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第47話 ネコ+メイド=デンジャラス

 犬小屋で暮らすことを決めたクロちゃんのことはもうほっとこう。そのことに関してはもう何も言うまい。だって、本人が凄い気に入ってるし取り上げることなんて俺には出来ない。俺が彼にしてやれるのは「ポチ」と書かれたネームプレートを「クロ」に変えてやるぐらいだな……でも今日はもう遅いのでそれは明日にしよう。


 そんなことよりも問題は玉希ちゃんと先輩のことだ。猛烈なまでにかわいい二人が俺に好意を抱いてくれている。それは、素直に嬉しい。だが、俺も一人の人間だ。分身の術が使えるわけでもなければ、複数の女性と同時に交際出来るほど器用な人間ではない。どちらかを選び、どちらかとはお友達にとどめておかなければならない。問題はどちらを選ぶかだ。

 

 玉希ちゃんは一見むちゃくちゃな破天荒ぶりを見せるが、あれは全て演技だ。意外にも彼女は結構まともというか、常識のある優しい子だ。話してみてそれがよく分かった。それに対して先輩の行動は全部天然だ。あの人は絶対何にも考えてない。でも、逆にそこが良かったりするんだよ。だから、俺のことを二度も殺しかけても許しちゃ………………いけねえだろ!!

 何だよ、これ!!よく考えたら考えるまでもねえよ!!デッド・オア・ライブじゃねえか!!デッドかライブかどっちか選べって言われたらライブに決まってるだろうが!!だっていくら先輩がかわいくても俺はまだ死にたくねえもん!!命がけのお付き合いなんてしたくねえもん!!よし、そうと決まれば残念だが先輩とはお友達でいよう。


 そう、心に決めて俺は102号室のドアを開けた。そして、固まった。


「え……ていうか、え?」


 ドアを開けて、まず目に飛び込んできたのはおチビちゃんズではなく物凄くご機嫌な様子の先輩だ。いや、別に彼女がいたことには驚かない。だって、さっきも話があるとか言ってここに入っていくところを見ていたわけだからね。でもね、問題はね、その服装なんだよ。それはあの超短いデニム生地のマイクロミニやスポーティーなブラではない。


 両足にはいた黒いニーソックス。これでもかというほどスカートの丈が短い、紺のエプロンドレス。頭につけてるのはフリフリの白いカチューシャ。もう、どっからどう見てもメイドさんだ。

 「何でそんな格好をしているの?」とか、「どうしたの先輩?」とか、「一体何事ですか?」とか、普通の主人公ならそんなありきたりな台詞をほざくところだろう。だが、俺はあえて(心の中限定で)こう言おう!!

 いい仕事してますね〜特にこのミニスカートのメイド服と黒いニーソのコントラストがたまりません……って待て待て!!引くんじゃない、読者!!これはもう仕方ないんだって!!好みの問題だから!!

 いや、そんな事よりもだ、落ち着きたまえよ、加茂良平15歳おひつじ座!!君は今メイド服を着用しているとう、そんなちっぽけな理由でこの核弾頭娘にときめいているがそれでいいのか?玉希ちゃんは?クロちゃんとの約束は!?それらを踏まえれば答えなど分かりきっている!!否!!断じて否である!!


「お帰りなさいませ、ご主人様」


 はい、前言撤回♪だって恋のキューピットがアルテミスの弓を装備して俺のハートをガンガン射抜いてきやがるもん!!ていうか、何でメイド服!?何で俺の経絡秘孔をピンポイント射撃するんだよ!!もう気が変になりそうだ!!


「あ、あ、あの……先輩?何でメイド服?」

「これはね、お仕事の服だよ」


 お仕事……ああ、そう言えば家賃払うために仕事を探してくるとか言ってたな。それで見つけた仕事がメイド喫茶ってわけか……ネコ耳メイドならぬ猫又メイドとは……反則だよそれは……


「でも何でメイド喫茶?」

「だって管理人さんはこういうのが好きなんでしょ?」


 ああ、そうか……メイドさんが好きな俺のためにか……なんて……なんて嬉し…………………………………………ジャスタ!!モーメン!!プリー!!なんで知ってるの!?何で恥ずかしい俺のマニアックな趣味をあなたが知ってるの!?何で妖狐族の反則的な調査能力を持ってしてもばれなかった俺の恥ずかしい趣味を!!


「あ、あの、先輩?それは確かにいいし、嬉しいし、そうなんだけど……誰から聞いたの?」

「んー?美樹ちゃんからだよ」


 そう言って先輩が指差した先には、彼女の足元で算段の平兵衛のような忌々しいつらをしたおチビちゃんがいた。

 なぜ、美樹ちゃんが……?ま、まさか、このガキ!!いや、そんなはずはない。あの時確かにこいつはかわいい寝息をたてていた!!ぐっすりと眠っていたはずだ!!だが、考えられるとしたらそれしかない……


「美樹さん……あなた昨夜の深夜3時ごろ、どこで何をしていました?」

ふふふ……刑事さん。あたしにそんなこと言ってもいいんですか?

「ど、どういう意味かね?」

あたしはしっかりとこの目で見たんですよ……

「な、何を……?」

あなたがゆうべの深夜3時、パソコンの画面に向かって「メイドさん萌えー」とかいう気色の悪い奇声を発っしているところを!!

