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第21話 楽しいアルバイト(前編)

 先輩になんとか働いてもらうことを約束してもらった俺は、今度は当面の生活費を稼ぐために天童とアルバイトに向かうのであった。その道中、ちょうど商店街の入り口あるコンビニの前を通った時に、一つだけどうしても気になることがあったので聞いてみた。


「なあ、天童。お前今までもバイトしてたみたいだけど……俺と同じ歳だよな?そんなんでよく雇ってくれるところがあったな?」


 そう、なんと天童君は、中学1年生の時に自分が妖怪であることに気づき、それが原因なのかあるいは別の理由があるのかはよく分からないが、その時に実家を出て徒然荘で1人暮らしをはじめ、学校へ行くかたわら妖怪退治をしながらアルバイトまでこなしていたというのだから驚きだ。


「そんなの簡単だよ。履歴書の年齢なんて1つや2つごまかしても誰も気づかなねえから」


 もっと驚きだ。君は履歴書にウソを書くことが公的文書偽造という犯罪であることを知っているかな?


「冗談だよ。ちょっとした知り合いのところで世話になってるだけさ。たまにきつい仕事もさせられるけど、その分払いは結構いいんだぜ。まあ、食う分には困らないだろう」


 なるほど知り合いのところなら、たとえ厨房でも雇ってくれるだろう。けど、きつい仕事ってなんだろう?


「なあ、仕事の内容はどんな感じのものなんだ?」

「うーん……一言で言うなら総合職?」

「お前……総合職の意味わかって言ってんの?」

「え?色んな仕事バトルを総合的にする人?」

「総合格闘技とは違うぞ。ていうか、なんで仕事って書いてバトルって読むんだよ。意味分かんねえよ」

「じゃあ、なんなんだ?」


 まったく、こいつは……まあ、普通の15歳じゃまだ知らなくても無理はないか。


 おっと、ここで「総合職ってなーに?」という俺と同年代の読者のために、ダーマ神殿ハローワークに足しげく通った良君からちょこっと豆知識。総合職というのは総合的な判断を要する仕事をする人のことであり、簡単に言えば課長とか部長とかいう管理職、あるいは管理職候補の候補の正社員を指すわけで、それになるのはとっても難しいことなんだ。どれぐらい難しいかというと、中卒の俺がハローワークの神官しょくいんに「総合職とかにはなれませんかね」と夢と希望を込めていったところ「人生なめんじゃねえぞクソガキ」といわれるほどだ。


 早い話がアルバイトで総合職なんてありえねえ。ていうか、意味分かんねえって話だ。何だか少し不安になってきたな。


「お前、一体なんの仕事してんだ?」

「うーん……色々ありすぎて一言でいうのは難しいな……まあ、清掃業とか営業とか運搬とか引越しとか解体とか体を使う仕事もするし、販売とか外国人観光客の案内とかクリーニング屋の手伝いとか頭を使うサービス業もするな」

「……そういうのは派遣って言わない?お前の知り合いって何してる人?」

「うーん……難しいな……基本的に何もしない人?」


 なんか……意味が分からん……


「何者なんだよその人。ていうか、その人の会社も大丈夫なのか?」

「それは大丈夫。よくある、大企業の下請したうけやってる中小企業の社長さんだから」


 ああ、なるほど。それは確かによくある話だな……って、社長さんは何にもやってないイメージあるかも知れないけど、本当は凄い頑張ってるんだよ。今の時代、特に中小企業の社長さんは大変なんだよ。君が知らないだけじゃない?まあ、そんなことよりもだ……


「で、今日はなんの仕事をするんだ?」

「今日は営業と清掃と運搬と解体だけだ」

「そんなにすんのかよ!?」

「すぐにすむって」

「うーん……」


 まあ、必死で働いてるとあっという間に時間は過ぎるっていうらしいから、労働時間はそんなに感じないだろうけど、疲労感はたっぷり味わえそうだな……ん?あれ?


 ここにきて周りの景色がやばいことになってきたぞ。商店街を抜け天童がぐんぐんとむかった先は、今でこそ不気味な静けさを放っているものの、夜になればきっとまばゆいばかりにあでやかなピンク色の光を放ちそうなネオンの数々や、「18歳未満お断り」とかかれた張り紙をしているシャッターのお店……まさか、バイト先ってこの辺じゃねえだろうな……


 ていうか、ここは僕達の年齢の子が着ちゃいけない場所だよ。おもに烏丸さんとが出没する場所だよ。ほら、見て。あそこにいるのは明らかにいけないお薬の用法と用量を間違いすぎた恐いお兄さんだよ?腕におしゃれな落書きをしているよ?とっても恐いよ?ってあれ!?天童君?そんな人に近づいちゃダメだよ!!危ないよ!!食べられるよ!?


「よお」

「あ、天童のアニキ!!お勤めご苦労様です!!」


 んんんんんんん!?恐いお兄さんが明らかに自分より年下の天童君をアニキと呼んで深々とおじきをしだしたぞ?これはどういうことかな?


