表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王太子暗殺未遂事件~存在しない容疑者~  作者: S屋51
第五章 謀略

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/28

「そう言えば先日、リアルテ様から王族に嫁いだ女性で一番若くして出産なさった方は何歳であったか、と質問されました」

「はい?」

 なんでそんな質問……聞くのが恐い。

「わたしは存じ上げませんでしたのでお調べしておきます、とお伝えしました。殿下はご存知ですか?」

「確か、4代前の妃の1人が11歳で嫁いで12歳で出産してる」

 早いよね。

 おまつの方かってね。

 前田さんちのおまつさん、12歳になる前に最初の子供だったはず。

「いや、それとリアルテとどう関係するの?」

「お分かりでしょう?」

 いや、分かるけど、分かりたくないというか。

「そんなに慌てて子供を作る必要はないのに」

「殿下との確かな繋がりが欲しいのかもしれませんね」

「繋がりって……」

「話に聞く限りですが、リアルテ様は、今満ち足りた生活を送っておられます。でも、それはすべて殿下が与えられたものでしょう?」

 そりゃ、まあ、そうだね。

 リンドバウム公爵家でのリアルテの扱いは酷かったから。

 大貴族の令嬢なのに食事も貧相なもので、ドレスなんかも殆ど持ってなかった。そもそも余り人前に出して貰えず、対人関係に関して経験が乏しいせいで成長していなかった。

 だから、たまに人前に出てもどう反応していいかも分からずにいて、人形姫、なんて呼ばれ方をしてたんだ。

 僕も悪かった。

 生まれたときには決められていた婚約者なのに、7歳になるまで一度も会わなかった。

 初めて会って、それから彼女の境遇を知って慌てて引き取った。他にも婚約者がいたってのもあるけど、ちゃんと彼女のことにも気を配っていたら、もっと早く保護できたのに。

 一緒に暮らすようになってからは衣食住には一切不自由させてないよ。

 公爵令嬢に相応しいものをあげてる。

「殿下はそんなことはなさらないでしょうが、殿下の一存でリアルテ様はすべてを失いかねません。だから、殿下との間に」

「ああ、いい。言いたいことは分かった。リアルテが不安になるのも、考え至らなかった僕の不徳だよ。

 リアルテとはじっくりと話し合わないといけないね。僕がどれだけ彼女を大切にしているのか。捨てるなんてあり得ないって、ちゃんと理解して貰わないと」

「リアルテ様も聡明な方ですから、分かってくださいますよ」

 僕はまだ9歳。リアルテは8歳。

 将来的には、そりゃリアルテとの間に子供も欲しいよ。でも、それはもっとずっと後のことだ。今から慌てるような話じゃない。

 1年以上一緒に暮らしていても、リアルテの中にはまだどこか不安が残ってたんだろうね。

 今の生活が僕の気紛れで突然失われるかもしれないって。

 彼女が大事だと伝えて来たつもりだけれど、足りなかったみたいだね。いや、方法が間違っていた?

 どちらにしても、今から子供の心配なんてしなくてもいいと言わないと。

「出産っていうのはさ、女性にとってとても負担が掛かることなんだよ。新しい生命を生み出そうって言うんだから、それぐらいで当然かもしれないけど、とにかく出産で命を落とす人も珍しくない」

 昔々、ここより医療の発達した世界でも、出産のリスクはゼロにできなかった。

 医療が未熟なこの世界じゃ出産時の死亡率はもっと高い。

「10代前半というのは、子供を産むことは可能になっても、肉体的成長としては十分じゃないんだ。未熟な身体での出産は危険極まりない」

 昔々の世界じゃ出産適齢期は20代半ばぐらいからだった。

 この世界の人間と全く同じ条件ではないにしても、10代前半が適齢ってことはないと思う。

 身体が小さいと負担も大きいからね。

「世間的には、15歳ぐらいなら普通ですが?」

「たぶん、それでもちょっと早いと思う」

 結婚年齢にも明確な規定がないからね。

「なら、わたしも焦らなくともいいということでしょうか?」

 女性の場合だと16、7ぐらいには結婚してて当たり前だからね。もちろん、これも決まりがあるわけじゃない。中には20歳超えてからって人もいる、

 でも世間の風潮ってのがあるからさ。

 13や14で婚約者もいないのは珍しい部類で、15から18の間ぐらいで結婚しちゃうんだよね。

 ロゼは王太子の婚約者候補だったけれど、そちらが完全に駄目になったから今はフリーの状態。貴族籍も失ったから、貴族相手じゃどこかの貴族に養女にして貰うとかしないと無理だろうね。

 なら平民とならいいかというと、生活が全然違うから、いきなり平民に嫁いでも苦労すると思う。

 なにしろ修道院に入れられるところをスカウトしたんだから。

 ラッツも正式な妻じゃなく愛人にでもしようと思っていたんだろうね。貴族のご令嬢なら家同士の問題もあって余程身分が高くないと愛人って難しいけど、ロゼが平民になってる今ならどうとでもなるからね。

「ロゼは美人だし、才媛でもあるから、じっくり探せばいいと思うよ」

「いざとなれば愛人枠でお願いします」

 ……今、なんか聞き捨てならないこと言わなかった?

