少女の現実
本編小説【伝説の始まりは現実の終わり】の外伝です。
こちらは本編よりももう少し前、由紀が来た頃に起こった事の話です。
本編に合った解説本の作者やその他の設定など、本来のアクセス機の性能がこちらでは書かれています。
本編で何で特別なアクセス機が人に向けてはいけないのかも簡単にならわかると思います。
どうか合わせて読んでいただきたいと思います。
もちろん、こちら単体でも楽しんで読めるようになっていますので、どうぞ温かい目で読んでください。
私がこっちの世界に来たのは、始まってすぐの時だった。
その世界は精神世界に生身でアクセスするタイプの、リアルバーチャル世界――二次元と三次元の狭間の世界に感じた。
そこでは本当の死もあって、現実と言うには全く疑う余地が無いほどに作りこまれていた。
私はそんな時に父親に連れて来られた。
父親は情報系の企業で、アクセス機の制作下請けをやっていた為にアクセス機について詳しかった事が私には不幸の始まりだった。
それは、この世界に棄てられた事。父親は離婚して母親に私を引き取らせなかったのに、再婚するってなった瞬間にこれだった。
私はアクセス機をつけられて、そのままこの世界にきた後翠色の粒子が周りを囲んだ。
それは、私のつけられたブローチから出ているみたいで、それが始まりの選別なんだと思っていた。
そして、入ったところは小さい村だった。近くには父親が居なくはぐれたのだと思った。
私は近くの人に聞きながら基本的なのを少しずつ知っていったが、それから少しして元の世界に戻る方法を教えてもらえる。
でも、それを試したとき私が現実についた所は、まっさらな砂浜だった。何もない砂浜で目の前には透き通った綺麗な海。後ろには生い茂ったジャングルが広がっていた。
「お父さん? お父さんどこ!」
私は必死に叫んで探し回った。まだ中学生で小学校を卒業したばかりだった。そんな私は何もわからずジャングルを彷徨い、海に入って流されないように頑張った。食べ物もなく空腹感も襲ってくるが、そんな事よりもうすうす感じてるものを否定しようとしていたのかもしれない。
そして私は蛇やトラに会った事によりリアルバーチャルの世界に逃げ込んだ。
「私は……棄てられたんだ」
そう感じるのは間違えではなかった。
そして、私の生活はこっちの世界に移る。
食べ物は自分でお金が稼げたこともあって村で少し買えて生きていたけど、ここでもまた不幸が私を襲った。
「なんじゃ! 村がモンスターに!」
NPCがそう叫んでいた。
そこに来ていたのは大きなドラゴンだった。赤くメラメラと燃え盛るような鱗に、鋭く光る牙、一度羽ばたこうとしたら竜巻を起こせる翼をもつ深紅の竜が何頭も居た。
その真ん中に黒いフードを被った人が居た。
その人は残虐な笑みを浮かべ人を殺す事が快感と言う風にドラゴンを使役している。
「さぁ! モンスター! 殺せ! もっと泣き叫ぶ人間の声を俺に聞かせろ!」
ドラゴンはそいつの言う事を忠実に聞き、先ほどからブレスを出している。それは村を業火で焼き尽くし、吐かれた後は黒く熱されて焼ける音を立てていた。
それと同時に人が焼かれ、プレイヤーは逃げ惑う。悲鳴と呻き、助けを求める声だけがそこに充満していく。人々は助けを求めるために近くの人を掴み道連れにしていく。
私は茫然とその光景を見ていた。ただ見ている事しかできなかった。
「君! 早く逃げるんだ! ここは私たちに任せて。君は最後の希望なんだ。いつか私たちの敵をとってくれ!」
「わ、私」
「いいか。よく聞くんだ。簡単にしか言わない。君は私の力だと何もできない。だから逃げた先初心者としてじゃなく一プレイヤーと扱われるだろう。戦闘の経験も無く死ぬかもしれない。それは許してほしい。でもこれだけは忘れないでくれ。七光鉱石を持つ者は人とは戦ってはいけない。これだけは守ってくれ」
