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第50話 犯人は……

 テレビのニュースで誘拐事件が、それもこのアパートの近所で起こってると聞いたもんだから、俺はオチビちゃんズに誘拐犯から身を守る素敵アイテムをプレゼントしようとした。しかし、良く考えれば二人は妖怪。誘拐などされるわけがなく、俺へのあてつけか元気良くテレポーテーションでお外に遊びに行ってしまった。美樹ちゃんに至っては防犯ブザーを置いたまま……


 取り越し苦労というかなんというか、どっと疲れが出た俺はコタツにうつぶせになった。そんな俺の背中を天童がぽんぽんと叩く。


「あいつらの事なら心配いらねえよ。烏丸さんが言ってたけど、チビ助はああみえて結構凄い妖怪らしいし、美樹の方はしっかりしてるから。あいつらが誘拐される事なんてないよな」

「そうだよな……」


 俺はそうぼやきながら防犯ブザーをゴミ箱に放り投げた。そして、どうやらそのショックで

ボタンが押されたらしい。ゴミ箱からけたたましい音が……


“ピピー、ピピー、ガスがもれていませてんか?ピピー、ピピー、ガスがもれていませんか?”


 けたたましい……音?


“ピピー、ピピー、ガスがもれていませてんか?ピピー、ピピー、ガスがもれていませんか?”


 …………


「あの……管理人さん……えっと……」

“ピピー、ピピー、ガスがもれていませてんか?ピピー、ピピー、ガスがもれていませんか?”

「えー、つまり、これは……」

“ピピー、ピピー、ガスがもれていませてんか?ピピー、ピピー、ガスがもれていませんか?”

「だー!!うるせえ!!」

“バン、バン!!”


 役たたないどころか思い切り偽者丸出しの防犯ブザーを天童のデザートイーグルがゴミ箱ごとぶち抜いてくれた。


「まあ、あんまり気にすんなよ……」

「あ、ああ……悪いな……天童……」


 何だか妙に気まずい空気が流れる102号室。この感覚には見覚えと悪い思い出がある。それも非常に最近。てか、昨日。今日は絶対バイトはしないぞ♪なんて事を考えていると事件は起こった。


「きゃあああぁぁぁ!!」


 俺たちのアイドル、クロちゃんの悲鳴に驚き慌てて外に飛び出した。その後に続いた天童も庭の光景に唖然とした。いや、呆然とした?ていうか、呆れた……

 何の事はない。 昨日クロちゃんの家が潰されてただけである。ゴミ捨て場から拾ってきたものがゴミになっただけだ。


「良平君!!これ見てよ!!おいらがちょっと出かけてる間にマイホームが……マイ・スイート・ホームがアアァァ!!」

「ああ、これ、あれだよ。耐震偽造されてたんだよ、きっと」

「なにそれ!?冷た!!犬小屋に耐震強度もクソも関係ねえよ!!それ以前に地震なんていつ起きたよ!!もっとちゃんと推理してよ!!そういうのは管理人の仕事でしょ!!」


 お前は管理人の仕事を何だと思ってるのかな?てゆうか、あれ?玉希ちゃん?

 玉希ちゃんが真剣な顔で壊された犬小屋に近づきしゃがみこむと、瓦礫がれきの中から何かを取り出した。


「野球の硬球ですね。これは犯人の残した手がかりに違いありません。おそらく犯人は近所の野球少年でしょう」


 あの……玉希ちゃん……名探偵ぶるのはいいんだけど……君の着物の……その……袖のふくらみは何?中から犯人の残した手掛かりがごろごろ出てきそうなんですけど……

 なんてことを考えてると今度は先輩まで探偵ごっこに参加してきた。


「それだけじゃないよ、玉希ちゃん!ほらこれを見て!ここに金属バットで殴られたような跡がある!ミイナは犯人が意図的に犬小屋を破壊したと思うよ!」


 俺は金属バットで殴られた跡なんてどうやって分かるんだ?ってことと、あなたが持っている金属バットは何ですか?って思うよ。

 犯人は丸出しだけど、一応動機の説明するね。クロちゃんの家つぶれる→クロちゃん寝るところ困る→玉希ちゃんの部屋で一緒に寝る→一人じゃ寝られない玉希ちゃん安心→玉希ちゃんと仲良しのミイナちゃんが協力→犬小屋破壊→ついでに野球少年の犯行に見せかけるためにボールをばら撒いた。以上。

 どうだ、クロちゃん?これで分かったろ?ていうかこんなの見れば分かるだろ?


