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天上のダイアグラム  作者: R section
第8章 境界の位

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第178話 侵入と誘因

遅くなり申し訳ございません。

引き続き仕事が多忙のため、一週間以内の更新が続きます。

触媒は末端に過ぎない。

どれだけ探ろうとも、末端はいずれ切り捨てられる。

だが、末端から大本へと回帰するものがある。


”情報”だ。


情報はどうあがいても隠せない。

ならばその情報を辿ればよい。


―――MoRS本部 支援セクター 医療センター 受付


小野寺は受付の隅で時を待っていた。

ただ待つだけではない。


「...そろそろですね。」

そうつぶやきながら目線を落とす。


受付の職員用端末に映し出されているのは、患者の名簿ではない。


”更新:触媒-S-12通路を通過”


作戦用OP画面には、触媒の位置がリアルタイムで更新されている。


刻一刻と迫る接触が小野寺の背筋を冷やす。


ガラガラと何かが近づく音がして、ついにその姿が見える。


「清掃です。」


焦らない。

まだ手順通りに。


「署名を」

端的に、そして事務的に手順を求める。


「競合しています。作業に遅れ。早急に」

ついに敵はアドリブを出した。


「未署名の入室は不可能です。」


「分かりました。では」


触媒は文字と呼べない何かを署名した。


これでは署名ではなく落書きだ。

そう拒否しようとしたとき


『いい。進ませろ。』


大佐はまだ引き込みたい様だった。


「有難うございます。ではお通りください。」


出来る限り丁寧に、手順をこなしたかのように進ませる。


その瞬間、触媒が端末を操作して何を送信した。


―――医療センター 第一処置室 (触媒視点)


受付を突破した触媒は状況を報告する。

宛先登録の無いメールを送る。


〈ACT〉

〈ENTRY〉


すぐに返事が来た。


〈ENTRY?〉

〈HOLD〉

〈HVT〉


初めて疑問符がついていた。

おそらくクライアントはそれを望んでいないのだろう。


だが、プロとして最後までやり遂げなけらばないなかった。

大学の駐車場で受けた屈辱を晴らすために。


清掃カートを押して、重苦しい滅菌扉を開ける。


(なんだ?)


これほどまでに抵抗している敵が、目の前で死に掛けていた。

接触を繰り返した女性は意識を外し、おそらく亡霊だろうそれは血まみれで横たわっている。


どう考えても好機だったが、触媒はプロだ。

プロは焦らない。

焦りは命を捨てる。


そっと清掃用具に手をかける。

何もない処置室では、それすら盛大に響いた。


だが、動かない。


疑念がなくなった。


あとは素早く仕留めるだけ。


清掃カートの手前側、ゴミ捨てようの袋の中にあるサイレンサー付きの自動拳銃を素早く取り出そう。


(いやちがう。)


腰に据えたナイフを取り出し、そっと亡霊へ近づく。


(息はあるのか。)


ナイフを振り上げて、心臓へ振り下ろす。


ブスっ


確かに感触はあった。

肉を貫く感触が。


なのに、なぜか天井が見える。


「何が...」

おもむろに呟きつつ、体を起こそうと力を...

だが、腕の感覚がない。


同時に意識が遠のく。


―――同所 雪乃視点


「大丈夫か?」

大佐が心配している。


だが、問題はない。

刃はしっかりと握っていた。


「はい。問題ありません。」


「後で修復しよう。それより。」


「はい。触媒を確保しました。」


「そうじゃない。私の考えた作戦だ。雪乃が体を張る必要はなかった。」

そういいながら、大佐は拳銃を取り出す。


「ですが、ご主人様に刃を向けること自体が万死に値します。」


「それは...」


「何より、彼らはすでに何度もあなたを傷つけています。」

「私としては、今すぐにでもその倍の銃弾を」


「ああ、有難う。だが、今は。」


「失礼しました。」


雪乃は内心、怒っていた。

いや、怒りすら生ぬるい。


愛すべき存在を害した触媒を許すことなど

出来なかった。


物音を聞きつけて、小野寺を含めた数名が処置室へと入る。


「大丈夫ですか?大佐」


「ああ。」


「ひとまずは、治療を続けましょう。おそらくあなたなら一日もあれば。」


「そうしてくれ。しばらくは安静にするよ。」


「では、さっそく。」


「そうだ。雪乃」


突如と大佐が目線を合わせる。


「どうされましたか?」


「触媒をO-セクターへ頼む。」


「...!承知しました。」


―――三日後 ??? (触媒視点)


気づけば何もない真っ暗な空間に固定されていた。


声は出せるが、どうしても体が動かない。


しかし、何が起こったのか、考えてもわからない。


コツ

コツ

コツ


軍靴の音だろうか?


足音のようなそれが近づいてくる。


「調子は?」


声の主は、懐かしい軍服に、白衣を羽織っている。


「ぼう...れい?」


「そう呼ばれた時もあったな。」


「そうか。そうだよな。あれから二十年か。」


かつて、あの帝国との戦争。

歴史にすら残らない忌々しい戦場があった。


「ああ、もうわかっているだろうが、オクストンの一件はどこであれ、口にすることすら許されない。」


「お前たちにとってはそうだろう。だが、我々米国の人間にとっては少し違う。」


”オクストン帝国”


