第110話 常識の乖離
また近頃さらに寒さが厳しくなっていますね。
私も若干体調が悪いようなそうでもないような微妙な状態が続いています。
皆さまも体調には気を付けてくださいね。
―――茨城県大洗町
暖かい陽気が町を包み込み、とても過ごしやすい気温が体を包む。
三人が仮想空間から戻ると、周囲は午後の賑わいを見せていた。
「すごい。めっちゃ違和感だね。」
MoRSの仮想領域は表層意識を簡易的に置き換えるため、瞬間移動に近い体験を得る。
そのため、初めて仮想空間に入ったしずめはとても驚いていた。
「あまり長時間いると良くないぞ。それに時間は等しく経過する。」
「確かに、人間にとってこの意識の推移というのはとても負荷がかかります。」
「そうなんだ。」
仮想空間について話ながら町を歩く三人だったが、大佐はまた異変に気付いた。
「またか...」
「にっころ...」
「ですね。」
数十メートル歩いた先に再び煮っころがしののぼりが上がっていた。
そこから暫く歩いた先でバスに乗り、マリンワールドへと向かう。
「ネット上にも名物は煮っころがしとありますね。」
「そうか。事前に異変の情報がないと不安になるだろうな。」
「そうだね。もしこれが誰かのいたずらならたちが悪いよ。」
「ひとまず現状は異変とみるべきだな。」
まとめを終えたころ、バスはマリンワールドへと到着した。
―――茨城県 大洗町 マリンワールド
マリンワールドは大型の水族館であり、お土産やフードコートなども入っており、連日観光客でにぎわっている。
「いつ見てもこのマークはクレジットのロゴみたいだよな。」
「そうですね。色を調整したら見分けがつかなくなりそうですね。」
「そこなの?大きいねとか、人が多いねとかじゃなくて?」
「ああ、すまない。気になってしまうんだ。」
「そういうものなのかな」
大洗マリンワールドの入り口にはロゴが印されているが、某有名カード会社の商標にデザインが酷似している。
まったくもってお互いに盗作する意図がないだろうし、商標権的にも何ら問題がないが人間の認知とはそういうものだ。
「ご主人様、しずめ様、こちらが事前に準備したチケットでございます。」
「ありがとう。では入ろうか。」
「うん。」
館内はコンセプトごとに分かれており、順路に沿って楽しめる構造になっていた。
「あ、クリオネってこんな感じなんだ。」
「小さいですが一応食べられるそうですよ。」
「雪乃さん...ちょっとそれは」
「申し訳ございません。そういった目線が染みついているもので。」
そういいつつ大佐に目線をやる雪乃
「...いやすまない。」
「何が?」
「何でもない。ゆっくりと見て回ろう。」
大佐は若干申し訳なさを感じた。
そもそも雪乃の設計思想は作戦補助が大筋だった。
その中で、生き物の知識は可食か否かが重要だったのだ。
完全昇華を経てなお、その経験は色濃く残っており、雪乃お手製メイド服にも隠された戦術優位性を入れているほどだ。
「クラゲかぁ...」
「嫌いなの?」
「そうではない。だが数の暴力という点では恐ろしい生き物だな。」
「そうなんだ...」
大佐の見解に若干呆れているしずめだった。
「とはいえこれも美味しい生き物だぞ」
「雪乃さんみたいな....あ!!」
しずめは何かに気づいた様子だった。
「先生に影響されてるんだ。」
「え、ああ、すまない。」
なんとなく理解したしずめはいぶかし気に大佐を見つめる。
「というか先生って雪乃さんと結婚してるんだよね。」
「いや、してないぞ。」
「え?一緒に住んでるし、すごく仲もいいのに?」
「いろんな人に言われるけど、確かに恋人であるんだが...結婚とまではな」
「ご主人様が望むなら私は構いませんよ。」
「え...」
しずめは困惑の連続でついていけない様子だ。
心の中で変わったカップルだなと思ったが、そもそもこの二人は普通ではないと思い返す。
混乱する思考を放棄してとっさに告げる。
「もう結婚すればいいじゃん」
「まあ、いずれその時が来たら...」
煮え切らない様子の大佐だった。
三人はそんな話をしながら、水族館で楽しんだ。
一通り見て回り外へでると、海側で夕焼けが煌々と輝く。
「これはすごいな。」
「そうですね。」
「とてもきれいだね。」
言葉で語れぬ優美さがそこにはあった。
合わせて心地よい風が気持ちを落ち着ける。
そんな夕日を眺め、バス亭へ向かうのであった。
次回は明日更新。つづきを追いやすくするため、**ブックマーク(しおり)**で目印していただけると助かります。
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