第62話 避暑地の誘惑
―――2月3日 飛行機内
大佐が種子島にいるころ、雪乃と浅茅はモルディブへと向かっていた。
「雪乃さん。この作戦、普段であれば大佐が同行するはずですよね。」
「はい。ただ、大佐には別でやることがあると伺っています。」
「というと?」
「私にも分かりません。全くと言っていいほど内容については」
大佐は種子島での行動を一切他言していない。
知るのは突き止めた笠村と大佐と打ち上げにかかわる構成員だけだ。
「雪乃さんにも伝えないのは気がかりですわね。」
「いいえ、まったくもって普通のことですよ。私は大佐のすべてを知らないというだけです。」
「そうですか?そういう意味ではないような気がしますわ。」
「それより、早速ですが段取りの確認を行いましょう。」
「は、はい。」
ミヤビテクノロジーについては、殆ど調べがついていた。
ただ知らないのは役員たちの行方、一部は死体で発見されていた。
明らかに自殺であるが、気になる点はいくつもあった。
「例の会社役員、一人を早期に発見できたのは行幸でした。」
「はい。データを完全に削除される前に吸い出せたのは我々の技術あってのものでしょう。」
役員の一人は生きたまま確保できなかったが、敵の情報工作が入る前に発見できた。
その結果、他の役員の居場所などの情報が手に入ったのだ。
「それで、雪乃さん。なぜ我々なのですか?」
「見た目です。」
「はい?そ、それはどういうことかしら」
「そのまま、私は明らかに異国人です。それに旧名家のお嬢様である浅茅には品があります。接触するには適しています。」
「もう少し具体的にお願いできますか?」
「大佐の言葉を借りるならば、”どっからどうみても金持ちのバカンス”だということですね。」
「なるほど。理解しましたわ」
会話の中で、設定を詰めるなか、機内アナウンスが入る。
「当機は間もなく着陸....」
「そろそろですわね。」
「着いたらまず、ホテルに向かいます。そこで現地に合った衣装を用意していますので着替えましょう。」
雪乃と浅茅は無事に会社役員を確保できるのだろうか。
―――2月3日 15時00分 モルディブ
「雪乃さん。これはさすがに」
「雪乃と。あと私もラフにしゃべりますので」
「そういうことじゃなくて、あまりにも露出が過ぎますわ。」
「これくらいがちょうどいいのよ。だってバケーションだし。」
「ちょっ!雪乃?急に変わり過ぎよ。」
「普段から大和撫子であることを強要されるお嬢様が、もしもバカンスに着たら絶対に八茶けますよね。」
「まあ、そのためにみんな海外に行きますわね。」
「じゃあ、そのように。」
「し、仕方ない。」
「それにしても浅茅。あなたスタイルが....」
「あなたにだけは言われたくないですわ。」
「上から100 56 86ですか。」
「ちょっと!!それ本当に怖いからやめてくれますかしら」
「私は...」
「いらない!!いらないって!!」
「はぁ、では二時の男性集団を」
「あ、は、はい。」
浅茅が目を向けると、明らかに羽目を外し過ぎている日本人男性たちがいた。
「思った以上に若いですわね。」
「ええ、おそらくお金で買われた連中でしょう。」
「で、どうします?」
「ビール。」
「雪乃。さっきから名詞でしゃべるのやめていただけますか?」
「え」
「名詞じゃんなければいいってことでは」
「冗談ですよ。ビール買ってきてくれる?」
「はい。」
2人はついに、役員に近づいた。
確保し、敵の情報を引き出すことができるのだろうか。
次回は明日更新。つづきを追いやすくするため、**ブックマーク(しおり)**で目印していただけると助かります。
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