「!!!!!!!!!!」


 やっぱりかああぁぁ!!ちきしょー!!家政婦は見ていたようで実は見られていたのかよ!!かわいい寝顔に簡単に騙されたよ!!つーか、てめえ!!座敷童子のくせに狸寝入りなんかしてんじゃねえよ!!


まあ、冗談はさておき、後は若いお二人に任せて年寄りは退散するね。


 そんなメモを俺に渡すと美樹ちゃんは幽霊のようにすー……、っと消えてしまった。今さらそんな事ぐらいではビックリしないが、年寄りって……君は一体いくつなのよ?

 そんなことを考えていると先輩が俺の腕をぐいっとひっぱった。


「こっちこっち♪」

「え、ちょ……」


 また強制的にベッドに連れて行かれるのかと思いきや、今度はコタツのところまで連れてきて無理やり座らされた。一体何をする気だ?


「あの、先輩?何を?」

「今お飲み物をお持ちしますからちょっと待っててね」


 そう言っていそいそとキッチンの方へ行ってしまった。

 ああ、なるほど。練習のつもりか。でも……敬語とタメ口が入り混じってるのはいいのか?いや、かわいいからいいだろ。しかし、なんというか……楽しそうな先輩の顔を見ていると練習と言うよりおままごとを楽しんでいる女の子ような気がするな。まあ、無理もないか。

 先輩は今まで人と触れ合うことが恐くて外に出れず、ずっと自分の部屋の中で殻に引きこもりっぱなしだったからな。きっと、誰かとこんな風に遊んだこともないんだろう。ん……?あれ?それって……


「お待たせしましたぁ!!」


 ちょっと元気が良すぎる先輩の声に、俺の思考は中断してしまい、視線が彼女に釘付けになった。客に注文を聞かずに勝手に自分の好物であろうミルクをあっためたものを持ってきたことは百歩譲って許すとしよう。だが……


「おいしそう……」


 よだれを垂らしながらそのマグカップを見つめるのはやめてくれ!!もう、嫌な予感しかしないから!!


「ずずず……」


 はい、飲んじゃった!!


「おうぇ、あちゅーい……」


 ほい、吐いちゃった!!


「さあ、召し上がれ♪」


 あら、差し出した!!


「熱いから気をつけてね」


 気をつけなきゃいけないのはてめえだろ!!お前猫又だろ!?猫の妖怪だろ!?だったら猫舌なんだから熱いものなんか飲めるわけねえだろ!!そのぐらい分かりきったことじゃねえか!!リバースすることぐらい火を見るより明らかだったじゃねえか!!

 しかもそれを飲めってか!?いくらなんでもこれは嫌だよ!!何で人が吐いた飲み物を飲まなきゃいけないんだよ!!君は客商売をなめすぎている!!これはしっかりとクレームをつけなきゃね!! 


「あのね、先輩。これはいくらなんでも……」

「飲めよ」

「はい」


 無理、無理、無理、無理!!クレームなんかつけたら0.2秒で俺を殺す気だよ!!猫又メイドから化け猫メイドにクラスチェンジしちゃってるよ!!これ、飲みたくねえけど飲まなきゃ俺は確実に殺されるよね、これ!?つーか、これ何の罰ゲーム!?何のプレイだよ!?チクショー!!


「ずずず……」

「どう?おいしい?」

「そうですね……」


 あなたが飲むところと吐き出すところを見なければもっとおいしく感じたと思うけどね……


「本当?」

「ええ……」

「じゃあ褒めてぇ」

「て、ちょっと!!先輩!?」


 やばい!!先輩が甘えん坊モードを発動して俺に抱きついてきた!!やめてくれ!!めちゃくちゃ嬉しいけど、ただでさえかわいいあなたに、そんな格好でこんなことされたらもうどうにかなりそうだ!!


「ミイナ頑張ったよぉ。ねぇ、ほめてぇ」

「あぁ……」


 耐えろオオォォ!!理性よ頑張れ!!本能よだまれ!!ダメだ!!いかんぞ!!もしここで欲望のままに行動してみろ!?俺は犯罪者予備軍どころか先発レギュラーになっちまうよ!?エースで4番だよ!?そんな嬉しくない称号はいらないよ!!


「ねえったらぁ」

「ほわぁ……」


 あ、頭が変になりそうだ……頼む……誰か……ブシュ衛門でも誰でもいい……机の引き出しでも押入れの奥からでもいい…………この状況を……何とかしてくれ……このままでは俺は……烏丸さんと同類はんざいしゃに……


 そんな事をボーっとした頭で考えていると、俺の願いが天に通じたのか、御仏のお導きか、突然まん前の空間が熱した空気のようにぐにゃりと歪んだ。その光景に先輩は首をかしげ俺は驚いた。


「……?」

「……!!」


 この登場の仕方は誰かすぐに分かった。ナイスタイミングだ。さっきはお邪魔虫なADなんて言ってごめんよ。そう、こいつは20世紀のキャリアを持つ大妖怪……


「クロちゃん!!」

「あらあら、お邪魔でしたかしら?」


 飼い主の方でしたか……ええっと……ここはGJとでも言っておいたほうがいいのかな?何せヒートアイランド現象を起こしていた俺のハートがクールダウン通り越してフリーズ状態になったからねえ。その代わり思考はシャットダウン寸前だし、命のブレーカーが落ちそうだ……

 だって、だって……玉希ちゃんったら凄い怖い顔で包丁握り締めてるんだもん。この人一体何しに来たんだろう?お魚くわえた化け猫ぶっ殺しに来たのかな?気になるところだけど次回に続く!!


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