第六話 政務
小姓が言った。
「本日の午前中の自由時間ですが、どうされますか? 基本的には儒教の講義を受けるようですが」
勇治が上機嫌に言った。
「初日くらいは遊んでいいだろう?」
「そうですか」
「何をされますか?」
勇治は今にも走り出しそうな勢いで言った。
「将棋に決まっているだろう?」
「では楓の間で少々お待ちください 盤と駒を用意いたします」
「そうか!」
そう言いながら楓の間へと向かった。
将棋の準備が終わった後、小姓が聞いた。
「対戦は誰と?」
「将棋が出来る人なら誰でも!」
小姓は思った。
誰でもか…難しい…前下手って言ってたらしいからな…一応機嫌を取るために 出来るけど、小姓の中で一番下手な人を連れてこようかな… そんなことを思いながら小姓部屋へと向かった。
えっと…たしか将棋下手なのは…あ、あいつだ! 棚倉 主衛門だ!
そうして棚倉が楓の間へと来た。
「御初に御目にかかります 本日対戦相手を務めます 棚倉 主衛門と申します」
「松平 勇治だ宜しく頼む」
「では私が駒を並べますので御待ちください」
棚倉が駒を並べ始めたが、変な事に気づいた。
そう 駒の配置を間違っていたのである。
『え?! こっちの飛車と角逆じゃない? え 言おうかな… うん言おう』
「飛車と角の位置を間違っていないか?」
「本当ですね! 申し訳ありません」
棚倉が土下座した。
それを見て勇治は驚きながら言った。
「土下座まではしないで良い」
「そうですか」
そんなこともありつつ、将棋を終えた頃別の小姓が言った。
「殿!昼食の時間でございます!正室が居る場合は大奥の松御殿…つまり正室の部屋で行いますが、今は居ないので小座敷で取ることになります」
勇治は少しつまらなそうに言った。
「そうか 今行く」
小座敷で昼食をとった後、勇治は四半刻後(約30分後)程庭園を眺めた。
その後庭園に小姓が来た。
「殿!政務の準備が整いました! 小座敷へ来てください!」
勇治は不安そうに言った。
「そうか 緊張するな…」
「そうですね…」
そうして小座敷にたどり着いた。
政務は御側御用取次の役職の人が家老らの案件を伝え、殿に問題がないか確認してもらうというのが主だ。
御側御用取次が言った
「殿 案件でございます 水山郡の温井川上流付近で中規模の地震が発生し、あばら家を中心に数棟が倒壊したとの報告が上がっております 家老らの提案によれば被害者に十両(約120万円)の保証を支払う予定だそうです」
勇治は緊張しながら言った。
「そうか それで良い」
「ははっ」
四半刻後、報告が勇治の元に来た。
「殿!報告がございます! 勇治のはとこ松平 勝男が治める薪下藩と、勇治の叔父の松平 光内が治める小水藩が三日後執り行われる殿就任記念の対面に欠席する模様です 理由は書いてありませんでした」
「そうか」
半刻後、勇治の元に今度は案件が来た。
「当表藩が行っている南洲全体のキリシタン弾圧部隊の任を任されていた部隊5名を薪下藩の藩士とみられる10名の武士がキリシタン弾圧部隊を襲撃し、殺害したとのことです」
勇治が飽きれながら言った。
「はぁ 全くあいつは… 自分の藩士すら管理できないのかよ…」
御側御用取次が言った。
「まだ薪下藩の藩士と決まったわけでは無いですよ」
「すまん とりあえずそいつらの身元が分かったら解雇させよう…」
「伝えますね」
半刻後、政務が終わった。
勇治が伸びをしながら言った
「思ったより短かったな」
小姓が言った
「そうですね 平和ということですよ」
勇治は少し怒った声で言った。
「平和? うちの藩士5人死んでるけどね…」
小姓が申し訳なさそうに言った。
「すみません」
勇治が申し訳なさそうに言った。
「お前に言った訳けでは無い あのクソ野郎共に言っただけだ…」
小姓が注意した。
「殿!」
「すまない」
そんなこともありつつ休憩の時間になったのであった。
次回予告
第七話 夜




