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第19話 二日目スタート!!

 さて、昨日一日のうちに親に家を追い出され、二度も死にかけた俺だが、頼もしい天童や優しいおチビちゃんズ、役立たずのエロ天狗にそして恐かわいい先輩のおかげで何とか管理人としてやっていく自信を持てた。


 というのが前回の最後な訳だが少し修正したい。いや、修正というより撤回かな。もう、無理だ!!絶対無理!!管理人としてうんぬんとかじゃなくて生きていけない!!などと縁起でもないことを二日目の冒頭からコタツに突っ伏して考えているには深い理由がある。


 今は3月21日の昼過ぎで俺が殺されかけた昨夜の一件から色んなことがあった。


晩飯を作って、オッシーに食べさせて


朝飯を作って、オッシーに食べさせて


昼飯を作って、オッシーに食べさせて


 はい、今ご飯とオッシーの事しか言ってないじゃん、と思ったあなた。それが、今回の問題です。どういうことかというともう少し詳しく説明するね。そしたらすぐに分かるから。


晩飯にオムライス4皿作って、オッシーに食べさせて


朝飯にご飯8合もたいたのに、オッシーに食べられて


昼飯に…………


 まあ、早い話がエンジェルの皮を被ったエンゲルの化け物に米びつを空にされたんだ。まあ、読んでる人にとってはあんまり笑えないネタかもしれないが、俺にとってはもっと笑えない。お母さんとして切実に笑えない。つーかどんだけ食うんだよ!お前の胃袋は宇宙どころかブラックホールに直結してんのか!?


「ふぅ……むにゃむにゃ……」


 そんな俺の苦悩を知ってか知らずか、いや、たぶん知らないんだろうけど、食欲を満たご満悦なオッシー君は至福の表情でお昼寝イン押入れナウである。全くいい気なもんだな、おい。なんなら3食変わらずカップ麺にしてやろうか?いや、育ち盛りの子供にそんな幼児虐待一歩手前な酷い真似は出来ん。何より俺の作ったご飯を「おいしいおいしい」と言ってくれるあの笑顔はたまらなくかわいい。だが、ここは心を鬼にしてこいつにダイエットを……


「むにゃ……お兄ちゃん……大好きだよ……むにゃむにゃ……」


 くっ!かわいい!しかし、そうなってくると別な方法を考えなくては……


 管理人さんなら家賃の収入があるじゃん、と思ったそこのあなた!それは甘い!なぜなら、この徒然荘の家賃回収日は毎月1日と決まっているのだが、それまでは約10日もあるわけで、オッシー君がこのペースで食欲を満たしていくようであれば、余裕で全滅だ。

 もっとひどいことに、優しい大家さんのオッシー君は、二階に住んでるネコちゃん妖怪や一階のアルコール依存少年からは家賃を貰ってないというのだ。まあ、大学の助教授という安定した収入がある烏丸さんと違って二人は働いてないのだから仕方ない。ていうか、生後2年と少しの女の子を働かせたり、何の見返りも求めず命がけで平和を守る正義の味方のようなことをマジでやってる奴から金をむしり取るような、そんな非道な行いは俺にはできん。


 もちろん、テレポーテーションチックな能力を持つオッシーや美樹ちゃんに、どこかの大金持ちや銀行の金庫に連れて行ってもらい、返す気のないお金を無断で融資してもらうという伊東さんにも教えられない裏技も考えたが、そんな小学校低学年でも思いつきそうな、どこにでもいけるドアの典型的な悪用法を本当にやってしまっては人間おしまいだ。何より、たとえエンゲルの怪物でも見た目も脳みそもピュアなオッシーに犯罪の片棒を担がせるような真似はお母さんとして絶対に出来ん!そうだ……犯罪に手を汚してもいいのは思春期に入ってからさ……ふふ……


 というわけで俺は烏丸さんの部屋のドアを叩いた。しばらくしてドアを開けた烏丸さんは茶色のチノパンに、水色のシャツといかにも教師風のいでたちだ。俺はそんな彼ののどもとに包丁を突きつけながら軽く挨拶を交わした。


「こんにちは。今日は折り入ってお願いがあるんですけど聞いてくれます?」

「ええっと……君の言ってることと、やってることと、この状況がいまいち理解できないんだが……お願いってなんだい?」

「お金下さい」

「うんと……これはお願いというより恐喝ではないのかな?」

「どっちでもいいです。同情するなら金よこせ」

「いや……どっちかっていうと僕の方が同情してほしいね」

「死にたいんですか?」

「うーん……死にたくはないんだが……それにしても、ふふっ……」


 何だ?急に笑い出したりして。恐怖のあまりおかしくなったのか?


「僕もなめられたものだね」


 烏丸さんのようすが豹変した。


「たかが包丁を持ったぐらいで……」


 顔はもはや人のそれではない。


「ただの人間である君が……」


 全身からあふれ出すどす黒い妖気。


「天狗の僕に敵うとでも……」


 でも、なんかうざいしムカつくので右ももを、


“ザク”


「思って……あれ?ザク?ザクって何?量産型?シャア専用?違うね?これ音だもんね?もしかして……刺した?いやいくらなんでも前置きナシに刺す訳ないよね?でもなんか右足が……いだああぁぁ!!」

「うるせえ。次、脳天行くぞ」

「ちょっと待って!!なんてことするの!?これコメディじゃなかったら普通に傷害事件だよ!?」

「がたがた、うるせえよ。てめえ、ガキの頃、素手で熊と喧嘩してたんだろ?だったらこんくらい大丈夫だって」

「全然大丈夫じゃないよ!!これ君が思ってるより遥かに痛いからね!!ていうか、なんでこんなことするの!?僕が何したの!?」


 ああ、この人はそんな事も分かってなかったのか……それじゃ、俺がむしゃくしゃしたというだけで人を刺すようなクレイジー野郎に見えてしまうだろう。でも、言っとくが俺はそんなバカじゃない。高校には落ちたが人として落ちたくはない。俺がこんなことをするのにはちゃんとした理由があるんだ。それを話せば烏丸さんもきっと納得してくれるだろう。


「てめえ、昨日俺が死ぬかもしれないって時にパチンコに行ってたそうだな?」

「え、あ、いや……それは……その……」

「勝利の女神ついてたんだろう?うん?大勝利したんだろう?あん?だったら俺にも幸せ分けてくれよ。幸せの独り占めはずるいぜ。烏のだんな」

「いや……なんか昨日は女神さん定休日だったみたいで……負けちゃってあんまりお金ないんだよね……」

「てめえのふところ事情なんざ知らねえよ!!こっちは金が要るんだ!!チビども食わせなきゃならねえんだよ!!命欲しかったら金よこしな」

「いや……だから……そのお金がね……」

「最近の十代はキレると何すっか分かんないよ?ある意味妖怪より恐いよ?うん?」

「うん、それはもう十分痛いほど分かってるから……じゃあ……ちょっと待ってて……」


 まあ、どうにかこうにか烏丸さんから昨日の慰謝料は請求できたものの、本当にパチンコで大負けしたらしく、たった1万円しか貰えなかった。チッ!!全く役にたたねえエロ天狗だぜ。ああ、そうそう。よい子のみんなはよっぽど腹に据えかねた時意外はこんなことしちゃいけないよ。即効でポリスのお世話になるからね。


 しかし、こうなってくると当面の生活費はおろか来月の家賃回収も不安になってきたな。仕方ない。こうなったら天童や先輩にも働いてもらって家賃を納めてもらおう。ちょっと気が引けるけど生きるためには仕方ないって。


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