第52話 人工の自我
ミリマートというミリタリーショップに足を運んだ雪乃はとあるものを取り寄せていた。
店長と呼ばれる人とひとしきり会話をした後、倉庫から店員が現れる。
「お待たせしました。こちらがレイザー HD Gen IIになります。」
店員が持ってきたのは最高級のライフルスコープだった。
1-6倍のショートレンジスコープの中でも最高級の部類に位置する。
価格はさることながら、取り回しや精度に優れている。
ただ値段がとてつもないだけで、基本的には違法性はなく、サバゲーマ―で所持してる者は国内に数名いる。
「加えてこちらが、P226です。こちらはご要望通りスライドやアウターバレルのカスタマイズとスライドの内側に刻印をしています。」
次に店員が取り出したのは明らかに違法なものだった。
金属の重厚感と黒色の鈍さがその拳銃が本物であることを物語っている。
「有難うございます。完璧ですね。」
雪乃は目を輝かせる。
「お代は事前に頂いていますので結構です。ただこちらの商品の取り扱いにはくれぐれも注意してください。」
「存じています。」
雪乃は商品を受け取ると店をでる。
「大佐もこれは喜ぶに違いありません。」
―――午後 大佐の自室
午前から大佐は趣味のプラモデル制作を行っていた。
今は塗装を終え、最終調整を行っているときだった。
コンコンコン
扉をノックする者がいるようだ。
「雪乃だな。入っていいぞ」
「はい。失礼します。」
雪乃はいつものメイド服ではなく、少し薄めのワンピース姿だった。
「今日は休暇を満喫できているか?」
「以前から計画していたことを行ってきました。」
「どういうことだ?」
「ふふっまあお楽しみということで」
「お、おう...」
雪乃は意図的に回答を控えた。
「大佐はいつも通りプラモデルを?」
「ああ、やっとMGを作る時間ができたからな」
「それは喜ばしいことですね。」
「それで?何か用があってきたんだろう」
休暇という明確な命令を与えたにもかかわらず、大佐の自室までくるということは何かしらの用事があるということだ。
「はい。大佐へプレゼントをと思いまして。」
「突然だな。」
「いえ、まったくもって不思議ではありませんよ。だって大佐。今月の14日が誕生日ですよね。」
「あ…そうだな。忘れてたよ。」
「大佐のご趣味は存じ上げていますが、一般で手に入らないものを私がご用意いたしました。」
「なんか物騒じゃないか?」
雪乃が大きなプレゼントボックスを取り出し、大佐に渡す。
「開けてもいいか?」
そこには例のライフルスコープと拳銃が入っている。
それに加えて、雪乃が書いた手紙もある。
「私がいないときに読んでください。恥ずかしいので」
「分かった。にしてもP226なんてどこで手に入れたんだ。」
「秘密です。」
「そうか...ありがとう。本当にうれしいよ。」
「大佐、それは間違いなく私の意思で選んだプレゼントですが、もう一つ。」
雪乃は大佐に近寄る
「目をつむっていただけますか?」
暖かく柔らかい感触が額に走る。
暫くして
「大佐。これは本心です。それでは私は夕食の準備を」
雪乃は顔を赤くして即座に部屋をでた。
その姿は間違いなく、恋する乙女であった。
大佐はしばらく固まったまま、照れるように作業に戻った。