「最近変わった事件ことは?」

「へい、ここのところ変わったことといえば……」


 なんか普通に会話してる……普通に天童がくわえたタバコに恐いお兄さんが火をつけてる……ねえ、天童君……君は何者……


「あれですかね。立て続けに幼児が誘拐される事件」

「犯人の目星とかは?」

「てんで、だめでさぁ。目星どころか目撃情報すら入ってきちゃいませんぜ」

「そうか……またなんかあったら教えてくれ」

「へい」


 俺がボーっとしてると会話を済ました天童が戻ってこられた。


「お待たせ。じゃあ、行こうか?」

「ちょっと待て!いや、すいません。待ってください!」

「ん?」

「今の人は何?バイトと関係あるの?お前のバイトって危ない仕事?」

「へ……?」

「どうなんだよ!?そこんとこ命に関わるから凄い重要だよ!?」

「あっはははは!」

「いやいやいや、笑い事じゃねえよ!!つーか笑えねえよ!?」

「大丈夫、大丈夫、今のは……」


 天童君曰く、なんと今の人は人にあらず。あれも妖怪だというのだ。全然分からなかった……で、その妖怪と何の話をしていたかというと、ここ最近起こった犯罪事件について刑事の聞き込みのような、あるいはお巡りさんのパトロールのようなことしていたのだ。で、なんで天童がそんなことをするのかというと、犯罪事件は人間の悪しき感情が色濃く出る現象であり、それは邪悪な妖怪を発生させる、あるいは妖怪を邪悪なものに変えてしまう要因となる可能性が高く(烏丸さんが言ってた「妖怪はよくも悪くも人に力をもらって生きている」とはこのことだったんだ)、妖怪警察のそれも死刑執行官という彼にとっては、それを知っておくことで、もしかしたらブシュルワアアァァのような妖怪達を殺さなくてもすむかもしれないと考えてるからだ。

 天童曰く「妖怪にも命がある。無駄な殺しは出来るだけしたかねえんだ」とよ。お前って……やっぱり、いい奴だな。でもだな……


「紛らわしいまねすんじゃねえよ!!俺はてっきりヤバイアルバイトに拉致られたのかと思ったじゃねえか!!」

「ははは。いや、なんていうか、悪ぃ。でも安心してくれ。バイトの方は間違いなく、安全だから」

「まあ……それならいいけど……本当かよ……?」

「本当だって」


 結論から言おう。それはウソだった。


 何でかっていうと俺たちが向かった先は町内でも最も治安の悪い地域で、それがどのくらい悪いかというと、さっきの人間もどきなんか目じゃないほど、いけないお薬の用法と用量を間違えすぎたお兄さんやお姉さんが多数生息する、ニューヨークのダウンタウンのような場所さ。別名、地獄の入り口1丁目4番地。


 しかもね、天童君はそんな危険地区の一角にある雑居ビルの二階を指差してこう言ったんだ。


「あそこで金を作るんだ」


 えっと……どういうことかな?落ち着いてその窓に書かれている文字を読み返してみよう。


「誰でもお貸しします。一切審査はいたしません。命の保障はします。ブラック・ファイナンス?」

「そ、いわゆる闇金融だ」


 闇金融!!

 それは、行き場を失ったヤンキーな方達が間違った方向へクラスチェンジしてしまった最狂のジョブ、YAKUZA達が経営する危険極まりない闇の金融機関の略称である。それが、どれぐらい危険なことかというと、金銭の貸し借りを生業なりわいとしているはずなのに「命の保障はします」とか言ってる時点ですでにおかしいわけで、これはもう、18歳未満どころか一般人は全員立ち入り禁止区域だよ?ていうか……


「お前バカか!!なに考えてんだよ!!俺たちみたいなガキに金貸してくれるわけねえだろ!!貸してもらえたとしても返せねえよ!!あの人たちは俺たちのこと生きて返さねえよ!!」

「大丈夫、ここは無利子、無担保、無審査、無返済と4拍子そろったところだから」

「んなわけねえだろ!!何だよ、無返済って!!それもう融資じゃねえよ!!ただの寄付だよ!!」

「冗談だって。こういう後ろめたい奴らはちょっと揺さぶればころっと金を吐き出すもんさ。要は頭の使いようだよ。ま、管理人さんはここでサツがこねえように見張っといてくれりゃいいから」


 それだけ言うと天童はどこかへ電話をかけ始めた。なんだこいつは?ひょっとしてあれか?今、流行のブラックな詐欺師の真似事でもおっぱじめる気か?


「ああ、組長オヤジですか。今から“営業でいり”おっぱじめるんで後始末ひけしの方はお願いします。ええ、いつもどおり俺の報酬は“売り上げうばったカネ”の40%で。はい、それじゃ」


 えっと……天童君の会話に不可解すぎるものが混じってたね?親爺オヤジじゃなくて組長オヤジ?あれだよね?グラサンかけた園長先生のことだよね?ていうか、営業でいり?どこへ出たり入ったりする気?MU―SYO?もう後始末ひけしはなんとなく想像つくけど売り上げうばったカネって……これもうルビ使う必要ねえだろ!!


 そんな突っ込みを心の中で入れてるうちに天童君はビルの中へと入ってしまった。本当に大丈夫なんだろうか……

 

“パン!”


 おい、K太郎!(眼球親父の声)この効果音はどういうことじゃ!(眼球親父の声)気になるけど次回に続くぞ!(眼球親父の声)

 

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