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天上のダイアグラム  作者: R section
第3章 価値の器

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第50話 歪む組織

12月25日 東京 表参道 カフェ


日本が未曾有の経済不安に見舞われた年のクリスマス


人々はV字回復を遂げた経済で潤っている。


カップルが抱き合うこの季節、MoRS全体では休暇に入っている。


MoRSの特別構成員も一部を除き、一時的に任を解かれ、各々の私的な時間を満喫している。


笠村と在原は日本経済の一件を終えてから一つの疑問を抱えていた。


「笠村さん、今回の一件...」


「俺だって思うところはある。」


「ですよね。私たちは何のために...」


「ここだけの話、正直に言うと今回の特殊部隊をやったことは後悔している」


「だったら!!」


「やめておこう。ただあんなことを聞かされるとな...」


日本経済の一件を終えて、MoRS全体に対して、今回の真相が説明された。


一部には作戦を1つないしは2つと伝えていたが、事実は3つの作戦の同時並行であり、直接的な作戦は大佐の行ったものである。


もちろんMoRSPMの存在は明かされていないが、CIAを装った事実は説明されている。


加えて、笠村と在原の作戦は保険であり、今回に限ってはその必要はなかったとも取れる。


いくら取り繕ってもテロリスト紛いの脅しを行ったことは明白であり、当事者である笠村と在原にはいささか疑問が残っていた。


「しかしな、しずめのような少女そのものが脅威であることもあった。だからあの時、大佐の指示に疑いはなかった。」


「私も、その可能性はあると思ったから連れていった。」


「単に総理を脅すだけで、実際に総理を捕まえるだけで問題なかったのではと今では思う」


笠村の言う通り、事実総理を確保した時点で、総理は情報的に孤立する。


であればディープフェイクなどで情報を捏造すれば、誘拐の事実は必要なかった。


「確かに、そうですね。」


「だが、万全を期すならばという考えもわかる。」


「でも...」


「そうだな。でも心が許せない。」


経済は安定した。ただし、無駄な犠牲がなかったとは言い難い。


「笠村さんの場合、実際に命のやり取りをしてますよね。」


「ああ、あれは無駄な犠牲だった。それに向こうには避けようがなかった。」


「笠村さんだって避けようがないじゃないですか」


「しかし、MoRSは義務じゃない善意だ。」


相手の警察特殊部隊は人質救出という明確な理由で突撃をした。


しかし、笠村は身分を偽り、更には完ぺきな装備での応戦となった。


いくらMoRSの任務とはいえ、同郷の者を蹂躙するというのは辛い。


「もしも今後もやりたくない任務が来たら、私は耐えられません。」


「その前に俺は抜けているだろうな。まあ抜けるだけでいいなら簡単だ。」


「どういうことですか?」


「俺が大佐に銃を突きつけることにならなければって話だ。」


「それはだめですよ。大佐が身内の離反を予測していないわけがない」


「だとしても、信念に反するならいずれは...」


不穏な空気が立ち込める。


構成員が正義のために闇に潜っている中に、暗黒が差し迫る。


MoRSの完ぺきな結束が揺るぎ始めていた。

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