第104話 移される悪意
―――2026年5月9日
大佐が医療班に見たものを説明して、ある程度の状況が分かった。
当初、パッチ1.1に含まれた誘導を誘発する部分について、誰かがモデルになっているのであろうと予測していた。
それは概ね正しいのだろう。
だが、そのモデルが佐竹の理想の人間像という曖昧なものと予測していたが、それは違った。
「今思い返せば、佐竹の理想像という曖昧な存在であれば、あそこまでの誘導効果を持たせるのは難しいだろうな。」
「そうですね。ただ、偶然固まってもいない理想がブレブレの状態で誘導作用につながる可能性もありました。」
「そうだな。だが、おそらく今回は敵が作り出した人間像だ。これは指示に従い肯定感を満たし続けることで、無意識に選択を放棄する人間を作り出す装置だ。」
「であれば...」
「ああ、調律するぞ。」
ついにMoRSは動き出す。
深海の底から這いあがった大佐に率いられて...
―――2026年5月9日10時00分
しずめは普段通り学校へ通っていた。
「鹿島さん。ちょっと...」
めずらしく友人である鹿島を自ら呼び出したしずめ
「なに?どうしたのしずめさん」
「アド戦って知ってる?」
「もちろん!だってみんなやらないとって言ってるよ」
「だよね。もしも、私が辞めてっていったらどうかな?」
「考えたことないかな、だってしずめさんはそんなこと言わないから」
「そっか...」
なんとなくではあるが、アド戦が今社会に良くない影響を与えていることをしずめは理解していた。
友人だからこそ、少しでも危険ならそこから離れさせたかった。
少し前から徐々に生徒たちの口数が減ってきており、とても落ち着いた印象があったが同時に何か無気力なイメージを抱くことが増えていた。
「ありがとう!なんかもう大丈夫みたい!」
「そうなの、じゃあ私は授業に出て16時に帰宅するのがお告げだからいくね?」
「うん!ありがとう!」
鹿島は教室へと戻った。
「やっぱり何かおかしい。」
―――同時刻 MoRS本部
「では、大佐から作戦の説明があります。」
「早速だが、今回の作戦について説明を行う。」
各構成員が背筋を伸ばす。
「まず、今回は重影作戦と呼称する。この作戦はアドバンスドウォーの潜在的誘導部分を無害化するものである。」
「無害化...ですか?」
「ああ、それに伴い開発者である佐竹彩弓を臨時構成員として、作戦に加わってもらう。のちに正式に構成員になる可能性も大いにあるので協力するように。」
「外部の人間というのは危ないのでは?」
「その点は、場合による。」
「分かりました。」
「まず、雪乃を中心に佐竹を含む解析部の人員は誘導が働かない形で現行のアド戦を再現するためのパッチ1.2の制作を行ってもらう。」
「承知いたしました。」
「私は観測部とともに、事態の進展がないか念入りに監視を続ける。もしも崩壊の侵略が始まった際には、別途指示を出す。」
ついに調律が始まった。
果たしてMoRSは間に合うのか...
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