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天上のダイアグラム  作者: R section
第4章 停滞の意

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第58話 事実という虚偽

MoRSはミヤビテクノロジーを調べているうちに、奇妙な事実に気づいた。


起業自体はことが起こった付近で行われているものではなく、以前からIT産業にかかわる開発を行っていたことが分かった。


しかし、業績不振でもないのにいきなり方向転換をしてすぐにASAを発見したと発表している。


欧州原子核研究機構との共同は事実であることも同時に分かった。


「何かがおかしいんだ。これは気のせいではない。」


大佐は焦っていた。停滞が定着してしまう前に、予測している最悪が事実なのか確かめなければならない。


「大佐、お茶をお持ちしました。」


雪乃がティーポットとカップを持ってきた。


「ありがとう。これぞメイドだな。」


「この程度でメイドと言っていただけるのであれば普段の私はメイドの上位互換に当たるかもしれませんね。」


「メイドの上位互換とはいったい何なのか。」


「冗談です。それより大佐、調査は観測部に任せて少し休むべきです。」


気が付けば作業を始めて12時間が経過していた。


「これだけは早々に結論を出さなければならない。」


「しかし、大佐...構成員にも不安が出ています。」


急ぎ足が続けば先の見えない現状に嫌気がさすのは言うまでもない。


こういった状況では上に立つものへの不信感が生まれる。


「理解はしているが...」


「少しでも焦ってないと思わせるだけでいいのです。指令セクターの中央で険しい顔をしている時間が減るだけでも意思表示になります。」


「分かった。じゃあ雪乃...仮眠室を開けてくれ。」


「承知致しました。」


―――2月2日 午前3時 指令セクター 仮眠室 通称サキュバスの呪い


機械音すらしない悪魔のような静けさの仮眠室


最高級のベッドにアロマディフューザーが空間そのものをリラックスできる環境を演出するその場所は


入ったら寝てしまう。との逸話からサキュバスの呪いと呼ばれている。


1時間ほど前からそこで仮眠を取っている大佐の隣で抱きしめるように添い寝をする雪乃がいる。


すると雪乃のもとへ通信が入る。


「雪乃様。報告です。」


大佐に代わって指令室を監督していた浅茅からの連絡だった。


「正直未だに信じがたいのですが、大佐のお考えの通りですわ。」


「そうですか。私も予測できませんでした。データの上では限りなく可能性は皆無でしたので。」


「ですわね。早速データをお送りします。それと大佐へ連絡したのですが応答がありません。」


「データ受信しました。大佐は今仮眠中です。」


「やっと寝て頂けたんですわね。では、中央指令室でお待ちしております。」


通信を終えた雪乃は大佐の寝顔を見て頬を緩めた。


「どうしてあなたはそこまで人心に敏感になって生まれてしまったのか。技術の終着点ですら理解できないものを持つあなたはさぞ生きにくかったことでしょう。」


「しかし、今は何も感じず休んでください。」


と小声でささやき、雪乃は仮眠室を後にした。



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