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天上のダイアグラム  作者: R section
第5章 共感の贄

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第67話 未来という現在

―――2026年3月1日

大佐が雪乃に説明をしているとき、世の中ではミヤビAIの活用についての話題が大半を占めていた。


ミヤビAIはオープンソース感情《覚醒》模倣型AIであり、感情模倣型AIの到達点とまで呼ばれている。


自然な受け答えと、画期的な提案を得意としているAIだが、その実は大佐の開発した劣化版雪乃AIである。


Yielding Unified Knowledge and Intuitive Neuronal Operator 《統合知識直感神経演算体》


略して”雪乃”は、機械的論理演算と感情模倣によって論理と感情の統合演算を行うことを目的として開発されている。


その能力は量子コンピュータと特異な半導体記憶装置があってこそであるため、一般の端末の処理レベルでは動かない。


そのため、データ収集を名目にエイレーネが一部負担をすることでオープンソースとして運用している。


但し、雪乃は自己進化を促すプログラムが多数備わっており、シンギュラリティを起こせるレベルであるため、そのままでは危険だった。


意図的に構造的欠陥を残した状態に再加工し出来上がったのがミヤビAIというわけだ。


それゆえに、ミヤビAIには無限の可能性が密かに備わっているものの、現在の技術力では解決できない構造的欠陥によって阻まれている。


しかし、その欠陥にすら気づけない今の人類にとっては画期的なAIであると認識されていた。


―――同日 しずめの学校


「昨日発売のゲームやった?」


「まだ買ってない。どうなのあれ」


教室の中では、ゲームが好きなグループが新作について話している。


しずめもゲームをしないわけではないが、持っている能力が故にあまり好まない。


しかし、その能力はゲームの話題について知るべきだと警鐘を鳴らしていた。


「あれって、なにかAIを使ってるってやつだよね。」


「そうそう!やる人によってストーリーが変わるんだ。」


そのゲームは”アドバンスドウォー”という新作ゲームで大手のパブリッシャーが開発しているゲームである。


ミヤビAIをゲーム自体に内包しており、シナリオや演出が自動で生成されるシステム


いわば未完のストーリーの先を演出するゲームであった。


「それってそのゲームがあったら他のゲームがいらなくならないの?」


しずめは疑問だった。


もしも、自動で結末が変わるゲームなら、無限に物語を創造する。


その結果、他のゲームは存在価値そのものを失ってしまうのではないかと


「そんなことはないかな。」


「だってRPGだし。」


彼らの回答は否だった。


「そっか。他にもいろいろあるもんね。」


「そうだよ。そういえばしずめさんゲームとかするんだ。」


「あんまり興味なかったんだけど。」


「けど、ということはアド戦に興味が?」


アド戦とはアドバンスドウォーの事である。


「というよりはAIについてかな」


「そういう事か~!」


しずめの中では、AIについて様々な疑問が生まれていた。


「AIが思いもよらない展開を用意してくれるってすごいと思う。」


もちろん。その評価は否定的なものだけではない。


「確かに、多分俺も含めて買った人はそういう考えだよね。」


「数年前までAIという言葉自体なかったのにほんとにすごいよ。」


「確かにね!せっかくだし今度みんなでアド戦やろうよ。」


「いいね~!」


生徒たちは盛り上がった。


「しずめさんもどうかな?」


「せっかくだしやりたいかな。」


「じゃあ決まりね。」


ゲーム好きな一同と共に、AI技術を活用したゲームを遊ぶこととなったしずめ。


「(興味はある。けど、多分これは何かあると思う)」


興味と共に、形のない不安がしずめの中にはあった。


自分では気づいていないものの、本能的にその異能に従うしずめにとって、それは調べずにはいられないものだった。


第5章は鋭意制作中ですが、過去一番の長さになる予定です。お楽しみに!


次回は明日更新。つづきを追いやすくするため、**ブックマーク(しおり)**で目印していただけると助かります。


また、作品のご感想やご意見もお待ちしております。厳しいご意見でも構いません。

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