第43話 え……ていうか、え?
俺とのカウンセリング(?)で本来の自分を取り戻せた玉希ちゃん。この娘とも仲良くなれそうだと思った矢先、押入れから物音が!半狂乱になる玉希ちゃんを落ち着かせた俺は、一気に押入れを開け放ち……
「ええぇぇ!!!!……もう!!」
“ピシャン!!”
思いっきり驚いた後、思いっきり閉めた。
よし、落ち着け!!俺、落ち着け!!落ち着け俺ええぇぇ!!深呼吸だ!!深呼吸をするんだ!!ヒッヒッフー、ヒッヒッフー!!あれえ!?なんか違うか!!じゃあ、素数……は良く分かんねえからもういいや!!
とにかく、落ち着いた(?)俺はもう一度押入れの中にいた未確認生命体Xの正体に迫ろうと、ふすまを開けた。
「…………」
よし、まずは上の段から見て行こう。そこには両手を合わせて俺に「ごめんね」のポーズをとるオッシーがいた。よし、かわいい。だが問題はその下だ。
そこから視線をゆっくり下げていくと実に奇妙な生命体が目に飛び込んできた。上半身は裸の天童君なんだけど下半身は馬か牛かよく分からんが、どこのドン○ホーテで買ったんだよ、それ?と言うようなぬいぐるみを着ている。
ああ……なるほどね……うん、分かった。オーケー、アイ、シー。説明してもらわなくてもいいわ。考える必要も無い。
どうやら、このバカは俺と玉希ちゃんの仲が羨ましく思ったのか妬ましく思ったのか、邪魔をしてやろうと、オッシーを抱き込みこの押入れに潜んでいたはいいが、俺たちの会話と空気の重さに出るに出られずこうしていたと……そういうわけか……てかさ!!
「おまえ、マジふざけんなよ!!前回、俺がお前の事どれだけ高評価してやったと思ってんだ!!その仕打ちがこれ!?ありえなくね!?期待していた読者に謝れ、天童!!」
「それは違うぞミスター管理人」
「何が違うんだアルコール依存少年!!」
「私は天道修司ではない」
「は?何言ってんの、この子?アルコール摂取しすぎて頭おかしくなったの?」
「私はブシュルワアアァァだ」
「……………………いや、何言ってんの?どう見てもお前は」「ブシュルワアアァァだ」
「いやいやいや、いくらなんでもそれは」「ブシュルワアアァだ」
「え……でも」「ブシュルワアアァァだ」
「…………」「ブシュルワアアァァだ」
「ブシュルワアアァァか……」「ブシュルワアアァァだ……」
「そうか……」「そうだ……」
“ピシャン!!”
俺は叩きつけるようにふすまを閉めると、目が点になり顔を引きつらせてる玉希ちゃんの方を向いた。
「玉希ちゃん。少し訂正させてくれ……このアパートには少々頭のおかしいやからがいる。そいつらは色んな意味で危険だから気をつけろ。なんなら射殺しても構わないよ」
「そ、そのようですね……」
玉希ちゃんが頷くと押入れから悲しい……いや、とても悲しい声が聞こえてきた。
「俺はさ……たださ……ちょっと、盛り上げようと……でも、友達いなかったから……こういうの慣れてないから……どうしていいか……」
「そうだな……できれば、何もしないで欲しかったかな?」
「…………なあ、オッシー……俺をどこか遠い国に連れて行ってくれないか……」
ああ、是非ともそうしてくれ。そして、二度と戻ってくるな。
“ガタゴト”
再び押し入れの中から物音が聞こえ、俺がふすまを開けると、そこにはかわいらしいオッシーも馬鹿もいなかった。……まるでドラ○もんだな。
「あ、あの……良平君……」
「ん?どうしたの、玉希ちゃん?」
気がつくと玉希ちゃんは正座をしてこちらを見上げるように……と、思いきやすぐにうつむい……いや、やっぱり俺を見上げるようにこちらを……うつむき……ねえ、ちょっとジッとしててくれない?説明しにくい……
とにかく、玉希ちゃんは俺を直視するのをためらうように視線を顔ごと上下させ、体全体をもじもじと動かしていた。もしかして……正座でしびれた…………なんてことはないよな。じゃあ……桃色の頬といい、どこか恥ずかしそうなこの態度といい、もしかして俺と二人きりになった事を……照れてる?まっさか〜
「ふ……二人きりになれましたね……」
の大正解!?マジで!?
「良平君!!」
「え!?な、なに……?」
「あ、あの……その……お願いが……」
「お願いって?」
だが、玉希ちゃんはそのお願いを口にすることなく、いきなり実行して来た。それは……
「えい!」
「……!!」
ハグである。しかも、さっきのようなベアハッグではなく、ソフトな奴である。簡単に言えば玉希ちゃんは俺に抱きついてきたのだ。しかし、なにゆえ?
「えっと……玉希ちゃん?これは?」
「私さっきみたいにこうされたの始めてで……もう一度して欲しくて……ごめんなさい、はしたない女で……」
か、か、か、かわいいいぃぃぃ!!やべえよ、この子!!超かわいいよ!!めちゃくちゃな事するドSっ子と思いきやこのおしとやかぶり!!このギャップ……グラっときました!!いや、もう正直言おう!!惚れた!!
「こんな女は嫌いですか?」
「まさか。全然嫌いじゃないよ……」
むしろ、ジャストミーとストラアアイイィィック!!自分でも何言ってんのかさっぱり分かんねえけど!!玉希ちゃんの前では冷静装ってるけど!!俺の頭の中では本能と理性が激しくK−1グランプリ!!
「良かった……あ」
「さっきみたいにこうして頭を撫でるのも……?」
「はい……初めてでした……」
オラァ!!行け、理性!!お前が負けたらこの作品ジャンル変わっちまうぞ!!カテゴリー設定でラブエッチにチェック入れなきゃならなくなるんだぞ!!そんな事は俺的には非常に嬉しいが読者としてはたぶんなんにも楽しくないから避けろ!!そこだ!!ロー、ロー!!
「もう少し……このままでもいいですか……?」
「……いいよ」
おい、何してんだよ理性!!押されてんじゃねえよ!!お前、本能の目を見ろ!!ありゃマジだ!!ラブエッチどころかR−15……いや、R−18まで行く気だよ!?そんなのダメだよ!?だって、俺15歳って設定だからね!?忘れないで!!頑張って理性!!
「ありがとうございます……」
「もう、いいの?」
「はい……」
おぉし、決まった筋肉バスター!!と、何とか理性が本能をなぶり殺しにしてくれたおかげで俺は玉希ちゃんに変な事をせず、抱きしめて頭を撫でてあげる程度にとどめておく事ができた。
「良平君、私決めました!!」
「決めたって……何を?」
「一人前の女になるために今日の夜から私……」
ま、まさか俺と床を一緒にして事をしようと?いや、まあ……理性が頑張ってくれたところ悪いんだけど、玉希ちゃんがこう言ってるんだから、断っちゃ男が廃るって言うかなんて言うか……
「一人で寝ます!!」
「…………」
俺の煩悩、死ね!!何変な妄想しちゃってんの!?もう、超恥ずかしいよ!!あー、読者の皆さん。7行上からの文章は読まなくていいからね、ていうか読まないで!!もうやだ!!
「あの、どうかしましたか?」
「え?あ、いや、なんでもない。うん、それは一大決心だね……心のそこから応援するよ……頑張ってね……」
「はい!!」
そして、心の奥底深く暗い闇の部分ではひっそりと涙を拭いてきます……