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天上のダイアグラム  作者: R section
第3章 価値の器

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第47話 心のありか

大佐が霞が関の建物で総理大臣と見えたころ。


笠村は少女と共にテーマパークの地下にいた。


少女はおびえているが取り乱すことはなく、無言のまま時だけが過ぎ去っていく


そんな中、静かな足音が聞こえてくる。


コツコツという足音であるが、意図的に音を消そうとするような足音


「Shit...」


笠村はとても緊張していた。


笠村は元陸上自衛隊 SBUの隊員であり、日本が秘匿しているという組織にいたが、国家の番犬として忠実になることに疑問を感じているところを大佐にスカウトされた。


そのような人物でもありながら緊張を表にだすというのはそれほどのことが起こっているということだ。


足音が徐々に近づいてくる。


合わせて笠村は用意されていたAR-15を構える。


部屋の前で足音が止まり、扉が少し開くと閃光手りゅう弾が投げ込まれた。


「...Earlier than expected.」|《想定より早い》  


笠村は閃光を浴びても微動だにしない。


閃光が終わると同時に、武装した何者かが突入した。


明らかに訓練された動きで、数名が互いをカバーしながら部屋に入る。


笠村は自分のいる方向に向いてきた二番目の人物に対して、正確に射撃する。


銃声はしない。


サプレッサーの音が二発響く


銃撃を受けた人物はその場で崩れ、後に続く人物がすぐに笠村を狙う。


しかし、笠村の追撃が先行する。


実にその間0.5秒


40発ほどの弾丸が、突入した武装兵をすべて沈黙させた。


笠村は扉の外を確認し、ライトで横たわる敵を確認する。


「SAT...」


警察の特殊部隊だと判明した。


「You just did your job.」

|《君たちは仕事をした。》


倫理に基づいて正しい行いをしていたとしても、時に衝突は免れない。


お互いの信念がぶつかればどちらかが負けてしまう。


ただ、笠村もSATも自分の仕事をしたに過ぎない。


そう笠村は言い聞かせる。


SATの装備を回収し、自らの装備を確認する。


弾薬はおそらく半分と少し。


MoRSが使用するAR-15は任務によってカスタマイズが異なる。


今回は防衛が目的なので、C-MAGという100発装填できる弾倉に10.4インチのバレルなどMoRS Custom Plan Bという多くの弾を撃つことができて取り回しの良いカスタマイズがなされている。


「(にしてもこのカスタマイズはやばすぎる。一軍隊では出来ない特化型というべきか)」


笠村は心の中でつぶやいた。


そのころ、在原は遊園地を出て、指示されたカフェで情報収集を行っていた。


「あの子大丈夫かな?」


何故かはわからないが、重要な存在ではある。


しかし、それ以前に幼い少女である。


少女を利用するというのは非常に心苦しい。


在原もそう感じているからこそ、情報収集は躍起になっている。


「あのテーマパークで事件らしいぞ」

「え?ほんとに?」


カフェの中でとあるカップルが呟いていた。


ネットニュースは有名なテーマパークで事件があったと大きく取り上げており、警察の特殊部隊が出動したという噂まで出ている。


「ますます心配になってきた。」


「お待たせしました。エスプレッソです。」


店員が商品を届けにきた。


「あ、有難うございます。」


在原はコーヒーを飲みながら端末を操作する。


すると端末に一件通知が届く


通知には端的に”紙ナプキンの裏”と書かれている。


「なんて古風な...」


スパイ映画のような指示にあきれる在原だったが


すぐに裏を確認した。


「少女は無事 防衛成功」


書かれていた、メッセージをみて安堵する。


それと同時に、疑念も浮かび上がる。


警察の特殊部隊が出張っているのに、我々が防衛に成功したということの意味


日本を、世界を調律するためのMoRSが日本人を攻撃するのは正しいことなのか


どうしてもその疑念に囚われてしまう。


それは笠村も同じだった。

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