ある海の出来事
浦島太郎をベースにしています。誤字脱字は温かい目でご覧ください。
倭国内の丹後の国の海岸線にある村に太郎とよばれる男がいた。彼は漁師であり、素潜りも得意な人物であった。私は同じ村に住んでいたが彼以上の漁師は知らなかった。
ある日、夜の村の上空を光の塊が通っていった。夜の空はよく流れる光をみるが、今回の光は近くの海に轟音とともに入り、やがて沈んでいった。その影響なのか、大波が村を襲った。私の家や太郎の家は高台にあり無事だったが、沿岸に住んでいた者達の家は波に流され村の半数の者が波と共に海に連れていかれた。村は先ほどの出来事が嘘のように静かになった。あちこちで涙を流す音だけが聞こえていた。
海の神の怒りだと長老をはじめとした村を治めていた者たちは言いはじめたが太郎はあの光の塊のせいだと言い、口論になっていた。私も太郎と同意見であった。
神の怒りであったとしても、怒りの理由はわからない。村の巫女は祈りをはじめて生贄が必要だと言い始めた。巫女は太郎の妹を生贄にすると言った。太郎は怒った。私も怒り長老に巫女に従わないように願ったが長老は巫女に従い太郎の妹を拘束した。何もわからないこの状況で命を犠牲にする意味がわからず、安易な考えに思えてならなかった。素潜りに使う槍をもって長老のもとに行こうとする太郎を必死に止め、私は太郎にある考えを提案した。
翌日、村の者や私が見守りながら太郎は船に乗り光の塊が沈んだ場所に向かった。そこに潜り何が沈んだのか見つけることを私は提案し、長老や太郎は了承した。太郎の妹の解放が条件であった。太郎は私に預かっていてほしいと黒曜石の小刀を渡した。私は頷いて預かった。太郎の妹は心配そうに沖合に向かう太郎を見つめていた。私は言葉をかけることができなかった。
太郎が潜ってすぐに海が光始めた。太陽の輝きよりも強い光であり、目を開けていることが難しかった。太陽が山側に動いた頃、光が収まり始めた。長老や巫女は祈りや舞をはじめたが私と太郎の妹は海岸線を太郎を探してはしりまわった。いくら太郎でも潜っていた時間を考えると海上にいないといけなかった。あたりが暗くなっても太郎は見つからなかった。長老や巫女は太郎の妹を生贄にしようとしたが、私は黒曜石の小刀をもって長老と巫女の前にたち、時間を稼ごうとしていた。私は太郎が生贄になってくれたのだと二人を含めた村の住民たちに言って説得した。太郎の生存を信じていたが太郎の妹を犠牲にすることは何としても止めたかった。長老たちは私の説明に納得し、太郎の妹は捕まることはなかった。
その日から私と太郎の妹は海岸や船に乗り太郎を探し続けた。しかし、太郎は見つからなかった。長老たちは私達に捜索をやめるように伝えた。生きて太郎がどこかで助けを待っているかもしれないと太郎の妹は泣いていた。私は長老たちに従うと伝えて、太郎の妹を家に送った。そして、私はある提案をした。私と夫婦になり漁師と海女として漁をしながら太郎を探し続けようと。太郎の妹はすぐに了承してくれた。私は提案したがあまりにも早く了承してくれたので驚くと、太郎の妹は理由を聞くのは野暮だと笑っていた。
夫婦になった私達は毎日のように漁にでた。妻は海底に大きな石があることを確認していた。また、村で今までとれていた魚がとれなくなり見たことのない魚がとれるようになっていた。村の者も気づいていたが光の塊が海流を変えたのが原因だと言っていた。海中の魚の量も明らかに増えていて私も光の塊のせいであることに同意であったが得体のしれないものの存在を感じていた。
数年がたった頃、海から突然魚がいなくなり、大型の鱶が増え始めた。私たちは漁に出ることができなくなった。天変地異の前触れではないかと村では騒ぎになったが異変はこれ以外にはおきていなかった。漁を中心に生活していた私たちの村は漁ができないことでやがて人々は離れていった。もはや村とも言えなくなったが私と妻は畑を耕し、山の山菜などをとりながらこの地に残った。
私たちが長老と言われる年齢になった頃、夫婦で月明かりに照らされる海をみながら涼んでいると海がかつてのように輝き始めた。やがて海から光輝くものが飛び出し、空のかなたへ飛んでいった。あたりが静寂を取り戻したころ海から人があがってくるのが見えた。私たちが海岸へ降りるとそれは太郎であった。姿を消した日の姿のままであった。私たちが喜んで近づくと太郎はたじろいでいた。私たちのことを説明し、何があったのかを聞いた。太郎は最初信じていなかったが、ずっと保管し肌身離さずもっていた太郎の手作りの黒曜石の小刀などをみせると信じてくれた。
太郎は海に潜ると何か引っ張られるように光に引き釣りこまれた。そこには美しい女と宮殿があった。宴が催されたが詳しい記憶がこれ以上ないと言った。太郎は妹が生きていることに喜んでいたが同時に私たち夫婦の年齢をみて残されることを悲しんでいるようであった。大事そうに抱えていた箱についてきくと、決して開けるなと言われていると言った。せめて、いいものが入っているのではと太郎は言って箱の蓋を開けた。すると、煙のようなものが出てきて太郎を包んだ。太郎の悲鳴が聞こえだすと太郎は急速に老人になり、やがて灰になって風に乗って消えてしまった。
私たち夫婦はしばらく呆然として動けなかった。
しばらく妻は魂が抜けたようになっていた。私は励まし続けたが妻は亡くなってしまった。私は記憶を頼りに一連のことを書き残すことにした。幻の出来事にしない為に。
私たちが見た太郎の最後は幻だったのか。事実だったのであれば妻や太郎があまりに不憫でならない。仮に神の御業ならなぜ太郎がこのような目にあわなければならないのか説明してほしいものである。