そうその男性は言うと、ノートパソコンを操作して私の周りに何かを出した。
それは水色の大量のスクリーンで、足元には私を囲むように円が書かれて真ん中には六芒星が描かれている。
少しすると私はカプセルに入れられた感じに円から光が上がり私を包み込む。六芒星が何倍にも広がった。
「大丈夫だ。君なら必ず生きていける。頼んだぞ。この世界の秩序を守ってくれ」
カウントダウンが目の前に出される。その数字は約90秒。
目の前にドラゴンが降り立ち、先ほど話していた男性を見ていた。
その男性は振り返り、パソコンを操作している。周りに大量のスクリーンが出ておりそこには注意、危険と言う文字の羅列が出ていた。そして、男性は白衣を着ていて最後にこちらに向き直り笑顔で見てくれた。
それが最後の顔だった。守れた事に誇りを感じたのだろうか、それとも私に愛着がわいたのだろうかわからなかった。でも、その笑顔は親が自分の子供に向ける笑顔にも見て取れた。
次の瞬間目の前が紅蓮に染まった。
ドラゴンがブレスを吐いたんだと気が付いて、収まった時には白衣を着た男性はいなくなっていた。ドラゴンも飛び去ったみたいだった。
私は、カウントダウンが終わるまでに周りを見渡した。
いろんなところに焼けた人型のものが転がっていて、動いてる人は一人しかいなかった。
その人の特徴を覚えようと凝視する。
黒いフードに残忍な笑み、そして声を脳裏に焼き付けた。
「はははははは! やったぞ! 俺はこの世界で最強だ! 人を殺して罪に問われない! 最高じゃねぇか! ストレスの発散にはいいところ作ってくれたよな! 企業様様だぜ」
その言葉を私は自分の中で反芻する。
人を殺しても罪には問われない。人を殺しても罪には問われない。人を殺しても――。
その瞬間私の中に翠色の何かが入り込んできた。
「人は死んじゃいけない。死ぬのは彼奴だ。私は必ず彼奴を見つけ出してここの敵を」
私の頬を伝う何かが地上に落ちた。
それは、翠色の粒子になって六芒星によって吸収された。
その瞬間、カウントダウンは0になり私は翠色の本流と共にどこかに飛ばされたのだった。
※※※
飛ばされた私は草原を彷徨い、プルプルしたものを倒していった。そしていろいろ学んでいきマップの使い方を知り、ステータスも振っていた。
そして、近くの村に私は住み着く。それもたった3か月だった。
理由は近くに鉱山街ができたという事からだった。
私はそこを目指して村を後にした。ぼろぼろの私はもともと歓迎もされなければ、武器もないから何もできずに近くのモンスターを借る事しかできないのもあっ
たからだ。
「鉱山なら私は何かできる」
※※※
それから私は何とか鉱山の街に着き、入口を通る。
「お? 君ここ初めて?」
「え? 私?」
「そうだよ。ここ初めて?」
そう声をかけてきたのは20代後半の男性だった。
見た目は清青年ですごく親しみやすそうな人で、髪型はスポーツ刈り、服装はいかにも坑道で働いてますっていうような作業着だった。
「うん。初めて。で、私に何か用?」
「用ってほどじゃないんだけどさ、君綺麗な鉱石つけてるだろ? そのブローチ」
そう言って男性が差したのは、私の胸についてる翠色の宝石が付いている銀色のブローチ。
それが気になるみたいでさっきからちらちら見ている。
「それがどうしたの?」
「いやね。俺たちのってこんなのなんだよね。くすんでるだろ? 石ころに色が付いた的な」
そうやって坑道の男性は頭に巻いていた鉢巻を見せてきた。
白色の鉢巻には似合わない銀色の留め金に、紫の石が付いていた。
「だからさ、俺そんなに綺麗な鉱石って見た事なくてさ。良ければこの街に居る教授に話聞いてみたらいいよ。その教授開発陣を首になってここに居るみたいだし何なら案内するよ?」
「ありがとう。なら連れて行って」
「よし来た!」
そして私はその男性について行って、一軒の建物に通された。入口から15分くらい歩いたところの崖に位置している一軒家。
