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王太子暗殺未遂事件~存在しない容疑者~  作者: S屋51
第五章 謀略

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「落ちぶれたお家柄でも貴族の方に逆らえばどんな罪に問われるか分かりませんからな」

 男爵、いや、一代貴族の騎士であっても身分としてはハゲ狸より上。

 理不尽な要求でも下手に断れば、そこから言い掛かりを付けられかねない。法律も裁判もあるけど、貴族有利なんだよね。

 証言も爵位あるかないかで扱いが全く違うし。

 ハゲ狸もそこらは心得ているから、伯爵や侯爵に取り入ってうまく立ち回ってる。

 高位貴族になると平民に因縁つけて小遣いせびろうなんてケチな真似する奴は、居るかもだけど、下位貴族よりは少ない。プライドがあるからね。

 平民に金せびってます、なんて自分の家が落ちぶれてるのを宣伝するようなものだから。

 ちなみに、問題が起こっても極力僕の名は出さないよう言い含めてある。

 僕とニマール商会が取引あることは隠せないけど、僕が色々技術提供してることは表沙汰にしてない。たぶん、貴族がその気になって調べれば分かるんだろうけど、調べた結果第3王子の名が出ると大抵の貴族は尻込みする。

 王族だし、王后に睨まれてるのは有名な話だしね。係わっても良いことがない。

 ここ数年、ニマール商会は画期的な商品をいくつも市場に出して大儲けしてる。やり過ぎはよくないから調整はしてるけどね。

 平民が貴族になるのは難しいけれど、貴族は平民になるのはそうでもない。

 そして世の中には平民の方が遙かに多い。貴族をやめても、やりようはいくらでもある。

 ラッツのように貴族としての振るまいが出来ない者は平民になればいい。

 それも嫌だというのは知らん。子供じゃないんだから、あれも嫌、これも嫌なんて通るわけがない。

 ラッツには貴族としてやって行けるだけのものが用意されていた。

 実力も無いのに血筋だけで近衛騎士に取り立てられ、王宮に出仕できていた。そのまま真面目にこなせば生涯安泰だったのに、彼はそうはしなかった。

 平民は成功を求められるけど、貴族は失敗しなければいい。それだけで全然違うよね。

 僕を疑ったことを悪いとは言わない。

 けれど、彼は踏むべき手続きを踏まずに、法を守らなかった。

 なら、相応の罰があるのは当然のことで、それも政治的配慮から暫定ではあるけれど甘い罰となった。

 法に則って罰するなら、彼には死罪しかあり得ない。

 ただただルールを守れば良かったものを、自分の嫉妬と出世欲のために思い上がった行動を取った。同情する余地は1ミリもないね。

 貴族であることに胡座をかいている人間はさ、その肩書がなくなっちゃったらどうなるんだろうね。

 平民になってそれまでのようにふんぞり返ってたら、すぐに周りから袋叩きにされるだろうし、貴族に対して無礼を働けば今度こそ首を刎ねられる。

「ま、平民だって立派にやってる人達はいるんだから、後は当人次第だよ」

「はい」

 ロゼはさして気にもならないようだった。

 ううん、ロゼにここまで素っ気なくされるって、ラッツは日頃どんな態度を取ってたんだろう。僕への態度を考えても、ろくなもんじゃなかったんだろうね。

 そんなだからペナルティを喰らったわけで、そのまま変わることができなければ平民としてもやってけないだろう。

 マルエイ伯が厳しい対応を取るなら、平民落ちさせるよりも謎の病死や体調不良として生涯軟禁なんてこともあるかな。どうでもいいけど。

 今は史上稀に見る愚か者の今後より考えるべきことがある。

「殿下が悩まれていらっしゃるのは、王太子殿下や第2王子殿下へ毒を盛った者のことですか?」

 急に核心を突いて来るからロゼは油断ならない。

 まあ、そうだよね。このタイミングで僕がなにか悩んでるとすれば、毒殺未遂に関してだよね。

「まあね」

「殿下は、犯人に心当たりが?」

「かもしれない、ってだけの話だけれどね。

 嫌な考えだよ。こんなこと思い付く自分が嫌になる」

 ホント、イヤんなる。

「でもね、思い付いてしまったからには放置できない。思い付くべきじゃなかった。そういう話なんだよ」

 ロゼは少し困った顔をした。

 だよね。

 こんな言い方じゃ、なにがなんだか分からないよね。分かって貰うつもりもないから、わざとだけど。

「人のね、汚い部分に気付くというか、思い至るのはさ、自分も同種の人間だからなんじゃないかって、そんな気分になる」

 実際そうなんだろうね。

「だから、今夜はリアルテとは会いたくなかったんだよ。こんな汚い人間が側にいるのは、あの子のためにならない」

 将来の大魔王かどうかなんて関係ない。

 多感な年頃の少女の側に、僕のような人間が居ては悪い影響が出かねない。

「殿下がどのような人間だろうとも、リアルテ様は側に居ること望まれると思いますよ」

 「それは単に彼女の側にこれまで頼れる人がいなかったからだよ。親が親としての役割を果たしていれば、僕の出番なんてなかった」

 親は子を慈しみ育てる。

 当たり前に行われるはずのことが行われなかった。

 動物だってね、子供を守るために親が身を挺するなんて話はいくらでもあるんだよ。……危ないときは、さくっと切り捨てもするけど、それは飽くまでも生命の危機に瀕したりしたとき。

