第四話 朝
明け六つ(約午前6時)小姓が勇治を起こす。
「殿!朝でございます!」
そんな声が御殿に響き渡る。
その声を聴いた台所役人たちが朝食の準備を始める。
そんな中、勇治が眠そうな目を擦りながら言う。
「吃驚した… 眠い…」
「おはようございます 殿」
「まだ寝たい…」
勇治はそう言いながら布団の中へ戻ろうとした。
「二度寝は駄目です!!殿!!」
「仕方ない 楓の間で将棋でもするか…」
「駄目です 洗顔と歯磨きをしましょう」
「そうか…」
勇治は少し不満そうな顔をした。
「小納戸!房楊枝と歯磨き粉を用意しろ!」
「ははっ」
小納戸が房楊枝と歯磨き粉を取りに向かった。
「あっちの御殿に居た頃より厳しいな…」
「当然です 南洲二国の殿ですので」
「そうか…」
そんな会話をしてしばらくの沈黙があった後、
「勇治様 歯磨きの準備が整いました」
小姓が言った。
「苦労であった」
「はっ」
「では私が致します」
勇治は歯磨きをされながら言った。
「わはひはほうほほほ…(私はもう子供…)」
「歯磨きされながら喋らないでください」
「ははっは(わかった)」
勇治は少し困りながら言った。
「少し恥ずかしい…」
「殿に手間を取らせることは出来ません 次第に慣れますし」
小姓は小納戸をまた呼び、言った。
「小納戸!洗顔用の糠と湯桶を用意しなさい!」
「ははっ」
小納戸が今度は洗顔用具を取りに行った。
「なんでもやって貰うのは忍びない…」
「仕方の無いことです」
勇治は少し申し訳無さそうな顔をしながら言った。
「そうか」
その頃小納戸が戻って来た。
勇治は小姓よりも先に言った。
「苦労であった」
「ははっ 有り難き御言葉でございます」
そうして勇治の洗顔が終わった後、髪役の小姓が勇治の髪を結った。
勇治が上機嫌に言った。
「ふう 何か何もしてないのに疲れた… でも!将棋の時間だ! 将棋出来る小姓を呼んでくれ!」
小姓が少し申し訳なさそうに言った。
「すみません… もう朝食の時間です…」
勇治が舌打ちした。
「あまり怒らないでください…」
勇治が申し訳なさそうに言った。
「すまない…」
小姓が言った。
「朝食は小座敷で食べましょう 行きましょう!」
「うむ…」
小座敷に御膳奉行が食事を二膳運んできた。
それに加えて、毒見役の小姓が小座敷に入った。
「こちらが朝食でございます」
毒見役の小姓が言った。
「私が毒見いたします」
「そうか」
毒見役の小姓が膳のすべての品を食べた。
「毒はございません 御安心して御食べ下さい」
「そうか 苦労であった」
「ははっ 有り難きお言葉です」
そうして勇治が膳に口を付けた。
「美味だ! 流石奉行だな!」
「有り難きお言葉です」
勇治はすぐに完食した。
「では膳を下げさせて頂きます」
そう言い、御膳奉行は膳を下げた。
その後、小姓が言った。
「これから医師による診察です」
「そうか」
~~四半刻後(約30分)~~
「問題が無いようで良かったですね」
「そうだな」
小姓が言う。
「これから朝の惣触と大奥案内でございます 大奥に向かう準備を」
「そうか 分かった…」
勇治は少し寂しそうな、そして少し悲しそうな声で言った
次回予告
第五話 大奥




