかな!?それとも、君の中では闇金事務所に殴りこみかけて、中にいた奴を半殺し(あるいは皆殺し)にして、金を強奪したあげく、そこにRPG、いわゆるロケットランチャーをぶっ放すという行為はあくどいとは言わないのかね!?

 まあ、いいや。俺も昨日の出来事はなかった事にしたいしな……なんて事を考えていると


「良平君!!」


 いきなり玉希ちゃんが抱きついてきて、俺は思わず荷物を落としそうになってしまった。かと、思いきや今度は


「管理人さん!!」


 先輩まで……一体どうしたってんだ?訳が分からん。俺に分かる事はただ一つ。この状況が非常に嬉しいという事だけだ。ビバ、主人公!!とか言ってられないのも主人公の悲しい設定さだめよ……ここは一つ、天童君にこの状況を解説してもらいましょう。


「おい、天童。これは……」

「ああ、これが世にいう両手に花現象ハーレムだ」


 はい、聞いた俺がバカでした。何が世にいう両手に花現象だ。普通にハーレムっていや分かるよ!!むしろ、そっちの方が分かりやすい!!


「そうかもしんねえけど、そうじゃなくて!!この娘たちは何に怯えているんだって聞いてるんだよ!!」

「さあ……それは俺にも分から……!!」


 とたんに天童の顔がこわばり、全身に緊張が走った。何事かと思い、天童の視線の先に顔を向けるとそこには一人の男がいた。その男を見た瞬間、俺は全身に鳥肌が立つのを覚えた……

 よれよれになった灰色のスーツ……黄ばんだYシャツに映えすぎるド派手ながらのネクタイ……元は黒いものであったと推測されるベージュの革靴……バーコードハゲに片方のレンズが割れたメガネ……

 これは……この男はまさか…………………………悪い。さんざん引っ張っといてなんだけど、やっぱりさらっと行くわ。だって別にこのオッサンはそんな大層な人間じゃねえから。何を隠そう俺の……


「嫌ああぁぁ!!良平君!!あいつは間違いなくオバケです!!」


 え、いや……ちょ、玉希ちゃん?違うよ?あれはオバケじゃないよ?


「ううん、違う……ミイナには分かるの!!あれはもっと恐ろしい怪物なの!!」


 ううん、違う。先輩の方こそ全然分かってないよ?あれはそっち系じゃないからね?


「三人とも下がってろ!!野郎……この俺に妖気を感じさせねえなんて……」


 天童君?そんなもん感じるわけないよ?てか、感じてくれたら俺も困るから。だってそのオッサン、俺の実の父お……


「おい、良平!!(眼球親父の声)なんじゃそのかわいい子ちゃんたちは!!(眼球親父の声)わしにも紹介せい!!(眼球親父の声)」


 や、知らねえなこんな人。父親?何言ってんの?こんな変なおじさんが俺の親父な訳ないじゃん。だいたい俺の両親は10年前の事故で死んだから。そういう設定だから。おーい、誰かSATを呼んでくれ。ここに変質者がいるから。すぐに射殺してもらって。あ、天童。お前でもいいや。今すぐこいつを殺せ。


「おい、良平(眼球親父の声)なぜ無視をするのじゃ(眼球親父の声)こっちを見んか(眼球親父の声)」

「うるせーよ、しつけーよ、うぜーんだよ、きもいんだよ!!今すぐその喋り方やめねーとてめーの目ん玉えぐりとってリアル眼球親父にすっぞ、ゴラァ!!」

「まあ、落ち着け我が息子よ。しかし、その子たちは本当に誰だ?ていうか、お前のなんだ?出来れば出会いから具体的に説明してくれ」


 超うざいんですけどおおぉぉ!!殺してもいいかな?いいよね?日本の法律じゃムカついた場合に限り殺しても違法にはならなかったよね?おい、天童!!ちょっとデザードイーグル貸せ!!


「この子たちは別にそう言うんじゃないから……ただの友達だから。ねえ、先輩?玉希ちゃん?」

「うん。あたし達はただ一緒のアパートに住んでるだけだよ」

「そうです。でも、良平君のためなら毎日お味噌汁を……きゃ♪」


 ちょっと、先輩?それだと俺たち同棲してるみたく聞こえちゃうんですけど……あと、玉希ちゃん?お味噌汁を何?君は飲むだけでしょ?作るの俺でしょ!?誤解を招く言い方しないで!!


「おいおーい、良平君?おじさん確かに頑張れって言ったけどもさ。なに?そういう風にガンバちゃったわけ?しかも同時に二人も?やるね〜ひゅ〜」


 うるせえ、ハゲ親父!!なに嬉しそうな顔してんだよ!!少しだまってろ!!殺すぞボケエェ!!


「お二人さん、それじゃちょっと分かりにくいんで別の言い方でお願いします」

「そっか……あの、ミイナはそういうんじゃないよ。ただのペットだから」

「あたしは妻です。昨日も良平君に…………抱かれました♪」


 おいいぃぃ!!何だよ、その誤解と読者の殺意を招く言い方は!!お前らわざとやってんだろ!!ぐるだろ!!


「お、おいJ太郎……どういうこと?え?何?まさかまさかの3人同時?確かにお父さん頑張れって言ったけどもそこまで頑張っちゃたの?お父さんだってまだそんな経験ないのに……」

「うるせえよ!!誤解だよ!!何あぶねえキーワード口走ってんの!?つーか息子の名前を間違えんなよ!!いろんな意味で!!」

「分かってる……大丈夫だ……父さんちゃんと分かってるから……母さんにも警察にも黙っとくから……」

「何一つとして分かってねえだろ!!なんでババアと警察が出てくんだよ!!お前は自分の息子が信用できねえのかよ!!」

「自分の息子だから信用できねえんだよ!!実際父さんのもう一人の息子は緊張気味なんだよ!!妖怪アンテナが立ちっぱなしなんだよ!!」


 何それ!?美少女妖怪に妖怪アンテナが反応しちまったってか!?うまいこと言ってるつもりかもしれないけど、全然うまくないからねこれ!!ただのあぶねえ親父ギャグだよそれ!!ていうか、何でよりによってこんな奴に出会っちまうかな……

 しかし、親父がこんな所をうろついているのには深い事情があった。それは…………次回に続く!!

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