第69話 あやふやな仮想世界
「人類社会は、大いなる尊厳が支配している。それは、人類が人類たり得るための心であり、その他よりも人類が秀でている証明である。」
―2020年 十六夜輪廻 MoRS結成時 訓示より抜粋
ある時、ある人物がそういった。
これは、人類にはできることがたくさんあり、そのすべてが人類の誇りと優秀さを物語っているという事である。
MoRSはそのすべてを守り、歪まないように調律することを目的としている。
だが、その調べは何者かによって常に脅かされている。
―――3月6日 しずめのクラスメイト宅
しずめとその他一行は、アドバンスドウォーをプレイするべく、集まっていた。
「じゃあまず俺から!」
「えーずるいよ。」
「約束だろ?初めは俺だって」
いかにも学生らしい会話だった。
最終的にじゃんけんで順番を決め、しずめは3番目にプレイすることとなった。
「お~タイトルからすでに凝ってるな」
「そのストーリーってやつから初めてね」
「おっけー」
一番目の男の子が進めるなか、序盤の村から旅立つところまでプレイしたとき
「ここ俺がプレイしたときには勇者の剣?ってのを渡されたんだけど」
「え?じゃあもう違ってるの?」
既にストーリーに変化があった様子だった。
しずめは、それを聞いて驚いた。
明らかに、この手の作品が横行すると独自性や発想力に影響する。
そのことについて、うっすらと気づいていた。
暫く、プレイが続き、次の人物に交代する。
それまでに、異変はなかった。
しずめは、雪乃へと相談した後にメッセージで別の事を相談していた。
質問は二つあった。、まず一つはもしもAIを使用したゲームを雪乃が開発した場合、考えられる不具合はどういったものなのかということ。
雪乃の回答は
「ミヤビAI以前のAIでは、完全にゲームを改変できるほどの正確なコーディング能力がありません。なので独自でそれを補助する機構が必要であり、その部分でAIの回答がそのシステムから逸脱すればゲームは進行不可能になります。」
2人目の人物は学校でも突飛なことをするとしばしば問題になっている男の子だった。
「じゃあまず、お母さんとお父さんからお金を盗もうかな。」
彼はすぐに常識から逸脱したプレイングを行った。
「次に役場を燃やしてっと。幼馴染のせいにして...」
あまりにも突飛なプレイが続いたが、その一切をAIはさばききった。
しずめも同じプレイングでAIを困らせようとしていたが先にやられてしまった。
「ふぅ、じゃあ次わたしだね。」
コントローラーを手に取り、雪乃のもう一つの回答を思い出す。
「AIは感情理解が課題でした。ミヤビAIはそれを膨大な情報量をもって模倣しています。ですので、既存のどのAIとも違う方法をとることで意図的に回答不可を引き起こすことができます。なので、その行為をゲームシステムで縛る必要があります。」
その方法は
「じゃあまずは...」
しずめはひたすらにアイテムを集めた。
そして、そのアイテムを重要NPCの前に無造作に並べている。
「しずめさん、これどういう事?」
「ちょっとまって。もうすぐだから」
一体しずめは何をしているのか、クラスメイトには理解できていなかった。
次回は明日更新。つづきを追いやすくするため、**ブックマーク(しおり)**で目印していただけると助かります。
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