 人間が動物より高尚な生き物だと宣うなら、そういうところで見せて欲しいね。

「切っ掛けはどうであれ、殿下はリアルテ様に手を差し伸べられたのでしょう。それによってリアルテ様が救われたのは事実。仮定の話をいくら持ち出されても、これは変わらないかと存じます」

 そうだね。

 リアルテの境遇と僕が手を差し伸べたことは別の話だ。僕には彼女を救わないという選択肢もあった。

 リンドバウム公爵と要らん揉め事を起こさずに、リアルテの窮状を知りながら素知らぬ顔をして形ばかりの結婚をすればそれで僕の最低限の役目は果たせた。

 ……できないでしょ。

 あんな小さい子がネグレクトだなんだと虐待されてる状態を放置するなんて。

 縁があって婚約者になったんだもの、守れるなら守ってあげないと。

 普通の子供はそこまで考えない、考えることができないんだろうけどね。

「妻を夫が助けるのは当たり前だよね」

「妻の愛を受け止めるのも当たり前のことかと」

 どうもリアルテ絡みの話題だと旗色悪いな。

 相手がロゼだからかな。

 ロゼとは小さい頃から(今だって小さいと言えば小さいけど)の付き合いだからね。親しく言葉を交わすようになったのはここ1、2年だけど、僕を弟かなにかと思ってんだろうなあ。

 順調に行けば義姉弟になるはずだったから間違いじゃないけど。

「リアルテ様は、一日でも早く殿下のお役に立てるようになりたいと、毎日頑張っておられますよ。本当に吸収の早い方ですので、思った以上に早くわたしがお教えすることがなくなりそうです」

「あの子は居てくれるだけで僕にとっては癒やしなんだけどね」

「惚気ですか?」

「単なる事実だよ。僕の宮には人がいなかったからね。あの子を引き取ってから随分と温かくなったよ」

 1人でいいと思っていた。

 誰にも迷惑をかけず、気楽だったのは事実だ。でも、今からあの状態に戻るのはきつい。

 ミリアやシーラにも癒やされていたけどね。それでも一緒に住んでるわけじゃないから。

「思ったのですが、年末や年明けはどうなさっていたんです?」

 この国じゃ年末年始は家族で過ごすのが慣例になってる。

 貴族同士の交流も新年5日目以降。

 と言っても、貴族家の使用人たちはご主人一家を放置するわけには行かないから、交代で休みを取るとかが普通だけどね。

「食料や薪は困らないだけ運び込んでおいて貰って、後は適当にやっていたよ」

「……あの、お一人、ということですか?」

「爺やがいたけど、年末年始は家族と過ごすように休みをあげてた。居ても特にやることもないんだから、その方がいいでしょ」

 年始に国王主催で開かれる新年会までに戻ってくれたらそれで良かったからね。

 僕だってやることがないんだから、侍従は不要だよ。

「あの宮で、お一人だったんですか?」

「そんな顔をしてないで、ロゼ。知ってるでしょ、僕は自分のことは自分でできるんだ」

 兄弟姉妹で集まったりする場もあるんだけど、母親である妃同伴で王后のところへ行かないといけない。

 となるとね、僕は浮いちゃうんだよね。兄上たちも他の姉妹を差し置いて僕だけ構うわけにも行かないからさ。

 そもそも王后に挨拶して、贈り物して、と母親の実家、後ろ盾がしっかりしてないといけない場面だ。

 わざわざ睨まれたり、姉妹から嫌味言われに行くのもね。

 今まで欠席していてなにか言われたことはないよ。

「殿下、いつからそんな生活を?」

「そんなというのは、一人での新年? だったら、5歳のときかな。4歳のときまでは専属の侍女がいて、少ないながらも使用人もいたから」

 専属侍女がいない現状が異常なんだけどね。

「色々あって一人になって、別に気楽でいいやって思ってたけど。リアルテとの生活は思った以上に楽しくてね。

 あの子は僕がなにを言っても感心してくれるし、なにをあげても喜んでくれるから」

 なんだか暗い話題になりそうだったから方向を変える。 

 ホントにね、そこまで全肯定しなくとも、と思うぐらいにリアルテは僕を持ち上げてくれる。気分はいいけど、リアルテがちょっと心配。

 ロゼも僕の意図に気付いて話に乗って来る。

「お二人が仲睦まじいことは大変よろこばしいのですが、共寝はそろそろおやめになった方がいいと言うか、まだお早いのでは」

 ……。

 うん、そうだね。僕もそう思うよ。

 そろそろね、リアルテの身体も女性の特徴が出て来るからね。

 子供だからって理由で一緒に寝てるのはまずいよね。

「それさ、リアルテに言ってくれないかな」

「そんなことをしたらわたしがリアルテ様に嫌われてしまいます」

 ロゼ、僕には嫌われてもいいのか。

「殿下は、忠臣の諫言に悪感情を抱いたりしませんでしょう」

 うん、考えを見透かされたね。

「それに、基本的にリアルテ様が従うのは殿下の言葉だけに思えます」

 ああ、そんな風だよね。

 家庭教師たちの時に厳しい指導を黙って受けてるのもさ、僕がそうしろと言ったからなんだよね、たぶん。

 リアルテにつけた教師たちは厳選してあるから、政治的思惑で態度を変えたりする人たちじゃない。教師として未熟な生徒を導くことに使命感を持ってる人ばかりだ。嫌味な奴とかもいないよ。鼻持ちならない奴は面接で落としたから。

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