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第11話 そんなわけないじゃないですか、パート2

 俺の言葉に先輩は分かりやすいぐらい動揺した。立ったり、しゃがんだり、もじもじしたり、そわそわしたり、という仕草を見せたかと思うと俺をにらんで一喝いっかつ


「う、ウソなんかついてねえよ!」


 うーん……実に分かりやすい人だな。


「分かりました。では私が烏丸さんに聞いた話を整理していきましょう」

「え……ていうか管理人さん、キャラ変わってる……」

「お気になさらず。まず、気になったのはあなたが人間を嫌い、そのせいで前の管理人さんの顔を見るたびに化け猫モードがオンになっていたということです」

「さっきも言ったでしょ。いらいらするとあの姿になっちゃうって。人間の顔見るとムカつくんだよ!」

「実に奇妙ですね。私という人間の前ではあなたは人間のままです。今、現在もこうして。もちろん、私が人間としてみなされていないという可能性がなくはないのですが、それを考えるとあまりに悲しくなるので却下です」

「うん……そうだね……」

「これはあくまで私の推測ですが……似ていたのではありませんか?前の管理人さんと飼い主さんが……」

「う……うん……」

「やはりそうでしたか。飼い主の方が女性ともなれば猫を嫌う理由は絞られてきます。それはおそらくあなたからの贈り物。違いますか?」

「そう……頑張って取ってきたのに……ご主人様はあたしのこと……」

「まあ、人間の大半、特に女性にとっては先輩の持ってきたものはおそらくこの世で最も嫌いなものなんですよ」

「そうなの?知らなかっ……!!ちょっと待って!!あたしが何あげたのか知ってんのかよ?」


 今日見たあんたの行動を考えれば大体予想はつくよ。


「猫って生き物は狩で仕留めた獲物を仲間のとこへ持ち帰るって習性がありますからね。ねずみやすずめでも結構ショックかも知れないけど先輩の場合、ゴキブリでしょ?」

「うん」


 あっさり頷きやがった。昼間見せたゴキブリへの尋常ならざる殺意と素手で葬り去る度胸からうすうすは予想していたがマジでそんなもの送ったとは。それは飼い主が男でもひくよ。でも問題はそこじゃない。確かに猫がゴキブリくわえて寄ってきたらかなりビビるけどたかがそれぐらいでぶったたいて化け物呼ばわりするはずがない。考えられるとしたら一つ。


「先輩、ひょっとしてその一件があった時すでに人間になってたんじゃないんですか?」

「……ああ、そうだよ」


 やっぱりね。先輩は捨てられる前からすでに妖怪化してたんだ。その理由はたぶん……


「先輩って本当は人間のことが好きでそれで妖怪になったんじゃないんですか?」

「少しちがう……あたしがすきだったのはご主人様だけ。優しいあの人と少しでも長くいたくて、それで人間になりたいって思ってたら本当に人間になって……ご主人様もあたしのこと妹みたいだってかわいがってくれて……それでご主人様にお礼したくて……それなのに……あたしがプレゼントを持っていったら……」

「喜ぶどころか悲鳴を上げた。そして先輩の目の前でせっかく持ってきたプレゼントを捨てた……」

「うん……」


 猫を飼っている方に言っておきたい。

 もし、あなたの猫が先輩のようにゴキブリやすずめやねずみをくわえてもって来ても嫌な顔をしないで欲しい。そんな時は引きつった笑顔でもいいから「ありがとう」と言ってやり頭をなでてやって欲しい。なぜならそれは猫があなたのために苦労してとってきたプレゼントだからだ。

 それを見て悲鳴を上げたり、怒ったり、まして目の前で捨てたりなんて絶対にしないで欲しい。あなただって誰かに贈り物をしてそんな事をされたらひどく傷つくだろう?それと同じさ。猫にも傷つく心があり、流れる涙があることを覚えていてほしい。


「うぅっ……」

「先輩はその時初めて今日見たような化け猫の姿になったんですか?」


 泣きながら頷く先輩を見てなぜだか俺は無性に悲しくなった。


「それで、その人は妹みたいな先輩を棒切れでぶったたいた上、化け物呼ばわりして追い出したと。ひどい奴だ……」

「ご主人様を悪く言わないでよ!ご主人様は悪くない!悪いのはミイナなんだから!ミイナが悪い子だったから……ごめんなさい……ごめんなさいご主人様……」


 先輩はつらい過去を思い出してせきをきったかのように泣き出してしまった。

 全く、こんないい子をこんなに悲しませるなんて。前のご主人様とやらが女じゃなかったらスイス銀行にある天童の口座に料金を振り込んでいるところだ。もしくは鉄パイプ持って笑顔で「あんたを殺しにやってきた」って冗談じゃないことをいってやるところだ。ていうか……


「あの……先輩?さっきからちょっと気になったんですけど何か喋り方変わってません?一人称単数がミイナになってますよ?」

「ミイナ本当はこんな喋り方だよ?だめ?」

「ダメじゃないですけど……どっちかっていうといいですけど……じゃあ、なんであんなしゃべり方してたんですか?」

「あのね。一階に住んでる天童君がね。「お前その顔でそのしゃべり方はダメだよ。どっかに拉致られて二度とこっちの世界に戻ってこれなくなるぞ。人間の男なんてみんな変なことしか考えてない妖怪みたいなものなんだから。お前みたいな奴は即、餌食えじきだよ。とりあえず俺みたいに話してろ。あと男はみんなダサ男って言っとけ」って言われたからそうしてたの」


 さすが天童君。妖怪とはいえ警察だけあってよく分かってらっしゃる。現にここにいるからね。その変なことしか考えてなかった思春期妖怪が。ぶっちゃけこんなに素直でいい子なら本当に何でも言うこと聞いてくれるんじゃないかと思ったもん。ていうか、それちょっといいかも……


「あとね、「お前に何でも言う事聞かそうとするような男はもう間違いなく変態という名の新種のゴキブリだから。ゴキブリと同じ運命たどらせていいから」とも言ってたよ」


 おいおーい、天童君?発言には注意したまえ。もうちょっとでその新種のゴキブリがこの世から抹消されるところだったぞ。この作品のジャンルがコメディから推理・ミステリー通りこしてホラーや怪奇ものになるところだったぞ。それにしても……


「ちょっと子供っぽくないですか?そのしゃべり方」

「そんな事言われても……ミイナはまだ子供だもん」

「へ……?」

「生まれてからまだ2年ぐらいしかたってないもん」


 そうか。先輩は生後10ヶ月(人間年齢14歳)で捨てられ、このアパートには去年から住んでいると言っていた。そして美樹ちゃん情報によるとこの子は15歳……つまりこの子はどう長く計算しても2歳とすこしなんだ。だから、かわいいって言葉にも免疫がないし、こんなに子供っぽいのか……


「天道君や烏丸さんが色んなこと教えてくれるけど、分からないことばっかだもん」

「分からないことってなんです?」

「どうしたらいいか分からないの」

「何がです?」

「前みたいに猫の姿に戻ることができないからもう猫として生きてくこともできないし、人間の姿をしてるけど人間のことなんか全然わかんないし、それに……」

「人間が恐いから人間として生きてくこともできない?」

「……うん」


 そんな簡単なことも分からないなんて……本当に子供なんだな。


「だったら俺が教えてあげますよ」


 というわけで次回は俺と先輩が急接近!やっぱり主人公といえばヒロインとのLOVEはお約束だろ?でも、一部青少年の教育にあまりよろしくない表現が出てくるからカットさせてもらうぜ。そうしないとR15とかR18とかになっちゃうからね。


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