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第24話 ナンパ〜俺のために君死にたもふ〜(中編)

 前回のあらすじ……お金持ちになった僕たちは、こんなお世辞でも観光地とは言いがたい僻地へとお越しいただいた、おしゃれでモダンなガール達をナンパしようということになった。そこで、天童にどんな女がいいかとたずねると、彼が目をつけた女性は、読者の期待を裏切って悪いがかなりの上玉だ。そして、またも読者の期待を裏切って悪いが今回は普通にやらせてもらうぜ。


「ちょっと待ってくれ、管理人さん!」

「何だネ?」

「何でマユリ様になるんだよ……てゆうかやっぱり、女子が苦手と言う男子を無理やりナンパに誘うのはひどいと思います!」

「ほざけ小僧。貴様が前々回にやったことの方が遥かにひどいヨ。法的にも人道的にもネ」

「いや……でも……あんたナンパなんてできるのかよ?」

「愚問だな。人を見かけで判断してはいけないよ」


 とは言うものの、自分で言うのも嫌になるが、俺みたいなダサ男が声をかけても、ついてくる女の子なんて皆無だろう。しかし、えて言おう。このナンパ……99.9%の可能性でうまくいく!言っておくがそれはフィクションだからとかそんな反則的な理由ではないぞ。では、なぜか?まあ、見てなって。


「ねえ、君達この辺じゃ見かけないけど観光客?だったら俺達がこの町案内してやろうか」


 俺が声をかけると、わが町内会が無駄な予算をどぶに捨て作り出した、意味不明なモニュメントの写メをとりまくっていた女の子が振り向いた。七部丈のスキニーデニムにパステルグリーンのキャミとずいぶん垢抜けた印象の子である。


「ん〜?おやおや?ひょっとしてナンパかな?」


 その笑顔は、一切の邪気を感じさせないほどまぶしく、その声は聞くものを全て幸せな気分にさせる底抜けに明るい声である……おっと、見とれてる場合じゃなかった。


 さて、ナンパにおいて大切なのは第一声ではない。そんなものは、はっきり言ってどうでもよろしい。大事なのは相手の反応とそれに対しての受け答えである。今回はわりと好感触だが、ナンパというのは大抵「え?何こいつ?ウザ……」という反応をされてしまうものである。そして、理由はいまだ持って解明されていないが99.9%の確立でナンパだとばれてしまう。

 だが!そこからが大事なのである!ここで「いや、違うって!ナンパとかそういうんじゃなくて……」とか言ってもバレバレなので全くの無意味!いや、むしろ逆効果と言ってもいい。ではどうすればよいか?それは……


「イエス!アイ!ドゥー!ナンパでーす!」


 正々堂々真っ向勝負である。


「キャハハ!この子面白〜い」


 これが意外と受けが良かったりするんだ。


案内ナンパか……う〜ん……でもね……」


 なかなかの好感触かと思いきや、そこで女の子は考え込むように俺を観察した。いわゆる品定めって奴だな。


 さて、女の子は何を基準に男を選ぶか。そんなもん容姿に決まってる。トレインマンじゃあるまいし、美女とダサ男の純愛などというドラマチックな恋愛を望んでいる女の子なんて皆無だ。まあこの天真爛漫てんしんらんまんな女の子は人を見た目で判断するような子には見えないが……そろそろ、切り札を使ってもいいだろう……


「俺は加茂良平。で、こっちの無口な奴が天童修司ってんだ」

「……!!」


 紹介をしながら天童の腕をぐいっとひっぱり、女の子の前に差し出すと、輝いていた彼女の目がより一層強い輝きを放った。それはまるで鳩が豆鉄砲を食らった、というより石ころを拾ったら100カラットのダイヤモンドがくっ付いてた!ってぐらいの衝撃を受けた感じだ。


「へえ、凄いイケメンだね♪」

「そ、そうかな……」


 明るく気さくに素直な感想を述べる女の子と、気持ちが悪いぐらいに照れる天童。これは至極当然のことだ。こいつがもてないのは、ただ単に普段の私生活が危険すぎるのと素行が悪すぎだからで、それを知らない女の子にとっては普通のイケメンだ。よし、ここらでダメ押しだ。


「まあ、こいつにだったら何をやってもいいよ」


 俺のターン。天童イケメンを墓場に送り、女の子達との楽しい時間を召喚。女の子は俺の腕をぐイッと引っ張りひそひそ声で話してきた。


「ねえねえ、良平君。それは本当かね?」

「煮るなり焼くなり好きにして構いません。俺達と遊んでくれたらね」

「ほほう、お主悪よのう」

「いえいえ、それほどでも」

「交渉成立ね♪あたしは凪原なぎはら零花れいか、18歳。レイカでいいよ」


 とまあ、こんな具合にイケメンの友達を生贄にささげれば大抵の女の子はこのレイカさんのように名前ぐらいすぐに教えてくれるのさ。いやいや、別に俺はそんなに悪いことはしてないよ。天童だって楽しい思いが出来るわけだし、その後に坂道を転がり落ちるようなスピードで大人の階段を登りきってしまうかもしれないのだから、感謝こそされど恨まれる覚えはないよ。まあ、その結果新しい自分に目覚めたとしても俺は一切責任を持たんがね。

