第87話 解を求めて
しずめは、アド戦Ⅱの中で、答えないプレイを試していた。
リビングに行けという指示を無視し、部屋で立たずんでいると
ドンッ!
鈍い音と同時に部屋に女性が入ってくる。
「あなた!なにしてるの早くご飯をたべなさい!」
しずめは困惑した。
ただ、驚いたというのもある。
だが、アド戦ではプレイヤーに割り込むイベントというのは基本的になかった。
そのままプレイヤーのしずめはリビングに連れていかれた。
夕食を食べるシーンが流れ、一日が終わる。
翌朝、日付が変更されたテロップと共に、選択肢が新たに更新される。
〈母と話す〉
〈学校へ行く〉
〈散歩する〉
どの選択もありふれたもので、違和感などなかった。
何もしないという選択もあったが、強制イベントに巻き込まれて行動が制限されたこともあり、しずめはあえて母と話す選択を選んだ。
「お母さん。どうしたの?」
「あ、しずめ...昨日はどうしたの?ぼーっと部屋にいたけど」
また選択肢がでる。
〈なにもないよ〉
〈ちょっと悩み事〉
〈うっせぇなぁほっといてくれよ〉
しずめは少し悩む
何せ、しずめにとって母という存在は存在しない物であり、その接し方と言われれば何が適しているなんてことは知らない。
「(うーん...あえて普通にといってもなぁ...)」
あえて一番不適切であろう選択をする。
「うっせぇなぁほっとけ!!」
「なんてこというの!それより学校は?早く行きなさい!!」
どういう事が起こったのか理解できないままゲームは進む。
そこでしずめはゲームをやめ、寝床へ入った。
―――翌日 朝 しずめの学校
学校へ行くと、アド戦Ⅱの話題で持ち切りだった。
「なんかちゃんと思ったようにストーリーが進むんだよなぁ」
「なんか魔王が出てきたんだよ」
至る所で同じゲームの話題が飛び交う中、しずめは違和感を感じていた。
「あ、しずめさん」
配信を見ていた男子生徒が話しかけてきた。
「あ、昨日の...」
「アド戦やった?」
「うん。でもなんかちょっとね」
「やっぱりしずめさんもそう思う?」
「...やっぱり?」
男子生徒も根っからのファンだろう。だからこそ違和感に気づいていた。
「あまりにも選択の幅が広すぎるって感じてない??」
「確かに、そうかもしれない。」
しずめの期待している部分とは少し違ったが、よく考えればその通りだった。
指示に従わないプレイにも臨機応変に対応できる既存の作品は少ない。
それは、あくまでもそういうプレイができるし、するだろうからあらかじめその対応を準備するほどにユーモアのあるゲームが少ないからだ。
「それにしてもまさかジャンルすら超えてくるなんてね...」
「君はどういうプレイをしたの?」
しずめは問いかけた。
「初代の世界とつながりがあるのか気になって初代の情報を長文で打ち込んだんだ。そこから急に異世界転生することになったりしたかな」
「そういう事か...」
「どういうこと?」
「もしも、私が考えてる通りなら、アド戦Ⅱは白紙のキャンバスなんだとおもう」
「...?」
男子生徒は理解に苦しんだ。
これは、しずめが異変であったから気づいたこと。
それに、媒介として作られた存在であるからこそだった。
次回は明日更新。つづきを追いやすくするため、**ブックマーク(しおり)**で目印していただけると助かります。
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