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天上のダイアグラム  作者: R section
第2章 世論の枷

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第29話 霧散する意思

MoRSの作戦が最終局面を迎える中、雪乃はしずめへ全貌の説明を進めていた。


「まず、しずめ様がいらっしゃる前、私の全演算を用いて世論誘導を行いました。」


「世論誘導?」


「世論の白票に対する関心を利用して、白票を実際に投じるのではなく別の形で発散するようにしました。」


「そんなことができるの?」


「ここまで関心が強くなれば、外部からの誘導はむしろ容易です。」


雪乃は前日にSNSやオープンエージェントを用いて、特に白票に関心のある若者を中心として“白シャツデモ”を作り出した。


「白票ともとれる無地の白シャツを着て投票所に並び、列に並んだまま動かない。という運動を起こさせたのです。」


「それって何か意味があるの?」


「これ自体は何の意味を持ち合わせません。」


「ということはどういうこと?」


「白シャツに意味を付加しないまま民意を代弁する。それを行うのが最終段階です。」


雪乃が話し終わると同時に中央の画面に映し出されている投票待機列が動き出す。

同時に、部屋のスピーカーが映像地点の音声を出力した。


「投票開始です。順番に職員の指示に従ってください。」

誘導員が開始を告げたその時だった。


「SNSの指示通りやるぞ」

「あの人だな。」

「ひらがなでも有効票になるっけ?」


列に並ぶ白シャツの人々が密かに会話をしていた。


しばらくして一番先頭の人物が投票所を出てくると

「あ!どういうことなのこれ!」

しずめが大きく驚いた。


先頭の人物は黒いシャツを着ていたからだ。

「そう。これが最終段階です。仮に投票ミームとも呼びましょうか。」


MoRSが考え出した代理案 ”投票ミーム”

投票したいひとがいないのであれば、白票を支持した人物に入れる。


但し、それはその人物に対する期待ではなく、それしかないという絶望の表現。

行政に対して。今一度考えなおすように促す暗喩。


それが霧影作戦だ。


白票を投じては政治不信が加速するのであれば、代わりに白いシャツに白票の意味を付与する。

投票しないことで民意が衰退するのであれば、とりあえず誰かに入れる。

誰も期待していないという絶望を投票所を出た時に表現する。


白が黒になる。


それは投票に対して意味がないと感じている、民意の表現


「そっか。これでみんな伝えた気になる。」

「その通りです。投票所に行き、投票するがそれに意味がないと表現する。」


「これで、あの人たちはNOの看板を持っている状態になるってことなんだね」

「はい。しかし実際には政府に伝わるかわからない。でも人々の不満は表現したことで霧散する。」


「さすがだな。これで人々の不安は発散された。」


大佐が褒めるのも当然だった。

今回、大佐はほとんど立案してない。エイレーネが昇華し、感情を持ったことで

集団の感情制御と国家の枠組みの維持を同時に成し遂げる。


その行為自体がどれだけの価値を持っているのか


「ありがとうございます。これで完了です。」

「ああ、こちらもだ。」


「え、先生。これだともしかして。」

しずめは気づいていた。


これだけでは再び不満は再燃すると。


「おそらくしずめが考えていることは間違っていない。」


だが雪乃は安堵していた。それは大佐も同じだった。


「雪乃さん、先生。このあとは何もしないの?」


「しずめの思っている通り、その可能性もある。だがそれをMoRSは許さない。

残酷だが意味のあることだ。」

「しずめ様、真実は重要ではありません。人は見えているものだけ信じることができるのです。」


「そっか…でもこれでバランスは保たれるってことだよね。」

少しばかりしずめは、納得がいっていない様子だった。


しずめの目線では、誰かの犠牲の上に成り立つ社会を守る者がMoRSだとそう映っていた。

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