出逢い
ーーーーーひとつ、昔の話をしてあげよう。
ある小国の村では三百年に一度、人の姿をした化け物と勇士の印をもつ者が戦わなければならないという習わしがあった。
その理由は人の姿をした化け物が、力の強まる新月の夜に村の人々を襲い、片端から食らっていったこと、実際に化け物を勇士が倒したという事実が記された書物が、残されているからだった。
化け物は断片的にかつての勇士との戦いの記憶を受け継いでおり、三百年に一度のその日には、化け物の血が濃くなるゆえか髪は白銀色となり、瞳は金色に光り顔には隈取りのような紅い線が浮きあがる。
そして導かれるように村へと足を運び、家屋を破壊し人を食おうとし、勇士と戦いになるという。
「そんなところで何してるの?」
ある日、村に住んでいる一人の少年が、山の麓の沢で一人の少女に出会った。
「…何も。そういうお前は?見かけない顔だけど」
少年は、三百年に一度生まれるという、勇士の印をもった者だった。それゆえに村の者からも親からも「三百年に一度の災厄を除ける者」として、過剰な期待と尊敬をかけられ、勇士であるからには強くあらねばなるまいと鍛錬の日々を送っていた。彼はそんな自分の、やがて背負わなくてはならない決められた運命を呪っていた。
勇士の印さえ、なければ。
普通の人間として、周りの子のように村の者として過ごしたくとも、その印がある限り叶わなかった。