第116話 支配する不信感
歴史というソースが根拠をなくすというのは、現実でも多々あります。
不確定要素でも、信じるものが多くなれば必然的に信頼に値する根拠となるのです。
しかし、その根拠が意味をなさなくなった時、人々は何を根拠に行動すればいいのでしょうか?
そして、根拠のない選択をする負荷と疑心暗鬼のプロセスがこの章では社会を不安定にします。
さて、この章ではどうして調律を完遂するのか...こうご期待。
青森での騒動を受けて、歴史が意味をなさなくなった。
そして、今SNSでは、政治家をターゲットに経歴が正しいものなのかという論争が繰り広げられていた。
「あの衆議院議員は学歴を詐称しているはずだ。」
発端はただの憶測に過ぎなかった。
SNSで拡散されたそれの投稿を見て、有志の解析屋がハッキングやクラッキングを行い、データベースから整合性チェックを行った。
「公式サイトにある某大学の卒業生に名前と一致するものはなかった。」
と画像付きで補足の投稿
そして、議員が謝罪を含めた辞職を行いさらに外へと飛び火する。
―――同日 東京某所
「そういえば、あいつ結婚してたって嘘らしいね。」
「あ~それ俺も聞いたわ。」
至る所で魔女狩りのような経歴や歴史などの虚偽が発覚していた。
「昨日は織田信長が架空の人物だとかなんとかいってたよね。」
「え~、実は俺も何か記憶違いが起こってるんじゃないかって心配になるよ。」
「それに、加山猛が捕まったのも嘘だったらしい。当時のプロデューサーが事件をでっち上げたんだって。」
「あの有名俳優もか....」
中には、真実が暴かれて良い影響を与えることもあったが、殆どが信用を失う悲惨な結末を生んでいた。
―――MoRS本部 幽世 指令セクター
「感情係数の著しい低下を観測しています。」
「MoRSのデータベースが確実に信用に足るものか、その確認はどうする?」
「主演算装置の情報収集を停止しますか?」
指令セクターは情報の真偽が不確かなことでてんやわんやになっている。
普段、指揮を執っている大佐の不在が影響していることは明らかだったが、それよりも未憎悪の情報災害に対応しきれていないのであった。
混沌を極める指令室だったが
ドン
と机を強くたたく音が響く
「皆さん、情報の整合性は大事ですが今は災害前の原本を保持することに務めましょう。」
声を上げたのは臨時司令官の浅茅だった。
大佐は良く現場に行くため、常にバックアップとして司令部には浅茅がいる。
「おそらくこの世界で歪んでいない原本となる歴史を記録しているのは今や我々だけでしょう。」
「ですが、このままでは改変された歴史が定着するのでは?」
「この原本を我々が保持する限りは大丈夫ですよ。」
「では、民衆の不信感はどうするのですか?」
「それはわれらが司令官がなんとかしますよ。」
「...」
「大佐はそのために現地にいるのです。しかし、我々のデータベースが改変されれば大佐が民衆を調律したとて、歴史は改変されたままになってしまいます。しかるべきタイミングまで、保持する。それが今のMoRS司令部に課せられた任務なのですよ。」
「分かりました。」
浅茅は理解していた。
事前に何かを言われたわけではない。
大佐に個別で指示をもらっていたわけでもない。
だが、生まれと受けてきた教育の質に加え、大佐に対する絶対の信頼が彼女を最適解へと導いていた。
「(頼みましたよ。大佐)」
すべては整った。
そして、すべては大佐にゆだねられていた。
次回は一週間以内に更新。つづきを追いやすくするため、**ブックマーク(しおり)**で目印していただけると助かります。
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