表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時の糸  作者: 茅凪幸葉
6/9

出逢い

「…とにかく。イトが、ご先祖からの、親御さんからの言いつけ守らなかったからって、誰かに怒られるわけでもないし、仕置きされるわけじゃない。…イトの親御さんはどっかで見ているかもしれないけど、今のイトや俺には見えないし、声は聞こえない」


ゲンは焼き上がった魚を一本取りながらそう告げる。一口齧って食べると、不安そうな表情のイトを見つめた。


「だから、怒られるとしたら、イトが死んで親御さん達の元へ行った時だ」


「…私が、死んだ時…」


イトはゲンの言葉を呟くと目を閉じ、小さく苦笑に似た笑みをうかべた。


「…そうだね、そうかもしれないね」


そして長いため息をつくと、手を合わせて祈るような仕草をした。


「…とと様かか様、イトがいつか行く時までは…ごめんなさい」


ゲンはその様子を見ながら魚を食べ終え、イトの近くへ座り直す。彼は何かを決意したような表情をすると、体ごとイトの方を向いた。


「イト」


呼び声にイトは合わせていた手を解き、ゲンの方へ振り向いた。

ゲンは真っ直ぐに彼女を見つめていた。


「…俺と友達になろう」


そう告げて、手を差し出す。

イトは目を見開いて驚くと、ゲンの顔と手を交互に見る。


「返事」


友達になるためにこれほど真っ直ぐに言ったことが今までなく、だんだん照れくさくなってきたゲンは、ぶっきらぼうにそう言うと手をずいとイトの前に差し出した。


「っ…うん!私でいいなら…喜んで!」


イトは涙を目に溜めながら、とても嬉しそうに両手でゲンの片手を包み、握手を交わした。


この時からゲンとイトは、誰も知らない、秘密の友となったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