第95話 影響する拡張子
とても寒くなってきましたね。私も布団から出るときが億劫になっています。
しかし、思い返せばやはり冬の景色というのはとても幻想的だとも感じています。
四季のある国だからこそ見える季節の特色...この作品にもいずれ冬特有の描写を入れたいなと考えています。
―――2026年5月5日 18時00分
ついに、アドバンスドウォーⅡが正式リリースされた。
佐竹は爆増する同時接続に対して対応を行っていた。
「このままじゃサーバーがダウンするな。」
佐竹は考えた。
確かに、このままの勢いでは確実にダウンする。
それに、日本国内向け作品であるから日本語が主言語であり、ルート分岐は基本日本語を想定して作られているアド戦だったが
国内で大きな反響を呼んでいることもあり、海外接続も増えている。
そこで佐竹は、ミヤビAIをうまく使いえないか考えた。
「AI処理の部分、特にCOREに依存する部分を概ねミヤビクラウドに代替させれば...」
ピコンと接続確認の音が鳴る
「よし、これで少し軽減に...」
佐竹は限界だった。いくら大佐と雪乃が作業を分担していたとはいえ、そもそも48時間以上の作業は人間にとっての限界を大きく超えていた。
「すこ..し...寝る」
―――同時刻 しずめ
「これで、ひとまずはいいかな」
しずめの自室にあるモニタに表示されていたのは
〈限りなく遠回りを〉
という短文だった。
アド戦はプレイヤーの選択でストーリーが新規生成される。
その特徴がゲーム自体の進行度を不明瞭にしていることもあり、どこまでが中間なのかといった概念がない。
だからこそ、プレイヤーは各々一区切りだと判断したタイミングで中断する。
「明日、どんなようすになるんだろう。」
純粋な疑問だった。
体験版の時、すでにクラスメイト達の行動は無意識化で誘導されていた。
正式版となればその影響が大きくなるのは目に見えている。
そんなことを考えながら、しずめは眠りについた。
―――21時 アド戦Ⅱパッチ1.1配信
佐竹が同時接続と格闘していた時、ミヤビAIをフルに活用するパッチ1.1をインストールした。
そしてそのパッチが、今適応された。
多くのユーザーが再び接続をすると、明らかに選択肢が多く密になっていると感じた。
「これってここまで詳しかったっけ?」
あるユーザーは困惑した。
〈おばあちゃんのお見舞いに行く〉
そのユーザーの祖母は入院中だった。
「もう!彼氏彼氏って!うるさいなぁ」
あるユーザーは彼氏と別れたばかりだった。
〈元カレの連絡先を削除する〉
分かれたのはDV気質が怖かったからだ。
明らかにプレイヤーの情報を知っているうえでの選択肢に多くのユーザーは困惑した。
しかし、その困惑はすぐにゲームというまやかしにかき消されていく。
そして、祖母が入院中のユーザーはその足で実際にお見舞いに行ったし、彼氏と別れたユーザーは思い出したかのようにSNSの友達登録を解除した。
現実に明らかな影響を与えているアド戦Ⅱパッチ1.1は佐竹と大佐の思惑以上に先へと進む。
―――22時 大佐
夜風に当たる調律者の陰影は儚く、そしておぼろげだった。
「大佐。MoRS本部から観測データが届いています。」
隣で控える雪乃が報告する。
「ああ、見たよ。やはり影響は免れない。」
「では、やはり調律を?」
「いや。まだだ。私が個人の感情で動くわけにはいかない。」
「しかし、明らかに影響が」
「良くも悪くも、あのパッチ以降はより具体的に社会的理想を誘導している。悪い影響は出ていない。だからダメなんだ。」
調律者は考えた。
確かに、このまま放置すれば社会が大きな影響を受ける。
それが悪い方向に傾く可能性も大いにある。
だが、佐竹という一人の人物が信念をもって正しい方法で作り出したそれを否定することは人として、そして調律者としてできない。
現実の倫理観はアド戦で大きく変わる。
それだけだった。
「分かりました。では観測を強化します。」
「ああ、よろしく頼む」
偶発的にそして必然的に起こったアド戦騒動
それは、未だ敵のいない調律すべきでない異変だった。
次回は明日更新。つづきを追いやすくするため、**ブックマーク(しおり)**で目印していただけると助かります。
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