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天上のダイアグラム  作者: R section
第3章 価値の器

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第41話 想定する解

しずめが指令セクターに訪れ、疑問を大佐に投げた。


その会話の終わり、雪乃と大佐の意味深な発言の中に登場した敵について大佐は語る。


「しずめと白票の件、その裏にはおそらく何者かの意思が介在している。」


しずめにとっては大きな事実だった。


「先生、それは本当?」


「ああ、未だ仮定ではあるものの、何者かの悪意が本来起きなかった事態を引き起こしている。」


未だ大佐の中にしか見えていない敵であるが、確実にその兆候はある。


「しずめ様、仮定とは言えその可能性は非常に高いと私も考えています。」


雪乃も少しずつ理解できるようになっている。


「じゃあ、今回の価値感?は敵が作ったってこと?」


「雪乃の言う通り、可能性は高い。」


「そ...そうなんだ」


あまりの事に完全に思考がショートした。


「しかし、あまり多くの事は分かっていません。」


「そうだな。未だ確固たる証拠もない。」


「ですがしずめ様、いるかもしれないとだけ覚えていてください。」


あまり多くは語られなかったが、しずめが驚くのには十分だった。


しずめは新たな疑問を抱き、司令セクターを出た。



――11月30日 早朝


昨日、とんでもない話を聞いてしまったしずめは、あまり寝付けなかった。


ぼんやりと目をこすり、スマートフォンを確認する。


大手SNSでは、未だに偽物を嫌う意見が増えている。


「やっぱり、そうなんだね」


答えを聞いたしずめにとってはなんて事のないことでも、世間の人々にとって別だった。


暫く、タイムラインを見ていたしずめは身支度をして、学校へと向かった。


学校へ着くと、だれもが同じ制服を着ている。


みんな同じだった。


なのにたくさんのグループがある。


「そっか、これが価値観か」


なんとなく、なんとなくだったが、理解できた。


――放課後 教室


授業が終わり、放課後の余暇に皆が浮かれ、どうするかと皆が騒いでいる中で


一つのグループが喧嘩をしていた。


「だっせぇ、それパチモンじゃん」


「うっせぇなぁ!わかんないんだからいいだろ」


男子のグループがもめている。


「ダメだろ。普通に犯罪じゃん」


「さすがになぁ...」


「いやでも、別に誰も困らないし」


どうやらカセットの違法コピーをしていたらしい。


いわゆる割れというやつだ。


しずめはあまりゲームには詳しくなかったが、それが違法なことということは知っていた。


結局、その男子たちは言い合いを続けながら学校を出て行った。


「(どうして誰も得しないのに)」


但し、今回は明らかな違法行為だった。


場合によっては刑罰をうけることになる。


偽物によって物騒な出来事が増えているとSNSを見て感じていたが


実際に自分の周りでも起こっているのだとしずめは実感した。



――同時刻 MoRS本部 観測セクター


大佐は雪乃とともに、観測情報の整理を行っていた。


「大佐、やはり徐々に大事になりつつあります。」


「生活必需品に対する疑念、犯罪の助長、その他最悪のシナリオはたくさんあるか」


「若年層が経済的損失を受ける例も増えています。」


偽スマートフォンの騒動から明らかに違法偽造の件数が増えていた。


敵が何を考えているのか、未だに絞り切れていないが、リミットは確実に迫っている。


「雪乃、今回の価値のゆらぎもおそらく、破滅へ収束するだろう」


「はい。敵が介在しているのであればおそらくは」


「もしも、雪乃が論理的に、価値を揺らし、破壊をするならどうする。」


雪乃はしばらく考えた。


「価値という概念そのものを利用不可能にします。」


「というと?」


「すべての人間が共有する価値...それを壊して価値を持つこと自体を破壊します。」


「ああ、やはりそうなるか」


大佐は考える中で、もっとも最悪な可能性を一つ予測していた。


それは、通貨の価値を破壊することだった。


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