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第12話 そんなわけないじゃないですか、パート3

 ゴキブリをコンクリートもろとも素手で破壊する美少女妖怪・藤崎ミイナ。彼女が人間嫌いになった真相を探っていく内に新たな事実が分かった。なんと彼女は肉体年齢は15歳にも関わらずおつむの方は2歳児ときた。これじゃ見た目はマセガキ、頭脳は大人顔負けの少年探偵とまるで真逆だ。それもそのはず、彼女はまだ生まれて2年と少ししかたってないからだ。

そんな先輩はこれから自分がどういう風に生きていけばいいかなんて分からないらしい。そんなの簡単なのにね。


「そんなの簡単です。先輩は人間になりたいって思って人間になったんだから人間の女の子すればいいんですよ」

「いいかげんなこと言わないで!人間の女の子なんてどうやればいいかなんて分からないよ!」


 ごもっとも。俺にも女の子のやり方なんて皆目見当もつきませんよ。じゃあ、別な方向でいこうか?


「そうですか……じゃあ俺がオスの猫をやるっていうのはどうです?ところでオスの猫ってどうやればいいんですか?先輩は元猫だからその辺は当然知っているんでしょ?」

「オスの猫?うーん……それは……分かんない……」

「どうして?元猫だから分かるでしょ?」

「分かんないよ!あたしあんまり外に出たことないし、たまに野良猫と話すことは会ったけどみんな全然違うもん。乱暴な奴とか意地悪な奴とか優しい奴とか無愛想な奴とか猫それぞれだよ。これがオスの猫だ!ていうやりかたなんてないよ!」


 だろうね。俺は結構な猫マニアだがオスのやり方なんてのは知らない。オスだからみんなこうしてるなんてことはない。みんな同じことをしているようで好き勝手やりたいように生きている。だから、つかみどころがない。でも、そこがいい。それが何だか俺たち人間と似てるから。


「それと同じですよ」

「へ……?」

「人間の女の子もこうすればいいなんて答えはありませんよ。誰だってそんなのわかりませんよ。先輩だけじゃなくて人間って奴はみんなそうです。だから、みんな悩んで悩んで、自分の行きたい所へ行き、生きたいように生きてるんです。だからね、先輩も特別に何かする必要なんてないんです。もう十分女の子してますから」

「このままでいいの?だってミイナは甘えん坊でわがままだよ?」

「いいんじゃないですか。わがままなんて女の子と猫に許された特権みたいなもんでしょ」

「そっか……このままでいいんだ」

「でも、1つだけ覚えておいて下さい」

「なあに?それ、ミイナにも出来ること?」

「ええ。超がつくほど簡単なことですから。それはね、女の子はおしゃれをする生き物ってことです」


 俺は雑貨屋で買ったプレゼントを先輩につけてあげた。


「これって……」


 それは黒い皮製でリボンをあしらったベルトタイプの……


「首輪?」


 いや、まあ、間違っちゃいないんだけどね……できればチョーカーって言ってくんないかな?男が女に首輪をつけるってもうそれ変なことしか想像できないからね。


「先輩……それはチョーカーっていうアクセサリーです」

「あの……」


 喜んでくれるかと思ったがなぜか先輩は不安げな顔で俺を見つめていた。


「その……」

「ひょっとして気に入りませんでした?」

「ううん!凄い嬉しいよ!でもね……」

「でも、何です?」

「こういう時とか、お部屋をお片づけしてもらった時とか、かわいいとか言ってもらった時とか、お礼をしたい時って……なんて言えばいいの?」

「……」

「管理人さん?」


 そうか……そりゃそうだ。この子はまだ生まれて2年とちょっとしか生きてないんだからそんな当たり前のことを知らなくても不思議じゃないよな。天童や烏丸さんもいろいろ教えてたみたいだけど、さすがにこんなことはもう知っているんだろうと思って教えなかったのか。


「先輩。そういう時は笑顔で「ありがとう」って言ってくれればいいんですよ」

「管理人さん……ありがとう!」

「いえいえ、どういたしまして」

「管理人さん!ありがとう!」

「いえいえ……どういたしまして……」

「ありがとう!」

「ははは……」


 新しく覚えた言葉を使うのがそんなに嬉しいのか先輩は何度も俺に「ありがとう」といってくれた。はは……本当に小さい子供のようだ。これじゃオッシーや美樹ちゃんと大差ないな。


「管理人さん……大好き!」


 ん?


 うん……?