米国と日本が共同で行った掃討作戦によって消滅した虚ろの国。

おそらく第三帝国と呼ばれるべきだったその帝国は1900年代に一方的にある島で

独立を宣言した。


「あなたたちにとっては私は敵だろう。だが、私にとってはそうではない。」


「それは言い訳にはならないだろう。オットーの計略だとはいえ、何人が犠牲になったと思う?」


「82396人」


「なんだ?」


「82396人だ。帝国を含めた、あの戦闘での死者は。」


「どこで調べた。」


「数えたからな。」


「あの山を築いたのはお前なのか?」


「戦士にとって、墓標は何よりも名誉あるものだ。それすら作られないのはあまりにも残酷だろう。」


「お前が言うな。亡霊が」


「だからだよ。それに我々が直接殺したのはその半分だ。」


他でもない。目の前にいる不気味な男を含めた5人の亡霊が40000人の米兵を沈めた。


「この化け物が。」


「はは...そうだな。そう呼ばれても仕方がない。」


「ならば死んで詫びろ。お前のようなものはこの世にいてはいけない。」


「ああ、だから他はすでに死んだよ。」


「お前は?」


「まだ駄目だ。やるべきことが残っているからな。それに」


「それに?」


「もうおしゃべりはここまでだ。」


突如として、照明が光る。


「う、う...うわああああああああ」


目線の先には鏡があった。


そこに映るのは自分だ。


だが、到底自分とは思えないほどに小さく、丸かった。


「最後に話す機会をやる。CIAは関与しているんだな?」


既に心が息をしていない。

物理的にも、精神的にも


考えることをやめた。


深く、意識を捨てて


―――MoRS本部 幽世 マルチセクター


幽世は多角形の構造が合わさって出来ている。

中心は六角形で、どのセクターにもつながる通路のような場所だ。


と同時に、様々なセクターの人員が一同に会することができる場所

いわばレクリエーションルームのようになっていた。


その一角、作戦会議室と銘打たれたそこで、小野寺や針崎を含めた多数が集まっていた。


「それで?なにがあるのかしら?」

無言のまま、席に座ることにしびれを切らした針崎


「要件:不明」


「氷室さん。今は作戦外ですわよ」


「すみません。癖になってしまっているもので」


「確かにあの頻度だと仕方ないですわね。」


「そういえば大佐はまだ?」


「ええ、まだ療養中のはずですわ。」


殆どの構成員に対して、大佐は負傷のため療養中だと説明されている。


実際には秘匿領域での尋問のためだったが、あれほどの騒ぎになれば誰もが納得していた。


暫く雑談を続ける一同だったが


ガチャ


扉が開く。


「ん?」

「あら。」


現れたのは作戦服ではなく、略式正装に身を包む雪乃だった。


コトコトと軍靴の音を立てて一同の前に直る。


「初めに、今回皆さんに集まってもらったのは辞令の為です。」


一同はなるほど!といった顔を浮かべる。


「一つ、昨今の敵対勢力との接触激化に伴い、新たに警備・実行部隊を設立する。」

「この舞台は、MoRS本部などの重要拠点の防衛と、有事の際に外部での軍事作戦を行うものである。」


敵の侵入によってもたらされたのは肉体に対する被害ではない。

今までありとあらゆるものから秘匿されてきたMoRSの本部が直接的な接触があったこと。

それそのものが精神的負荷であった。


そのため、対外・内部両方に対しても警備を強める必要があったからだ。


殆どの人員がなるほどと頷く中針崎が声を上げる。


「ちょっとまってくださるかしら。」


「はい。何でしょう。」


「我々は軍事組織でも国家でもありませんわ。部隊を創るとなると、今まで事実上の黙認を行ってきた国や組織からの反発を招くことになりますわよ。」


「そうですね。そういった意見もあることでしょう。説明は後程行います。」


「...ええ。まあいいですわ。」


雪乃は渋った。


そのことは皆の目に疑問に映ったことだろう。


「2つ、MoRSの秘匿性をより高めるために、記憶の修正や補強を行う薬剤の開発並びに、医療全般の向上を主な目的として、研究開発を行う部門を設立する。」

「この部門は研究セクターと呼称し、支援セクターとは異なる運用となる。」


今まで研究開発もまとめて、支援セクターが行っていた。

だが、あえてそれを独立させるということだ。


今回のように侵入や施設への攻撃があるとすれば、その対策の為に警備を強める必要があるが、それに伴って偶然の侵入にも対処しなければならない。

それには記憶という不変の要素が邪魔をする。


仮に、MoRSが軍事力を保持していると知れれば、日本はもちろん。

その他の勢力との敵対を招きかねない。


ならばその事実を消す必要がある。

もちろん記憶という不変の物であっても。


「以上」


「えっと針崎さん?」


針崎はなるほどという顔をしている。


「いえ、なんでもありませんわ。」


「いえ、そうではなく、針崎さんも含めて疑問点は多くあると思います。ですので...」


含みのある言葉と同時に


ガチャ


再び扉が開く


「私から説明させてくれ。」


「大佐?安静にしなくてもよいのですか?」


針崎やその他にとって予想外の出来事だった。


「辞令とは別なんだが、もう一つ報告したいことがあってな。」


「はて?なんでしょう?」


一同は疑問が増えた。


少し落ち着きの無い様子の大佐。


何か言いよどむような様子に疑問を隠せない。


「改まってどうされたのですか?」


「氷室。久しぶりに普通だな。」


「私自身違和感ありますけどね。」


「一度席に戻ってくれ。ある意味重要な話なんだ。」


空気が引き締まる。


MoRSは一体なにを考えているのか。


真相はすぐに語られる。


次回は一週間以内に更新。つづきを追いやすくするため、**ブックマーク(しおり)**で目印していただけると助かります。


また、作品のご感想やご意見もお待ちしております。厳しいご意見でも構いません。

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