また会おう
気が付くと、夜の闇が広がっていた。顔にぽつぽつとできたニキビぐらいの間隔で付いている家々の 明かり。
俺はまたあの交差点から15メートルほどの上空に浮いていた。でもさっきとは違い、妙に騒がしい。
ふと、下を見ると眼下にはパトカーが来ている。赤色灯が投げかける血のような赤で周囲が染まっている。
警察官は4人ほどいて、現場検証をしているようだ。俺の死体はもういない。救急車で運ばれてしまったのだろうか。
野次馬達が群がって現場検証の模様を眺めている。どんなに現場検証したって、どうして俺が交差点の真ん中でトラックに轢かれたのかはわからないだろう。
と、俺の目の前がぱっと光ったかと思うと、次の瞬間には美雪が現れていた。
俺は嬉しかった。もう時間が来ちまって会えないかと思ったから。
「いえ、もう時間がきたので、あなたとはここでお別れです」
「え、だってまだ案内とかあるんじゃないのか?」
俺は焦った。なんとかならないのか、と頭の中で思考をめぐらせてみるが、当たり前の話だが魂の俺にはどうすることもできない。
「私、案内人やっていてよかったです。でなければ、楠木さんに会えなかった」
「もう会えないのか?」
「……」
「……ん?」
その時、体が段々空へと浮き始めた。いや、何かに引っ張られているという感覚と言ったほうが正しい。
「お、おい、これは?」
「神様の所へ行くのです……さようなら」
俺の体がフワフワとさらに上空へ浮いていく。
美雪が離れていく。
なあ?
あれだろ?
また今みたいに追いかけてくれんだろ?
そうだろ?
ノートくれた時にみたいに、お守り渡そうとしていた時みたいに、俺にいきなり声かけて引き止めてくれんだろ?
……ちくしょう。
「なあ! また・・・・・・また会おうな! 今度はお守りちゃんと貰うから!」
美雪が俺のほうを向いてにっこりと笑った。
そう、その顔が見たかったんだよ。
さあ、引っ張ってさっさと上へとやっちまってくれ。
俺は空を仰ぎ見た。空がパッと光ったかと思うと、全てが真っ白になった。




