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第2話 え……何これ?

 高校を落ちた罰として冗談抜きで家を追い出された俺はどうしていいか分からずスポーツバッグと生活資金片手に再び公園のブランコに揺られている。もう、あの両親には怒る気も突っ込む気もしねえ。そんなことより問題はこれからどうするかだよ。


「はあ……どうしよ……」


 思わずため息と愚痴がこぼれる。


「はあ……どうしよ……」


 そしてそれがエコーする……訳ねえだろ!何だ、今のは?隣のブランコから聞こえてきたよ!え……ちょ……何これ?


 俺は言葉を失い思考が途切れた。

 そこにいたのがよれよれスーツを着たバーコードはげのおっさんなら「何だ、リストラーマンか……」って思えたんだけどそこにいたのは4,5歳のガキだ。

 それだけなら別に普通なんだが、3月下旬にも関わらずパンツ一丁というフィジカル過ぎるファッションと、全身真っ赤で頭に角という人間にはありえない特徴、そしてお前はどこの絵本から飛び出してきたんだよ!と突っ込みたくなるほどの3頭身。

 間違いない……これは日本昔話に3話に1回のペースで出演なさってる鬼という奴だ。いや、違うだろ!ないないない!そんなのありえないから!これは俺の妄想と精神的疲労が生み出した幻覚だ!そうだ!そうに決まって……


「ねえねえ、お兄ちゃん?」

 

 くそ……話かけてきやがったよこの幻覚。いや話かけてきたってことはもう幻覚じゃない。現実だ。落ち着いてこの奇怪な現実と向き合おう。


「えっと……何?」

「うん、ちょっと聞きにくいんだけど……」

「いや、そうじゃなくて。お前の存在は何だって聞いてるんだよ」

「僕?僕は妖怪・押入れ童子だよ」


 え……なに?何だって?今こいつなんてほざいた?妖怪?バカ言っちゃいかんよ。季節はずれのハロウィンか節分の時期間違えたアホなガキだろ?だってお前、妖怪なんて、もしこれがゲゲゲんとこの太郎さんだったらいきなり劇画タッチで妙に達筆なテロップ入れられるよ?大体この平成のご時世に妖怪だなんて……そんな…………

 俺は勇気を振り絞りそいつに聞いてみた。


「ぱ、ぱーどゅん?(訳:今なんてほざきやがりましたか?コノヤロー)」

「hu……I am YOUKAI.My name is OSHIIREDOUSI.Just call OSSHI.OK?」


 ええぇ!?何こいつ!?このビジュアルで英語ペラペラじゃねえか!!駄目だろそれは!お前はどう見ても英語なんて聞いたことありませんって顔だよ!?ていうか発音良過ぎて何て言ったのか全然聞き取れなかった!


「ごめん、今なんて言ったの?」

「だから『僕は妖怪だよ。名前は押入れ童子って言うんだ。オッシーって呼んでね』って言ったの。君ひょっとしてまだ英語習ってないの?」


 ん?君はひょっとして殺されたいのかな?まあいい。


「その妖怪が俺に何の用だ?」

「君って今中学生?」

「いや、中学は今月卒業した……」

「じゃあ来月から高校生になるんだね?」


 ゴブリンもどきが決め付けちゃいけないよ。もし俺がひのきのぼうを装備してたら君をフルボッコにしてるところだからね。


「あ、あのね……お兄ちゃんは大人の事情的なもので高校にいけないんだよ」

「ふーん……その年でプーか……なるほど、なるほど。じゃあ今はご両親と一緒に暮らしてるの?」


 えっと……マジで殺してもいいのかな?喧嘩に自信はないけどお前ぐらいだったら素手で半殺しにして5ポイントの経験地を貰う自身はあるんだよ。


「あ、あのな……お兄ちゃんはスーパーのチラシにデテケって走り書きするような血も涙もないクソ婆に家追い出されて今は住所不定、職業無職なんだよ」


 ついでに情緒不安定で諸行無常の響きありなんだよ。だからこれ以上俺の傷口に塩塗る真似してみろ。たとえ見た目がガキでも容赦しないよ。


「わ、分かったかな……?」

「じゃあ君は若いのに家も仕事もないの?」


 うーん……どうやら分かってもらえなかったようだ。

 もういいや……所詮俺なんて社会からも家族からも必要とされていないうえにこんな妖怪にバカにされる人間なんだ。


「そうさ……俺には家も仕事もないプー太郎だよ。文句あるか?」


 さあこの妖怪は俺のこと何て言うんだろ?人間のクズ?ミスター不必要?終わった人生?


「文句なんてないよ!最高だ!君は最高の人間だよ!」

「ん?どういうことだ?最高に笑えるってことか?」

「違うよ!僕はまさに君のような人間を探していたんだ!」

「何の話だ?」

「あのね僕はある特別な仕事をしてくれる人間を探してんだ」

「……!!」


 バカな!?仕事だと!?ダーマ神殿の神官ハローワークのおばさんでさえ紹介してくれない仕事をこいつが紹介してくれるというのか!?


「ただ、その仕事はあまりに特別でね。厳しい条件があるんだ……」

「厳しい条件?」


 なんだそれは?遊び人でレベルを20まであげるとかか?


「若い、家がない、仕事がない。つまり……君って訳さ!」

「……!!」


 俺はその条件を聞いて浮ついた気分が一気にさめた。なぜならその条件に当てはまる人物を一人だけ知っていたからだ。昼は寝床でニートのようにごろごろし、夜は墓場でスポーツマンシップに乗っ取り正々堂々と戦うことを誓うような罰当たりな少年K君……そう、まさにゲゲゲんとこの太郎さんだよ。俺に奴の真似事をやれと言うのか?いや待て!まだそうだと決まった訳ではない!


「なあ、オッシー。その仕事は結構体力とか使う?」

「うん、いろいろ力仕事もしてもらうからね」


 おいおい……それは妖怪たちとファイトしろ、ってことかな?いや、待て待て。俺の思いすごしと言うこともあるぞ。


「それって妖怪と会っちゃたりする仕事?」

「うん、毎日顔を合わせることになるよ」


 年中無休かよ……あのガキ、実は凄い奴だったんだな。マジでリスペクトするよ。これからは毎週欠かさず君の活躍を拝見させてもらうよ。あ、無理だ。今の俺には家もテレビもないから。


「てことは命の危険はしょっちゅうある?」

「ないない、それは絶対ないよ」


 え?ないの?じゃあ、妖怪退治じゃないのか?それとも日本の妖怪の弱体化が急速にすすんでしまったとか……いや、そんなことこいつに聞けばいいか。


「お前は一体俺になにをさせようって言うんだ?」

「それはね……」


 オッシーが俺にさせようとした仕事……それは俺の考えていたものとはだいぶ違うものだった。もちろん命の危険性は全くないがそんな事俺に出来んのか?っていう仕事だ。それは……


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