「多少年上でもお気になさらないのは存じていますから」

「9歳児になに言ってるの」

「もちろん、すぐどうこうとは思っておりませんよ。ただ、わたしの場合は良縁は難しいと思いますので、なら殿下のお手つきになるのが一番かと。

 リーチェ様は良くて、わたしは駄目ということはありませんよね?」

 ああ、そうか、リーチェがいたか。

 リーチェも元は王太子の婚約者候補だった。ロゼとも知った仲だ。

 彼女の場合は、あのポンコツ具合というか、ずぼらさが合わなかったんだろうね。長兄との話が流れたところで僕に貰ってくれと泣き付いて来たから引き取ったんだった。

 そこらの男じゃ相手にならないぐらい腕が立つし、ポンコツだし、僕が引き取らないと生涯未婚とかありそうだったから。

「リーチェは他に相手見つけるのが無理だと思ったからだよ。ロゼは大手商会とか、富裕層の良縁が見つかると思うよ」

 ロゼのことは嫌いじゃないよ。

 昔から優しく綺麗なお姉さんだったから。

 でも、結婚相手とか、そういう風に見たことはなかったんだよね。そりゃそうだよね、兄の嫁候補だったんだから。

「殿下以上の良い相手は、そうそういるものではないかと思いますよ。もちろん、無理にとは申しません。そういう選択もあると覚えておいてくださいね」

 そりゃね、大人になってからだと4歳や5歳差の夫婦なんてざらだけど、9歳で4歳上ってなるとねえ。

 それに嫁(予定)が沢山いるから、間に合ってると言えば間に合ってるんだよ。

 パパンじゃなるまいし、手当たり次第に手を出すつもりもないしね。

「会話が楽しいのもいいけれど、そろそろ帰りません。冷えて来たし、おなかもすいた」

 それまで護衛として存在感を消していたリルフィーネが声をかけて来た。

 僕はロゼとの会話に夢中になっていたから、身体がすっかり冷えてしまっているのにも気付かなかった。

 リアルテを待たせてるし、考えてみれば牢にいたから今日はまともに食事をしていなかった。

 僕はどうも考え事をしていると空腹を忘れる傾向にある。

 以前、リアルテを引き取る前なんかは良く食べ忘れたりしてた。

「申し訳ありません、わたしが気を付けておくべきことでした」

 ロゼの謝罪を僕は、気にしないで、と流した。

 彼女との雑談に気を取られたのは僕も一緒なんだから。

「それじゃ帰ろうか」

「はい」

 僕らは並んで歩き出す。

 その後ろを、リルが足音も立てずについて来る。気配殺してる意味ある?

「そう言えば、先日自己紹介の練習をしていたのですが」

「うん?」

「リアルテ様は現在第3王子殿下の婚約者、というのが正しい肩書となるわけですが、リアルテ様は、レリクス殿下の妻、と」

「うんんん?」

 僕、まだ結婚してないんだけど。

「将来的にはそうなるのですが、今は違うのですからそれではいけないとお教えしたのですが……他のことは聞き分け言い方ですのに」

 そこ、諦めないで。

 ちゃんと駄目だって納得させて。

「リアルテとは、本当に色々とじっくり話し合わないといけないみたいだね」

 お説教って苦手なんだよなあ。

 泣きそうな顔されるとさ、もうなんというかね。

 それでも心を鬼にして、叱るべきは叱らないとね。リアルテのためにならない。うん、ちゃんとできる……と思う。


          ※


 自分のことを第3王子の妻と名乗ってはいけません。もう大きいのだから、異性と一緒に寝てはいけません。

 そういう当たり前のことを言い聞かせるはずだったのに、何故か連絡も無しに長時間留守にしたことや算盤の授業ができなかったことを責められ、改めて時間を取る約束をさせられた上に、今度一緒に王都にお出掛けすることになった。

 ……え、なんで?

 どうしてこうなった?

 リアルテ、いつからそんな高等な交渉術を?

 いや優秀な子だからさ、教えればなんでも吸収するんだよね。だから、僕なんかもすぐ追い越される覚悟はあったんだよ。それは別にいい。大魔王のチートかと思うとちょっと不安になるけど、別に悪いことしてるわけじゃないからね。

 成長は嬉しいけど、なんで僕が譲歩してんの?

「あんな交渉術、どこで学んだんだか」

 僕が呟いたら、ロゼもリルもアルまでもが何故か、なに言ってんだ、って顔で僕を見た。

 え、なんで?

身近に悪い見本がいるんだね、きっと

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