「教授―。いるか? ちょっと見てほしいものが有るんだけど」
「なんだ? 僕に見てほしい物って」
遠くからすごく若い声がかえって来た。
私の目の前にいるのは二十歳過ぎたであろう位の年齢の青年がいた。
髪はぼさぼさで目の下にはクマがあり、猫背でいかにも不健康な生活を全力でおおかしています、と言わんばかりの格好だった。それなのに白衣を着ていた。
「合わないね」
「! 女か! しかもその声の高さから言って中学生くらいの少女!」
私は坑道の男性に余裕で隠れられる小柄だったために入口からは見えないんだろう。
でも私からは男性の腕の横から見える。
「ええっと、そうなんだけどさ。なんでそんなに喜んでいるわけ?」
「喜ぶだろ! JCだぞ? ぴっちぴちの肌と、透き通る声。そんな希少種めったにいないし、何より声はかなりその子はアニメ声じゃないか!」
「そ、そうなの? お兄さん」
「ずっと聞きたい! さあその姿を僕に見せておくれ!」
「さぁ? 僕には少しわからない次元なんだよね」
白衣が向こうで羽ばたいている。
坑道の男性は私の前から横に移動して、私の背中を押す。
すると、教授は見た瞬間に鼻血を出して鼻の下を伸ばした。
正直キモイ。
「神は私にこんな美女を合わせてくれた! 感謝します神! 私はこの子を嫁に迎えたいと思います!」
「私あなた嫌いだけど?」
「そんなの関係ない! 一緒に居てくれるだけでいいんだ! 黒髪ロングのしかも髪質はかなりいい。それに加え身長は136センチくらいのかなりの低身長。なおかつ胸のサイズは見たところBより大きくCに行かないちょうどいい大きさ! なによりそのボロボロの服装でも滲み出ている百合の花と同じオーラ! そして何より目を引くのは七光鉱石を持つブローチと言ったところだ!」
何この人本当に苦手なタイプだ。
興奮が冷めないという風に全力でさっきから熱を発散させようと鼻息を荒くして、私の周りを観察していて、ついには服の裾を上げた。
「グハ! ノーパンでもろ見え……」
教授の股が少し盛り上がっている気がするけど気にしたくはなかった。
「変態の屑」
「いただきました! ご褒美!」
「何なの? お兄さん。私帰りたいんだけど」
「ご、ごめんな。この人こんな人だとは思わなくて」
「で、お前はいつまでいる気なんだい?」
そう教授は坑道の人に言った。
にらみつけるような眼差しで、さっさと消えろ、失せろ、この少女は渡さないぞって空気を全力で放出している。
「悪いが、僕は少しこの子と話が合ってね。さすがにエロトークは聞かれたくはないと思うしな」
「悪いけどそれだったら離れられないんだけど」
すると教授は男性の近くに行き耳元で囁いた。
「悪いが、この話は本当に聞かれたくないんだ。その理由は彼女のブローチにある。この秘密を聞かれるとここの街が廃墟になりかねないから情報を制限したい」
「そうなんですか。わかりました。それなら席をはずそうと思います」
私の耳は一般よりも聞き取れる。ジャングルを彷徨った時に生きるために少しずつ鍛えられていったからだ。
ふーん。このブローチってすごい物なんだ。そういえば転送される時もなんか言われていたなぁ。
「じゃあ僕はこれで失礼するね。犯されたら僕がこの変態教授葬るから。鉱山に埋めるから言ってね」
「ひどいなー。僕はこの子と純粋なお付き合いするんだよ? 犯すなんて死んでもないよ! 合意のセックスはするだろうがね」
この人たちは本気で言ってるなら本当に変態としか言えない。
そして男性はどこかに行って、私は中に通された。
中は結構広くてたくさんの書類が溢れかえっていて、棚には綺麗な白いティーカップに他には何もなかった。後目に着くのは机だろうと言うものに本棚らしき物くらいだ。
「さて、こっちに座ってくれるかな」
そう言って書類の山を雑に崩してテーブルを出した。
私は素直に従い対面に座る。
