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15分の青春

作者: saki

ずいぶん遠くまで来たと思う。

季節は三月。

まだまだマフラーは手放せない。

わたしの高校生活が終わる。そして彼との思い出にも、この彼への想いも幕を閉じる。


後悔なんて沢山ある。

部活に入っておけばよかった。もっと勉強しておけばよかった。もっと彼の目を見て話をすればよかった。もっと彼の側にいれるって事に感謝をしておけばよかった…

それでもあの頃のわたしは精一杯に後悔しないように生きていた。


毎朝、この中央線にのって人の谷間から見る車窓からの景色は変わらないけれど、わたしは毎日成長していった。


春空は晴れ雲はない。ただ優しい黄色い朝日がわたしの視界を街を包む。

朝日は水面に映え、キラキラと美しく輝く。

川沿いを歩く人と犬

何気ない光景だが、とてもとても愛しくてたまらない。わたしはもうこの景色が見る事がない。

あんなに嫌だった学校、あんなに嫌だった友達、勉強、体育の授業。全てが愛おしい。彼がいたから今のわたしがある。


8時02分中央線高尾行き


わたしの人生の中で最も輝き、終わるなんて考えもしなかった。この生活が一生続くと思っていた3年間だった。

そんな3年間もこの電車の乗車時間と同じ15分間のように感じる。


彼と出会ったのは2年前の秋の朝、この場所だった。

彼と一緒になってからもこの電車に乗り、そしてもう彼がこの電車に乗らなくなった今でもわたしはここにいる。


彼を待ってはいない。


短いスカートを冷えた風で揺らす。それでもどこかほんのりと暖かさを含んでいた。

優しい春はもう来る。すぐそこで待っている。

随分時が過ぎ、随分遠くまで来たと思う。


あの頃よりもわたしは大人になったと思う。


また、どこかで会えたなら。

彼の目を見て、彼の話を沢山聞きたい。

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― 新着の感想 ―
[一言] みずみずしい作品だなと思いました。 車窓の風景も自然です説得力がありました。
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