「さあ、良平君!!いろんな手掛かりが集まったぜ!!おいらの家を潰した犯人を推理してくれ!!」


 ええぇぇ!?まだ分かんないの!?どんだけバカなの!?20世紀にも渡って生きてきたのにその程度の知識も得られなかったの!?仕方ない……こうなりゃ推理小説のように謎解きをするか……


「犯人を推理するには動機を考えればいい。なぜクロちゃんの家を潰したかというより、クロちゃんの家がつぶれて喜ぶのは誰か?それは一人しかいない……それはつまり……」


“ガチャ”


 はい、無理!!事件は迷宮入り決定!!真実は闇に包まれました!!でなきゃ俺が闇に包まれます!!だって後頭部にトカレフの銃口が当たってる感触がするもん!!のどもとに猫の爪がつきたてられてる気がするもん!!こんなの新一君だろうが金田一君だろうが真実は言えないよ!!こういうしかないよ!!


「こういう事は本職の警察……ていうか妖怪警察に任せましょう」

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 驚きすぎだよ、天童君。どれだけビックリマーク使えば気が済むんだよ。


「おいおい、管理人さんマジで言ってるの?ていうか、何で俺にふるかな?」

「お前だってクロちゃんがかわいいだろ?ここで恩をうっときゃ肉球をプニプニさせてもらえるかもしれねえぞ?」

「肉球をプニプニ……」


 目をキラキラさせ、頬を赤く染め、つばを飲み込む天童君。どうやら彼も相当な動物好きらしい。そして動物大好きな天童にとって肉球プニプニはかなりの効果があったと見える。なにせ一瞬にして目の色が変わったからな。


「こんなものは地獄の沙汰を待つまでもねえ!!」


 さあ、言ってやれ!!お前の決め台詞を!!


「あんだ、てめえ!!」


 何かスパーサイヤ人みたいなオーラ出した化け猫が本格的な鉄の爪アイアンクローを装備してこっち睨んでるけど言ってやれ!!


「やんのか、こら!?」


 何か着物きた金髪の美少女がこっちにガトリングガン向けてるけど…………ごめん、やっぱり言わないで!!あれ発射されたら確実に俺も死ぬ!!


「えっと……あの……地獄の沙汰……を…………待つまでもなくこの二人は無罪です!!」


 屈した!!妖怪警察が暴力に屈した!!けど、今のは仕方ないよ!!むしろ、それで正解だから!!


「か、管理人さん……俺、悪くないよな……?」

「ああ、天童……お前は悪くない!!むしろ良く頑張ったとほめてやりたい!!」


 ヘナヘナっと倒れこむ天童に肩を貸す俺。これぞ男の友情だ。とか、思ってるとクロちゃんが俺のズボンをクイっと引っ張ってきた。


「ねえねえ、結局オイラのマイスイートホームぶっ壊した奴は誰なの?」


 何で!?何で気づいてくれないの!?さっき天童が犯人をほのめかす発言したじゃん!!お前の後ろで物騒なもん装備してるその二人だよ!!

 でも、そんな事口が裂けても言えない……言った瞬間、俺たちは蜂の巣かコマ切れだ……だから、ここは……


「えっと……世田谷区在住の野球少年?」


 こう言うしかないよね……だが、俺は言った次の瞬間から後悔することになった……


「カ○オオオォォ!!貴様の頭を9回ぶん殴ってタンコブで姉貴と同じ頭にしてやる!!クビを洗って待ってろおおぉぉ!!」


 そんな事を叫び、砂煙をあげながら猛ダッシュでどこかへ行ったクロちゃん……どうしよ……世田谷区で坊主頭の少年が黒い狐に暴行を受ける事件が起きたら……やっぱ、俺のせい?

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