「悪いとは思うが本当にJCとセックスしたいとおも――」
私はためらいもなくテーブルを蹴り上げた。それは簡単に吹き飛び教授の顔に直撃し、そのまま吹き飛ばす。
現実なら完璧に怒っているだろう。そもそもアニメのように殴られて笑っていたりバットで殴られてはいはいと言える人間なんていない。必ず反撃するだろうし、理想の形がアニメだとしたら、それはただのまやかしであり得ない事でもありご都合主義でもある。そうした方が楽しめるし平和に見えるから。でも、その理想に近づこうとする人はいなく、気が付かないでへらへらしたらウザいと思われる。何より、そうゆう人に限ってバカ騒ぎ物をギャグとして見ている傾向があるし。
でも、攻撃力特化って普通の攻撃じゃない行動にも作用するんだ。これだとステップからの踏み込み、膝蹴りも判定されそうだ。
「い、痛いじゃないか。でも、JCにテーブルぶつけられる何て快感なんですけど」
「変態」
そして、テーブルを元に戻してまじめな顔になった教授は、何度か頷いてから話し始めた。
「君のそれ七光鉱石だな。ブローチのエメラルド」
教授は指を指して聞いてきた。
私はそんな事なんて知らないから、無視する。
「説明なしか。つまり君の村も滅ぼされたという事だね」
「そう言うなら初めから言って」
「いうほどでも無いだろう? 答えてくれないんだからさ」
「私が知ってると思って聞いたの?」
「いいや、知らない事前提で聞いた」
「なら答えなくてもいいよね?」
私は率直に聞いたけど、帰って来たのは答えではなかった。
「七光鉱石はこの世界に七つしか存在しない特別な鉱石だ。何より他の鉱石と違うのはそれが宝石と言われるのと、他のより出力が違うからだ。そこら辺は聞いてるだろう? 七光鉱石は人とは戦ってはいけない」
その言葉を聞いた瞬間、無意識にテーブルを蹴り上げていた。それは先ほどよりも威力があり何回転かして教授に当たり、そのまま吹き飛ばし棚とテーブルに教授を挟めた。
「ごめんなさい。かなりあの時は嫌な思いと殺意があってその言葉を聞くと反射的に」
「い、痛い。ま、まぁいいけどできれば助けてくれないか?」
私はテーブルをどかして元の位置に戻すと、教授はティッシュを鼻に詰めて、また座りなおした。
「そうだと思ったよ。とりあえず簡単に言うけど、七光鉱石には特別な物が備わっている。それは君が死なない限り、君の力になり続ける。他の鉱石は譲渡可能だが、その鉱石は譲渡できない。同時にレベルが20を超えるとその人に合った機能が解放される。見たところ機能は解放されているようだし問題ないだろうな」
「機能が解放されてるんだ」
「で、君はスキルは持っているのか?」
「スキルは無い。何も覚えてない」
「すると君の機能は二つ名ものだな」
そう言われた。
二つ名の説明は村で聞いていた。
特別な戦い方をする人に自動的に与えられる称号の様なもの。それはその物でその人の戦い方がわかり、それだけで特殊スキルが発現していると示すようなもの。
「私スキル何も無い。説明と違う」
「いいや。間違い無い。君の機能は確実に特殊スキルだ。何より攻撃を上げていてレベルが20を超えているのに何もスキルが無いというのは、君のその機能が邪魔している」
「そのスキルってわかる?」
「わかるさ。君はモンスターに襲われて、守るより怒りが支配したはずだ。敵討ち、モンスター、力。それが君に合わせた機能の解放だ」
あの時のが私の機能を決めた。
それは私があの時、白衣の男性の事を大切に思ったから。私に優しい笑みを向けてくれて助けてくれた。死ぬのを覚悟でそしてあの黒い男性が私の敵。
「私の機能は召喚に特化したんだ」
「お? 君は思ったよりもバカじゃないんだね」
「悪い?」
「いいや。全然。なら話は早い。君にはスキルを習得させてあげよう。今日からここに住むと言い。私が夜のお仕事と召喚両方教えてあげよう」