 ていうか、レイカさんって意外と年上なのね。俺達と同じ歳かと思った……


「あ、あのう……」


 とそこで、モニュメントの前でピースサインをしたまま固まっている、レイカさんのお連れ様が初めて口を開いた。白いワンピース姿のクリクリしたおめめが実にかわゆい、大人しそうな女の子である。しかし、どっかで見たことがあるような……

 

「あ、神流ちゃんっ。ごめ〜ん、すっかり忘れてた」

「あの、レイカちゃん……」


 レイカさんは困惑気味の女の子を俺達の前にぐいっと差し出した。差し出された女の子は……怯えてる。もう、小動物のような怯え方だ。だが、それがなんともかわゆい。


「紹介するねっ。この子は夜柳よやなぎ神流かんなちゃん。あたし同じ18歳だよ♪」

「あ、あの……どうもです……」


 元気はつらつに紹介するレイカさんとは対照的に、控えめにぺこりと頭を下げる神流さん。なんともおくゆかしいその様は、今では絶滅危惧種に指定されている大和撫子やまとなでしこを思わせる。よいね。うん、非常によい。

 しかし、このお方と名前はどこかで拝見したことがあるような気がするのだが、同じ学校ということはないな。ここまでかわゆいお方がいれば、たとえ学年は違えど全校(男子)生徒の注目と憧れと妄想の(標)的になること間違いなしだ。少なくとうちの中学の男共はそんな奴しかいなかった。一体どこで……


「あの!」

「は、はいぃ!」


 などと考えている間に何をトチ狂ったのか、天童が神流さんの手をがっしりとつかんだ。ていうか、マジで何考えてんの?やめてくれない?


「俺と結婚してください!!」

「ええぇ!?」


 オッケー、オッケー、ナイスギャグだ、天童。すっげー笑える。だから、もうやめろ。神流さん怯えているから!!


「俺は真剣マジです!!」

「ひぇ……」

「必ず幸せにします!!」

「あの……あの……」

「結構貯金あります!!」

「こ、困りますぅ……」


 神流さんのかわいらしいおめめにうっすらとキレイな液体が浮かび、明るいレイカさんの顔から笑顔が消えたところで、俺は天童の肩を叩いた。


「ん?何だ、管理に」「The・悪利苦!!」


“バキ”


 いわゆる自主規制という奴である。もう、色んな意味で手遅れなのかも知れないが一応ね。その後俺はドン引きな二人に「生まれ変わったらまた会いましょう」と別れの挨拶をかわし、動かなくなった天童をひきづり駅横のコンビニ前駐車場で再び作戦会議を開くことにした。


「なにすんだよ、管理人さん!せっかくうまくいきかけてたのに……」


 気がついた天童の第一声がこれである。もう一度眠らせてやろうか?今度は永遠に。全く、99.9%うまくいくと踏んでいたが、残り0.1%バカのそんざいをすっかり忘れていたよ。


「けどよ、あの神流さんってどっかで見たことあるようなきがするんだけどな……」

「え!管理人さんもか!?実は俺もなんだよ!どこでだったけかな……」


 しかし、天童にもそれ以上のことはわからないという。二人そろって頭を抱えていると、その答えはコンビニの中から聞こえてくるラジオにあった。


『この番組は、あなたの暮らしの全てをサポートする、夜柳コーポレーションの提供でお送りしました』


 夜柳コーポレーション。日本どころか世界でも五本の指に入る超大企業であり、その会長である夜柳よやなぎ聡慈そうじさんの一人娘、神流さんは時折TVCMなどにも顔を出したりしている、まさに絵に描いたようなご令嬢である。

 そんな訳で、俺達があの人をしってた訳も頷ける。では、なぜそんな有名人に気がつかなかったのか?それはあれだ。芸能人とかを町で偶然見かけても案外気がつかないのと同じで、雲の上の成層圏を突破したその上にいらっしゃるお方が突然目の前に現れても、人間と言うのは案外気がつかないもの何だよ。

 まあ、それはともかく……もう十分に手遅れなのかもしれないが、あれ以上の粗相がなくて本当に良かった……なにせ相手は超がつく大物の娘さんだ。何かの手違い俺達がオーバーゼアー三途しちまう可能性だって十分ある。触らぬ神流さんになんとやらだ……

 意外なことにそれは天童も同感だったらしい。彼曰く「世の中には絶対に敵に回しちゃいけない存在がいる。それは政治家さえもあごでこき使えるような連中だ。あとはドュークとか言う名前の奴だ」だそうだ。まあ東郷さんは関係ないとして、政治家さえもあごでこき使うって……夜柳コーポレーション、どこまで恐ろしいんだ……ん?なんで天童がそんな黒い情報を知っているかって?気にしない、気にしない。ね。

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