その後の二人①
宰相補佐、無表情令嬢を“恋人扱い”し始める**
レティシアとアレクシスの関係は、事件後も続いていた。
正式な恋人ではない。
しかし、周囲から見れば──
「……あれは、どう見ても恋人では?」
「宰相補佐があんなに優しいなんて……!」
「レティシア様、表情は無いのに……なんか甘い……!」
そんな噂が飛び交うほどだった。
ある日、レティシアは宮廷の庭園で花を眺めていた。
無表情のまま、静かに風に揺れる花を見つめる。
そこへアレクシスが現れた。
「探した」
「……探していたのですか?」
「当然だ。君がいないと落ち着かない」
(……落ち着かない?)
アレクシスはレティシアの手を取り、指先に軽く口づけた。
「……っ」
レティシアの目がわずかに揺れた。
アレクシスはその反応を見て、満足げに微笑む。
「可愛い」
「……可愛くありません」
「可愛い」
「……可愛くありません」
「可愛い」
レティシアは無表情のまま、ほんの少しだけ耳が赤くなる。
アレクシスはその変化を見逃さず、レティシアの腰に手を回した。
「……アレクシス様?」
「恋人のように扱ってもいいか?」
レティシアは無表情のまま固まった。
(……恋人……?)
アレクシスはレティシアの頬に触れ、静かに言った。
「君が嫌でなければ」
レティシアは無表情のまま、ほんの少しだけ頷いた。
アレクシスは息を呑み、レティシアをそっと抱き寄せた。
「……ありがとう」
その声は、驚くほど優しかった。
レティシアは、アレクシスの執務室で書類を整理していた。
無表情のまま、淡々と作業を進める。
アレクシスはその様子をじっと見つめていた。
「……レティシア嬢」
「はい」
「君は、本当に……綺麗だ」
レティシアの手が止まった。
(……綺麗?)
アレクシスはゆっくりと近づき、レティシアの手を取った。
「無表情なのに、こんなに心を揺らす人は初めてだ」
レティシアは無表情のまま、ほんの少しだけ視線を逸らした。
アレクシスはその反応を見て、静かに微笑む。
「……可愛い」
レティシアの心臓が跳ねた。
アレクシスはレティシアの頬に触れ、ゆっくりと顔を近づけた。
「……キスしても?」
レティシアは無表情のまま、ほんの少しだけ目を閉じた。
アレクシスは息を呑み、そっと唇を重ねた。
優しく、短く、しかし確かに。
レティシアの仮面が、またひとつ揺らいだ。
アレクシスは額を寄せ、囁いた。
「……好きだ」
レティシアは無表情のまま、しかし確かに微笑んだ。
「……私も、です」
アレクシスはレティシアを抱きしめた。
「……可愛い」
レティシアは無表情のまま、しかし心の中でそっと笑った。