「夜のは結構。したら埋めてもらう」
「それは厳しいね! でもできれば踏むか蹴るか、あそこを殴って――」
今度はテーブルじゃなく手が飛んで行った。
うん。この教授はアニメの世界に居るようなすごく憧れる事が許される人だ。エロいけど。
「悪かった。じゃあ向こうの扉の先に行ってくれるかな」
そう指されたのは入口とは反対に位置する扉。風が少し流れていることから立て付けが悪いタイプで、奥からは青草の匂いが漂っている。
私は言われるがままにその扉の先に行った。
そこには家の中とは思えない大草原が広がっていて、涼しい風が吹いており、快晴と言えるほど青い空がそこにはあった。
「驚いたかい? ここは僕が作ったんだ。この殺伐とした世界に憩いの場をってね」
「あなたにもいいところがあるの?」
「もちろん。エロいのはおまけだよ」
そう言って教授は書類の紙束をもって奥に行く。
私はその後に続いていくと、本当にここが家の中だと思えなくなる。
「さて始めるかな。よく見とくんだ」
そうして教授は紙束を何枚か空に飛ばして、深呼吸して何かを言い始める。
「大地に縛られし浄化の巨人よ、今我の名を冠しここに形作れ……インペルスクエア:ゴーレム」
すると、空中を舞っていた紙が茶色に光だし空中で五か所に集まり白いラインがそれぞれを結ぶ。
それは五芒星の形で地上に向かって降りていくにつれ、少しずつ大きな巨体を表していく。
高さは六メートルくらいで、腕はごつごつしており、顔には仮面が付いていて少し可愛いとさえ思う。体は全て岩石でできていた。
「インペリアルゴーレム。ゴーレム召喚の中では最上級の固さを誇り、君の攻撃にも耐えれる。もちろん特訓用で呼んでいるから命令はしないが、命令したらこの通り! インリ! アタック、ラン! リターン! ファイア!」
すると先ほどまで動かなかったインリと呼ばれるゴーレムの仮面が光り動き出す。
右腕を上げて二歩後ろに下がり、右回りしてこちらに背中を向けた。すると腕を大きく振りかぶって思いっきり地面を殴りつけた。
何も起こらないと思ったら、地響きがして大地にヒビが入り、前に大きなクレーターを形成した。それは大きなメテオが落ちたような衝撃と、砂嵐が起きたような土煙、そして台風が来たような突風も纏って目の前を土煙で染め上げ私を吹き飛ばす。
落ち着いたときにゴーレムを見ると、そこには竜巻や地震とかそんな生易しいものではなく、神により土を抉られ、超電磁砲で地上を掃射したような窪み、マグマが地面を通ったのではと思うほどの赤く焼かれた大地に、ここで神々が戦ったのかと思うほどの放射状に何もなくなった荒野と化す大地。
それは天災と言うよりは、神災と言ってもいいほどの惨状だった。人の力や自然の力ではどうしてもできないであろう物。
「わかったか。これが召喚術。僕のはアクセス機無いからな。こっちにいるのは管理者IDの賜物で、この紙は私が研究して作った触媒だ。君のはこれよりも威力や攻撃方法は計り知れない。最大出力で放てばこの世界が氷河期になるかもな」
「そんなの私にできるの?」
「できる。今からそれを伝授するんだ。まずは簡単な物から少しずつアクセス機から生成していく」
そして、数十分解説されてやってみる事に。
私はブローチに手を添えて、イメージを固めようとする。
頬に当たる風、草原の草の香り、木々のさざめき、太陽の熱、大自然の力を全身に感じるように意識する。
するとブローチから翠色の粒子が舞って行き、頭の中に言葉が浮かんでくる。
「何か浮かんできただろ? それを唱えるんだ」
「うん」
私の頭の中にたくさんの光景が浮かぶ。大地に生えた生命の力、そこを流れる水、それが川になり、海に流れる。そして海底の火山が爆発し、空に行き積雷雲になり突風が吹く。
そして一つの言葉が浮かび上がる。
「いいな? 絶対にゴーレムから外すなよ? その出力はちょいとやばい。僕も蒸発する可能性があるからはずすなよ?」