 うんんん!?どういうことだ、これは!?何で何の前ふりもなく告られてんの?何だこれは?こういう流れでいいのか?そういう空気なのか?いや、ぶっちゃけちょっとはいい感じになれたらいいのにな的な下心はあったけど!嬉しいけど!ダメだろ!いくら主人公だからってそんなおいしすぎる展開が許される訳ない!だってこれは恋愛小説じゃないんだから!コメディなんだから!落ち着け俺!ビークール良へ……


「管理人さん……ミイナを管理人さんのペットにして!」


 いいいぃぃぃ!!??ベッドでペット!?告られたと思ったら、いきなりそんなに超ディープな関係!?お前そんなの許されるはずねえだろ!!そんなの恋愛通り越してただの官能小説になっちまうだろう!!お子様だって読んでる可能性があるんだ!!そんな性的表現を含んだ表現は絶対できん!そうだ!頑張れ理性!ビークワイエット本能!青少年の教育とこの作品の存亡は……


「ミイナなんでもいうこと聞いちゃうよ」


 知るかボケエエエェェ!!性的表現を含んだ表現?ガンガンしてやるよ!!お子様が読んでるかも知れない?だから、なんだ!!俺が大人の世界って奴を教えてやるよ!!くたばれ理性!!ビーアダルト本能!!


「分かった。俺でよかったらお前のご主人さまになってやるよ」


 俺はそういってミイナを優しく抱きしめた。触れ合う頬。柔らかくてすべすべした彼女の肌が俺の心臓を破裂しそうなくらい鼓動させる。けど、俺だけじゃなくて彼女も同じぐらい興奮していた。ほてった頬。荒い息づかい。一目で分かる。だが先に我慢できなくなったのは彼女のほうだった。

 俺を押し倒し、胸の上に腰をおろす。俺は少し胸が詰まった。だが、彼女と目があい、別の意味でも胸が詰まった。テレビの画面でしか見たことがなかったこの体制をまさか自分が、それもこんなかわいい子とするとは夢にも思わなかったからだ。もちろん抵抗しようとは思わない。というよりできない。しっかりと両のひざで俺の腕を押さえ込んでいる。位置もそうだが気持ちも彼女の方が上だ。圧倒的に彼女が有利だな。

 猫又の語源をご存知だろうか?それは猫が男をまたぐから猫又といわれている。つまり今の俺たちのような体制のことを指しているわけだ。おっと。ベッドの上の俺たちがどういう風になっているのか分からないというお子様のために少し大人になった良君が教えてあげよう。この体制はね、いわゆる一つの……



マウントポジション!?



 待て待て待て待て!!シャレになんねえよ!!こんな奴にマウント取られたら終わりだよ!ていうか、何?テレビの画面でしか見たことなかった、ってあれプライド!?いやらしいビデオの画面じゃないの!?まぎらわしい言い方してんじゃないよ!!ていうかこの子もう拳を振り上げてるんですけど!!やる気まんまんなんですけど!!


「おーい、ちょっと待て!お前何する気?なにしようとする気!?」

「じゃれる(=殺す)」


 ダメエェェ!!何でいきなりこんなバトルモード!?俺はどこぞの真拳使いじゃねえんだよ!!義務教育じゃ一子相伝の暗殺拳なんか習わないんだよ!!良君そんなにタフなガイじゃないから!!シャイなボーイだから!!コンクリをも破壊するパンチを貰って生きてられる自信ないから!!ていうか、あれ!?何か化け猫モードオンになってなくね?何かキレてる?何で!?俺どこで選択肢間違えた!?


「おーい……ミイナ。お前、何か化け猫モードがオンになっちゃってるけど、俺何か怒らせるようなこといったかな?」

「ていうか……」

「ん……?」

「てめえはさっきからなにタメ口聞いてんだよ!!」

「ええええぇぇ!?」

「あと、あたしを呼び捨てにするってどういうことだよ!!」

「そこはゆずれないの!?」

「あたりまえだろうが!!」

「いーやあぁぁ…………」


 このあと起こった悲惨な出来事は暴力的な描写やグロテスクなシーンしかなく青少年の教育上あまりによろしくないと思われるのでカットさせていただく。ただ、奇跡的にも死ななかったということは、先輩も一応手加減ぐらいしてくれたんだろうがかなり痛かった。どのくらい痛かったというと中二の時に三年の不良に「加茂おぉ!!てめえ、何でこの世に存在してんだ!?」という意味不明な理由でボコボコにされた挙句あげく、現金を強奪ごうだつされたあの時ぐらい痛かった。


 そんなね……いくら主人公だからってね……そんな都合よくかわいい子とね……いい感じになれるなんてね……そんな訳ないじゃないですか……


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