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天上のダイアグラム  作者: R section
第4章 停滞の意

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第59話 間に合った予測

―――2月2日 午前3時30分 指令セクター 中央指令室


1日で一番暗い時間が過ぎ去り、時が朝に向けて進みだしたころ


司令官席にいた浅茅は雪乃の入室を確認すると


「総員傾注!」


浅茅の透き通った声が指令室内に響く


「これより、観測と解析の結果から分かった事実と今後の対応について説明します。」


夜通し作業をしていた構成員たちは目をこすりながら姿勢を正す。


「雪乃さん。お願いします。」


雪乃が浅茅と目線を合わせる。


「大佐がAVERに行く前に、私に説明した”仮定未満”の予想について初めに説明します。」


構成員は”おいおい”といった様子だ。


「ASAの事については事前にAVER運営側から大佐にリークがありました。事実であれば大荒れになります。その中で価値を理解しているか怪しいミヤビテクノロジーはおそらく外患に害されてしまうだろうと。」


「要は、我々に秘密裏に護衛してほしいと依頼を受けていました。」


分かりやすく浅茅が補足する。


「ですが、その時点で事前にミヤビから提出された技術書を見て、検証が他の企業では事実上不可能であることから、虚偽の可能性も視野に入れていました。」


エンジニア陣はなるほどといった様子で頷いた。


「もちろん。それはあくまで想像なのでひとまずは大佐と私、技術の検証の観点からエンジニア二名の計4名で出席し、護衛についていました。」


「これは事実です。雪乃さんの戦闘技能は皆さんも知るところでしょう。」


「それから、ASAに対して各所は予想通りの反応を見せていましたが、それからの行動があまりにも急ぎ足だったことに違和感を感じた大佐は、以前より事実逆算によって観測されている”敵”の存在を交えて仮定をしました。」


「この部分については私には全く分かりません。詳しく聞いてもよろしいですか?」


浅茅もわかっていない。感覚上の違和感など抱いた本人にしかわからないものである。


「正直なところ、私にも分かりません。常人が感じることのできない領域です。ただし、大佐は敵の視点に立って考えました。」


「と言いますと?」


「ASA発表後何が起こったか。それは宇宙進出と遭難事故ですね。」


「...?」


全員が首をかしげる。


「遭難事故が起こってからすぐに我々は対策としてASAの裏をリークしました。その結果として停滞や衰退を意図的に望む声が上がりました。」


「これ以上不必要に人命や資源が損なわれないのであれば、それは正常ではありませんか?」


「はい。私もそう考えました。ただ大佐にはこの停滞が我々の対策までを見越した意図的なものではないかと考えたのです。」


「それはもはや狂気的な妄想の類ですわ。」


「ですね。ただ、そうでない場合人類は何者かに意図的に進歩の道を絶たれることになります。ASAが事実かどうかという問題は人類全体にとってさほど問題ではありません。」


「確かにそうですわね。ただ停滞もまた幸せだと私は思いますわ。」


「浅茅さん。他人に強制された場所で永遠に足踏みをするということが幸せに感じますか?」


失敗の結果、進歩を恐れて足踏みをするのであれば、それは正常な回避反応なのだろう。


只、大佐にとってそれが社会全体が意思決定したものではなく、敵の作り出した偽りなのであれば、MoRSが調律するべき案件だと考えた。


「そういわれると良くは感じません。ただ、これを調律するために事実や命が損なわれるのでは意味がないとも感じます。」


「その通りです。だからこそ、大佐は事実を確認するために情報を集めて精査しました。」


「なるほど。」


「その結果、NASAなどの各国の先端技術を扱う機関に、ミヤビが事前に宇宙にASAの源があることやその詳細なデータを偽造し、提供していたことが明らかになりました。」


「それだけではミヤビの悪意によるものとも取れますよね。」


「はい。ただ、ミヤビテクノロジーという会社は少し前から明らかに異常な経営方向の転換を行っています。それに、社長などの従業員の一切が行方をくらませています。」


「ここまでの事実がそろえば、動く理由としては十分ということですね。」


「その通りです。」


「では、調律の方法についてはどのように」


「はい。それについては...」


指令室の扉が開く。


真実にたどり着いたMoRSは空想だった予想が現実であることをしった。


本当に正しい社会とは何なのか。


その答えを出せるとするならば、それは神なのか、それとも...







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