「それはそれでいいと思う」
「やめて」
そして深呼吸をして私は唱え始めた。
「全てを支える大自然の驚異よ。今私は願い奉る。目の前にいる全ての生命に等しい再生の力を具現化したまえ。我ここに誓う。汝をもって自然の力の顕現を。我、汝願う。目の前の敵を砕き滅ぼせ! エクレール・タンペット!」
唱え終わる。
目の前に翠の本流が形を成し、流星の如く突き進み、少しずつ形を形成していき、地面を抉り雷光の如く空気を震わせながら突き進む。そして周りに嵐をもたらし竜がいたずらするように周りの地形を変えていく。何本も渦が顕現し、大地を紙切れ同然と言わんばかりに地上を巻き上げる。その際に竜の逆鱗に触れたかのように黄色い紫電が何本も何本も周りに被害をもたらす。
「ちょ、ちょっと待て! 外れるどころかこのままだとこの空間すら破壊しかねないじゃないか! インリ! リフレクト! オン、リターン! インプット、プロテクションエリア。ラン、ターンファイア!」
突風に髪を遊ばれながら全力で叫んでいた。
するとゴーレムはこちらに向き、青色の光の膜を周りに展開して少しずつ広げていく。
その際も私の出した渦は大地を削って行き、今では大量の崖が至る所にできていた。それも少しづつ標的に向かって行き青い膜にぶつかるも、簡単に破壊しゴーレムに直撃する。
直撃した渦はそのまま標的を消滅させようと当たり続けて、大きな落雷を落とし爆発を起こした。その後に二本目もあたり落雷が落ち今度は爆発せずに渦に吸収され、渦が雷撃を振りまいてる。また数本の渦もゴーレムに当たり落雷が落ち、威力がどんどん増してく。最後の一本が当たった瞬間、一本の大きな渦になり、壁を破壊すべくゴーレムを一点突破しようとレーザーみたく突き進む。一本になったことにより余波がすごく私たちとゴーレムは100メートル以上離れているはずなのに、ここまで雷撃が飛んできていた。
「ちょ! 嘘だろ? インペリアルゴーレムが削られて」
よく見ると、守っている腕が今にでも砕かれそうでその破片が渦に吸収されていく。
そして数秒後には腕が砕かれ、腕が渦に吸収され渦が灰色から薄茶に変わり雷撃が茶色の渦に変化して一気にゴーレムを押していく。
ゴーレムはどんどん遠くに行き、見えなくなった時には渦は直径10メートルに及ぶほど大きくなっていて、最後には見えないところで大爆発を起こし消えた。
ほんの数秒何も起こらないと思ったら、地面がめくり上げられながらすごい勢いでこっちに向かってきた。
「おいおい! 逃げるぞ! 急げ! あの扉に早く!」
私は言われたとおりに走り出したけど、所詮は人間の足。虚しく地面の破壊に巻き込まれる。
「ぐは! こんな事になるならストップしとくんだった!」
「知らない」
私たちは空中に放り出され、たくさんの土の塊に体をぶつけ、ただ揉みくちゃにされながら数分遊ばれる。
どんどん怠くなって行き、意識が睡魔に襲われそうになっていた時に地面にたたきつけられた。
全身が怠さと倦怠感に襲われそのまま寝てしまおうかと思ったが、意地で立ち上がって教授を探した。
あっけなく見つかった教授は、苦笑いの表情で固まっていて、何度かビンタを入れると。
「死ぬかと思ったよ! 死ぬ前に君の処女をもらいたいものだ! それと、君のあれはよく見えたから僕の息子はこんなにも」
蹴りを入れる。股の間に全力の蹴りを一発、二発、三発。
「これで死ねる? それとも興奮する?」
「い、いや。こ、これで現実に引き戻されました。はい」
痙攣しながら悶えて、今にも気を失いそうになりながら必死に答えていた教授に私は素っ気なく、
「これでいい?」
「はい。申し分ありません。私めのゴーレムさんを還付なきまで叩きのめした挙句、ここの大切な草原を荒野に変えてくれたお礼は、この蹴り三発と言う残酷な処刑をしてくれて私めは満足です。できればもう少し優しくなってくれたら嬉しいです。暴力はたぶんその年で何も教えられてなかったかもだけど、本当に止めてください。私めは死んでしまいます。本当の現実なら男性と言う生き物を一人お亡くなりにしてます。はい」
