第92話 有能の証明
―――2026年 5月10日 界面機構 本社
この日、大佐と雪乃の2人はアド戦制作会社に足を運んでいた。
「ここがあの噂の...」
「一見質素ですが、地下に大規模なデータサーバーがあります。」
「これなら特に目立つことはないが、だからこそ怪しく見えてしまう。」
「その点は大佐の考えの通り、過去には公安調査庁が調査に入ったことが記録に残っていました。」
「だろうな。うちは発電設備を既存の技術に依存しない未出技術で行っている。だから電力消費量からマークされることはないが...」
「そうですね。ただし、公安の記録では何もなかったとされているので実際に状況を把握しないと真実は分かりません。」
「ああ、ひとまずは面接からだ。」
「はい。」
そして二人は社内へと歩を進める。
社内に入ってすぐに面接会場である会議室へと案内された。
「本日は中途採用面接にお越しいただきありがとうございます。私人事部の白山と申します。」
出迎えたのは白山という人物だった。
「山内信也です。本日はどうぞよろしくお願いします。」
大佐は偽名を名乗った。
名目上はエンジニアとして中途採用を掛けた面接。
その実は佐竹なる人物に近づくための工作だった。
「伊佐幸音です。この度は面接の機会を賜り、有難うございます。」
続けて雪乃も偽名を名乗った。
「お二人は以前、同じ会社で働かれていたと伺っています。」
「はい。」
「差し支えなければご退職された理由などお聞かせ願えますでしょうか?」
「はい。私と伊佐は大手IT産業で働いていましたが、実力に見合った仕事が割り振られず、悩んでおりました。その時に、私が理想とするAI拡張の分野にて大きな功績を上げられていた御社でぜひ働かせていただきたいと思い、退職に至りました。」
「先ほど、山内が申し上げた通りですが、私はネットワークエンジニアとして仕事をしておりました。ですが、本来は高度なインフラエンジニアリングが専門ですので、どうしても実力以下の仕事が多いと感じていた次第です。」
とってつけた理由ではなく、これは大佐と雪乃が事前に決めたことだった。
経歴も誰もが聞き覚えのある会社を退職したと偽造してある。
「弊社としてもとてもありがたい話であると感じております。ぜひ採用したいのですが、弊社のサーバーシステムは少し特殊な運営を行っておりまして」
「特殊というと、システム的にという事でしょうか」
「いえ、それももちろんなのですが、現状ある社員がワンマンで開発から運営までを行っています。その社員が極端に他人の介入を嫌うのですが、正直事業規模と運営形態の観点から人員追加は必至であると考えています。」
「なるほど。それでは採用は難しいですか」
「いえ、なのでお二人にインターンとして仮入社していただき、その社員のもとで研修を行っていただきます。その後、本採用になるか改めて検討させていただけたらと」
「なるほど。ぜひお願いします。」
無事、佐竹と接触できる機会を得た二人
「さっそくですが、その社員と顔合わせを行っていただいても?」
「もちろんです。」
2人は地下に案内される。
野生の生物が逃げ出すほどの寒さの地下では、鈴虫の音色ではなくHDDやファンの奏でる電子音が鳴り響く
サーバーというのはとても熱くなってしまうため、低温での運用が必須だ。
とはいえ、これほど大きなデータサーバーはそれよりも音の問題が目立ってしまう。
「とてもうるさいですが、彼女はここで作業をしています。」
「これは慣れても辛いでしょうね。」
「はい。一応外からアクセスできるので、保守だけであれば入る必要はないのですが」
「おそらくセキュリティ対策でもあるのでしょう。」
「伊佐さんの仰る通りです。」
サーバーラックの間を抜けて、突き当り
そこにコンソールのようなものがたたずむ。
その横ですやすやと寝息を立てていたのは
佐竹彩弓
件の人物だった。
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