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天上のダイアグラム  作者: R section
第2章 世論の枷

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第30話 響く後悔

二週間後 10月4日 しずめの学校


授業終了のチャイムが鳴り、生徒が帰路に就く中、しずめは一人屋上で街を眺めていた。


「しずめ様。」

「うわあ!雪乃さん?!」


「驚かせたようで申し訳ありません。」

どこからともなく雪乃が現れた。


「あなたの疑問に答えるため参りました。こちらを。」

しずめのスマートフォンに通知が来る。


大手動画配信サイトの日本有数のメディアチャンネルが生放送をしていた。


「速報です。過去最高数の得票で当選した議員が自宅で死亡しました。」


「これって」

「はい。少ししたらいつものSNSをご覧ください。」


そう告げると雪乃は去った。


しずめは理解が追い付かないまま、ニュースを見続ける。


「議員は当選後一度も議会に出席をしておらず不振に思った秘書が自宅を確認したところ、投票日に首を吊って死亡したことが明らかになりました。」


「こうなるんだ。」

しずめは少し恐怖を感じていた。


「なお、遺体のそばから発見されたビデオカメラには、議員が白票について軽率な行動をしたと説明する姿が映っており、警察は自責の念に駆られた自殺だとみて捜査しています。」


「どういうこと」


そして雪乃に言われた通り、SNSを開く


トレンドには“議員自殺”や“白票殺人”の文字があった。

関連する呟きをみると


「議員を殺したのは都民」

「議員も悪いが何より、不遜な考えで投票した東京人が良くない」


あたかも都民が悪者のように述べるつぶやきが大半を占めている。

大量のつぶやきがリアルタイムで更新される中、議員の公式アカウントが動画付きでつぶやきを行っていた。


動画は議員が自殺する直前に撮ったものだと書かれている。

「あなたたち都民は選択しないことを選び、私はその選択しない意見を利用した。

これはとても卑怯な手だ。

しかし、あなた方は立候補しないが投票もしない。

日本人として日本を良くしたい。

都民として東京都を良くしたい。

そういった誇りはどこに捨ててきてしまったのか。

選択できないのは一人ひとりの弱さではないのか。

あとから言い訳するのは簡単だ。

だが投票をしない者、意思のない投票をするもの

そのすべては自身の弱さだと私は思う。

そのような国の、そのような東京都の議員を

卑怯な手を使って選ばれた私のような弱い人間には到底務まらない。

そして守るべき都民をもてあそんだケジメとして私は自ら命を絶つ。

それに偽りはない。

只、今一度日本人であるなら、東京都民であるなら

自分たちの住む地域の行く末を深く真剣に考えてほしい。」


その後、議員がロープのもとへ向かう様子が映り、動画は終わる。


それを受け、調査の名目で今回の東京都議選は例外的に無効となった。

都民の多くが再投票を望んだからである。


SNSを含め、多くの媒体で今回の事をこのように呟いていた。


「己の行動に責任を持て」


都民の大半がこの言葉を胸にそっとしまった。


その動向をみた、しずめは考えた。

選択によって失うものがあるのであれば、それは選択しないことで失う命もある。

であればより失うものが少ないことを選べばいいと。


翌日の朝、しずめはMoRS本部にいた。

指令セクターのあの部屋。


その扉の前で深呼吸をする。

自分の考えを伝えよう、たとえそれが望まれないことでも

覚悟を決めたしずめは扉を開けた。


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