「そう。気を付ける。私は棄てられたから大人の男性に容赦しないのは仕方がない。今度から教授も気を付けて」
「そんなに目の敵にしないで。本当につらいんだから」
私は周りを見渡した。
来た時みたいな青々とした草原は広がっておらず、荒野と言うに相応しい容貌がそこに広がっていた。
何もない荒野で教授を引きずって歩いていくと初めに居た場所まで戻ってくる。そこには大きな亀裂と無差別に抉られた大地があった。それは大きな鎌で地面を切り裂いたような現状だった。
「これはかなりやらかされた」
落胆した声でそう言われた。
その際の教授の顔は悲しみに染まっていて、大切なものを失った後の様だった。
「ごめんなさい」
「ん? ああ、気にするな。僕もここまでのを初めに使われるとは思ってなかったんだからな」
「でも」
「謝る優しさはあるんだな。エロい奴には容赦しないのに」
「それとは別」
「で、どうする? これからも僕のところにいるかい?」
「うん。私は私の村を壊した人を倒したい。その為に強くなりたい」
「OK。なら今日から添い寝……嘘ウソ! そう構えないで!」
足を上げた態勢で固まっていた私に静止をかけた。
「で、君の名前を聞いていいかい?」
「私の名前?」
「もち」
「奏セレナ」
「僕は岬戸香だ。よろしゅう」
「うん」
そして私たちは二人で鉱山の街で二人暮らしをすることになった。
ここで私は強くなる。
「で、この惨事どうしよう。憩いの場がたった数時間で絶望の丘になったんだが」
「また作ればいい」
「簡単に言わないで!? ここ作るのに三か月よ!?」
「召喚なら創造もできるでしょ?」
「そうだけど……まさか丘をすべて再生する気!?」
「うん。その代り教えて。私のエメラルドから出せる全ての事」
「もちろん!」
最後には笑顔で握手した。
これが私と教授の出会いだった。それは、初めて私の村が襲われた時のあの白衣の男性が見せた笑顔に負けない程の笑顔を出すことができた。
それはたぶんこの人のお陰なんだと思う。アニメの世界のバカ騒ぎが好きで憧れている人は多いけどそれは憧れであって、実際にはできない。でも、この人はやってしまった。やれてしまった。その事が尊敬と言う形に姿を変えた。初めの変態と言う嫌悪感を意図も簡単に変えてしまうこの人は、アニメの中のヒーローの様で眩しく見えた。
またあの黒い人が来た時はここの街を守る守って見せるここが私の新しい居場所だから。
読んでくれてありがとうございます。
外伝と言う事でいろいろ考えていました。
本編だと明かされない真実と、村が襲う男の存在はこちらの物語に大きく関わってきます。
本編読んだ方にはあれ? これ違くない? と思われるところがあるかもしれませんが、時系列上は前書きの同時期と言うよりも一年前、本編からだと二年前からのスタートです。
それから、数話の内に同じ時系列に追いつくように話を構成したく思って言います。
この時期……街ができたと言うのはリリースされて半年後の出来事です。これは本編でも外伝でも書くことが無いと思うのでこちらで書きました。
内容に関しては、セレナにはいろいろな試練がこれから立ちはだかります。それもこの世界だからと言うよりは彼女だからと言う方が正しいかもしれません。
彼女の成長は正の成長に加え、マイナスの成長も同時に行っていきます。
13歳の少女が大きな力を持つという事の理由と、その力の使い方に悩み成長していく姿を描いて行けたらなぁと思います。
最後にこちらは本編よりも不定期です。一話一話をこれくらいの長さにしていくに加え何より私に文才が皆無です!
ですから、どうしても更新が遅れそうですがどうかこちらもよろしくお願いいたします。