第98話 迫りくる文字列
どうやら風邪をひいてしまったようです。
こんな時にはロボメイドが欲しくなりますよね。
―――2026年5月8日 界面機構サーバールーム
大佐と雪乃は佐竹が消えたことについて調査をしている。
大佐は佐竹のデスクを調査していたが、引き出しの中からとあるA4用紙を見つけていた。
その裏で、雪乃はサーバーコンソールを調査していた。
「スキャンによれば、確かにコンソールを直前に操作しています。ただ、これはパッチのインストールを目的としたものなのか、それとも他の何かなのか分かりませんね。」
考えを整理して雪乃はコンソールを操作する。
ハードを介さない雪乃だからこそできる超高速での操作にサーバーがうなる。
ファンは一層回転数を上げ、HDDの鳴く音が響き渡る。
数秒ののち、雪乃は大佐に報告をした。
「大佐。佐竹さんは失踪した可能性が高くなりました。」
「そうだな。私もそう思う。」
「コンソールから出た情報は一つでした。パッチ1.1のコードですが佐竹さんの以前のコーディングスタイルと比較して少し奇妙な部分が見てとれました。」
「私が調べたデスクからはおそらく外部からパッチ1.1の基礎となったコードが印刷されていた。普通に考えて佐竹のようなIT人間がわざわざ原文を印刷するのはありえない。」
2人は見ていなかった方の情報を確認する。
「ちょっとまってくれ、雪乃...あまりにもミスがなさすぎる。」
「それはどういう事でしょうか?」
「あまりにも機械的過ぎる。佐竹のコードは無駄が多い。それも含めてあまりにも複雑になっている。だが、佐竹のようにコーディングに人生をささげた人物からすればこれはエレガントじゃない。」
「なるほど。似せて完ぺきだからこその違和感ですか。」
「ああ、これは第三者の作成物だ。」
「私の方も確認しましたが、同時に遠隔で書類の印刷履歴を確認しました。その際に過去に同様の文章を印刷した形跡はなし。これは明らかにおかしいですね。」
「となると佐竹はこのコードを実装していなくなった。」
「はい。それと大佐。このコードを流し読みしてください。」
「分かった...あ...」
「はい。これは思想です。」
「なるほど。だから佐竹は確認しに行ったのか」
「はい。まだ間に合います。我々もすぐに向かいましょう」
コードにはなんとなく住所のようなものが隠れていた。
文字をアナグラム化しても、雰囲気が残ることがある。
その応用だろう。
だが、このコードは明らかに高度な技術を用いて伏せられ、渡されている。
そもそも、この呼び出しは佐竹に向けたものなのか...それとも...
どちらにせよ急ぐ必要があった。
「向かうぞ、雪乃」
「はい。お供します。」
2人はすぐに車で佐竹を追った。
―――10時30分 車内
「大佐、今回の件はどこまで見えてるのでしょうか?」
「まだ確定事項が何もない。」
「そうですか...」
「どうした。雪乃」
「あの...単に心配なのかもしれません。」
「ああ、俺もだ。」
2人は非常に落ち着かない様子だった。
「一応、装備の確認だけしておいてくれ。今回は市街地A装備でいい」
「はい。座席の下にすでに準備済みです。」
「助かる。」
そういって大佐はすぐに座席の下へと手を伸ばす。
そしてごそごそと腰に何かを装着する。
暫くして、後部座席に掛けてある緑色のコートを手に取った。
「大佐、それは...」
「これか、これはあれだよ。単にゲン担ぎというか...そうだな...あえて言語化するならカッコつけだな。」
「...そうですか」
大佐がとったコートは緑色のロングコートだった。
季節にそぐわないかと言われればそうとも取れるそれは
レインボーブリッジを封鎖出来なった刑事にインスパイアされて屋外任務の際には必ず着ているものだった。
「まあ、こればっかりは癖でもあるしな」
「大佐。ここです。」
そうして二人は目的地である廃ビルにたどり着いた。
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