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天上のダイアグラム  作者: R section
第3章 価値の器

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第36話 波及する脅威

11月25日 東京都 秋葉原 某中古スマホ販売店


昨今、スマートフォンは人類にとって欠かせないものとして認識されているが

技術の進歩によって本体価格が上がり、必要なスペックを備えた中古品が人気となっている。


大佐が甲斐の店に立ち寄った日も道中の中古販売店はたくさんの利用客が訪れていた。


しかし、今日は様子が一変していた。


「この店で買ったスマホ、急にロックされたんだけど、どういうこと?」

「あのさぁ、偽物を正規品中古で売っちゃだめでしょ。どうすんの」


店内がにぎわっていることは違いないが、その大半が商品に対してクレームを入れている。


「おひとりずつ確認しますので並んでお待ちください!」

店員も対応に追われている。


他の販売店も似たような状態であり、ネットでは大きな騒ぎになりつつあった。



同日 午後 大佐の家


「そういえばニュースでやってたけど、スマホが急に使えなくなる現象が流行ってるらしいよ」

「お母さんの職場でも話題になってたわね。」


「うちのスマホって全部兄さんが管理してるけど大丈夫なのかな?」

「今度聞いてみたらどうかしら?」


スマートフォンという、日常不可欠な物品についてだからか母と娘の他愛のない

会話にすら出るほど大きな話題となっている。


「あ、雪乃さん」

「雪奈様。どうされましたか」


「兄さんはいる?」

「ご主人様は外出中です。重大な要件であればお伝えしますがどうされますか?」


「大丈夫!大したことじゃないから」



大佐はというと、MoRS本部内でとある会議に出席していた。



―――MoRS本部 解析セクター 大会議室


MoRSの人員は割と多い、しかしすべての人材が一同に会することはないと言っても過言ではない。


ある意味ボランティア活動的な部分が多く、優秀な人材で何かの事情が

あって、日常の合間を使用している人員が大半である。


そのような事情があり、基本的に活動参加は強制しない。

よって人材の多くがいわゆる非常勤のようなものである。


しかし、かつてない規模の人員が解析セクターに集まっていた。


「すべて完全な状態の模倣品である可能性があります。」

「そんなことはありえない。そもそも電子機器の大量偽造なんて」

「いいやこれは異常事態だ。現に我々が集まっている。」


大佐は様々な意見が飛び交う中、ただ黙っていた。


「完全な模倣ということは、もはや本物と変わらない。」

「とはいえ実際に被害として社会に波を立てている。」

「その通り、模倣品がセキュリティまで模倣していなかったからだ。」


論点が変わり、一同が同じ方向を向いた。


「待ってくれ、これほどの模倣ができるのになぜ自社製として販売しないのか」

「これは偽造品であることが必要だったのでは?」

「その予測を仮定とするのはいささか早計では」


議論が収束を見せる中、大佐がその口を開く。


「となると、認知的不協和だな。」

「大佐、それはどういう?」

「谷部セクター長が言う通り、偽造品を作ることが目的ということだ。」


谷部は構成員の中でも優秀な人物で、解析セクターの長を任されている。


「多くの人が理解していないようすですが、これは過程にすぎません。」


「その通りだ。真の目的は不明であるものの、過程として偽造品が偽造品であること

それが浸透し、発覚する。それによって起こるのは認知的不協和だということだ」


大佐はすでに見ていた。うっすらとした真実を

だから今回は続きなのだと確信していた。


「谷部さん、大佐、お二人の言うことはごもっともですが、それは同時に

さらに多くの事態を招く仮定です。」


「そうだ。ただの技術的不信であれば自然収束力で何とかなるが、人為的な意図が含まれる可能性がある。」


一同が静まり返った。


「大佐、では?」


一同が大佐の決を待つ。

我々がやらねばならない事態なのか

それともそうでないのか


「まだだ。もう少し観測と解析を行い、事態に対して干渉の必要があるか見極める。」


「了解です」


会議は結論を保留する形となった。

大佐のそれは予測、仮定に過ぎない。

事実に基づく根拠がないからだ。


そういった状況では、MoRSは動けない。

だからこそ、結論を出すにはまだ早かった。

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