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天上のダイアグラム  作者: R section
第7章 過去の証

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第112話 無力な幻想

―――大洗の宿 温泉


大佐が温泉へと向かうと、脱衣所に人はおらず、静けさと和の装飾が雰囲気を演出していた。


「やはり最高だな。」


衣服を取り払い、温泉へと進む。


ちらほらと宿泊者がいるが、ほとんど会話が聞こえない。


水の流れる音と、時々体を洗う音が聞こえるだけ。


「まずは洗体だな。」


石鹸などで体を清めて、かけ湯をして温泉につかる。


「いい湯だな」


そうつぶやくと、少し離れたところに居た年配の男性が大佐へと近寄る。


「ここへは良く来られるんですか?」


「良く、とまではいきませんが時々来ます。」


「若いのに渋い...そういえば大洗名物の煮っころがしは食べたかね?」


「いやまだですね。」


「なら食べるといい。おそらく探し物がみつかるよ。」


「なんですかそれ、言い伝えでも?」


「いいや。ただのジジイの感だよ。」


「まあでもせっかくなので明日にでも食べてみます。」


「そうするといい。健気な若者よ。」


「あなたは、地元の方ですか?」


「どうだろうな。君とはまた会える気がするよ。」


「は、はぁ...。」


何者か、気になって確認するころには男性はすでに去った後だった。


「いったい何者なんだ。」


この時、完全にオフモードである大佐は気づいていなかった。


相手の感情や目的、思考の一切が読めていないことに。


「それにしても、いい湯だな。」


身体の芯を温める湯加減に加え、自然と融合しているかのような見た目の演出が最高の環境を作り出している。


心地よい環境に頭の中を空っぽにして浸る。


―――大洗の宿 大佐の部屋


暫く温泉を堪能した大佐は部屋へと戻る。


「待たせたな。」


「いえ、お構いなく。」


妙に真剣な雪乃は、どうやらしずめとゲームをしているようだ。


何を子ども相手に真剣に...と言いたいところだったが盤面がそうではないと語っている。


「王手だよ。」


「...参りました。」


しずめが詰みの王手をかけて、対局が終了する。


「ちょっと待て...雪乃...」


「どうされましたか?」


「本気だよな?」


「はい。エイレーネを含む全リソースを使っての本気ですよ?」


以前から年齢に比例しない知能だということは理解していた。


ただ、しずめは賢いと


とはいえ、将棋という決まった動作をする盤上の戦では、人間と比較にならないワーキングメモリを持つAI雪乃に軍配が上がる。


「どうやったんだ?」


「どうって、簡単だよ。雪乃さんめっちゃブラフに弱いんだよ。」


「あ~なるほど。そういう事か」


理論上、AIの頂点である雪乃は他とは比べ物にならないリソースを持っている。


だが、そのリソースをもって終局までの数億、数兆の可能性を読み切ったとしても、どの手法で相手が動くか、優先順位をもって管理している。


であれば、その優先順位に誤認させる形で行えば簡単な手を含めたリスク計算を行うだろう。


そのなかで、過去に類を見ない安直なブラフに対しては、もっと先の危険を考慮してブラフに引っかかる。


気づいたときにはすでに詰みしか残されていなかったというわけだ。


感情の読み取りや直感的なロジックの理解にたけているしずめにとっては下手に知能の高いものよりもより特化した柔軟性が発揮できるということだった。


「これはどうしたものか」


「改善として、全結末パターンの並列処理が挙げられますが」


「それを行って将棋という媒体に何の意味があるんだろうな。」


「はい。なのでその点においては10手先までは意図的に読まないようにしていましたので」


「とはいえそれをここまで...」


「ですね。驚異的です。」


大の大人とAIの2人が超専門分野で話をしていた。


その様子はしずめにとって


「(何の話をしてるんだ。ゲームだよね)」


呆れる以外の何物でもなかった。


トントン


くだらない談義の中、唐突に扉をたたく者が現れる。


「お食事をお持ち致しました。」


そうして三人は夕食を堪能する。


明日は再び、大洗の地に潜む何かを見つけるために


今はただ、休暇を満喫するのであった。


次回は明日更新。つづきを追いやすくするため、**ブックマーク(しおり)**で目印していただけると助かります。


また、作品のご感想やご意見もお待ちしております。厳しいご意見でも構いません。

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