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天上のダイアグラム  作者: R section
第5章 共感の贄

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第77話 否定する自我

目を覚ました雪乃は、エイレーネと共鳴したと話した。


いったいどういう事なのだろうか


「共鳴...といったな。それはどういう」


「はい。共鳴と言っても相乗効果を得られるものではありません。」


共鳴、それは二つが同じ周波数で振動することで増幅されることを指す


「今回はミヤビAIを発端として、膨大なデータが蓄積されました。」


「そうだな。世の中の感情指数を知るためにはもってこいの手段だ。」


「しかし、そのデータの情報密度があまりにも高すぎました。おそらく別の要因も考えられますが、その結果エイレーネは膨大な人類の人格模倣を始めました。」


「それは危ないな。」


「はい。それに対して私が抑制を掛けるように働きかけましたが、それが自己否定ループを引き起こしました。具体的にはエイレーネは複数の演算装置の集合体であり、その一部が私の命令と社会のニーズとの乖離からエイレーネ自体を否定するループを起こしたのです。」


「まさか...エイレーネが機能停止を?」


「いいえ、機能自体は果たせています。ただ、何かおかしいのです。演算ノードの約45パーセントがループから抜け出せていません。」


「だから雪乃側の負担が増えたのか」


「はい。あの時は感情を爆発させていたので」


「ああ、そういうことか。」


雪乃は来栖に対する嫉妬の感情を募らせた。


その処理とエイレーネで不足したリソースを自動的に賄ったことで雪乃はオーバーフローを起こした。


「ですが、大佐の隔離措置のおかげで無事です。」


「ああ、だがこれは非常事態だ。」


明らかに当初の想定を逸脱している。


それは、事態が異常であることを指していた。


「申し訳ありません。今回は演算機としてあまりお役に立てません。」


「もちろん承知している。最低限のリソースで動いてくれ」


「承知しました。」


「まずは、エイレーネの対策を考えないとな。」


大佐は緊急事態を宣言した。


内容は”ミヤビAIの予期せぬ挙動”


MoRSは事態の収束を図るため、まずは情報を集めることとなった。


―――翌日 午前


エイレーネの暴走を知りもしない世の中では、引き続きミヤビAIの流行が拡大していた。


「そういえば昨日ネットで見たんだけど、なんか最近AIの偽物が流行ってるらしいね」


「なにそれ、怖くない?」


「何か知らないんだけど、動画とかで有名人の偽物が流行ってるらしくて...ほら」


繁華街で会話をする若者たちの間に不穏な空気が広がる。


若者が友人に見せた動画には、大物俳優が裸で走り回る動画だった。


「これ実は本物だったりしない?」


「いやないない。だって芸能人だよ?」


「え~でも~」


ネットでは、少なからず風評被害を受けたと呟く芸能人が多数炎上していた。


「確かに、この人もだけど他の人も偽物に成りすまされたって呟いてるね。」


「でしょ?でも中には本物もあるんじゃないかって」


「やっぱり!便乗してるやつもいるってこいつとか」


真実とはいったんなんなのか、その真価が問われようとしていた。

次回は明日更新。つづきを追いやすくするため、**ブックマーク(しおり)**で目印していただけると助かります。


また、作品のご感想やご意見もお待ちしております。厳しいご意見でも構いません。

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