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王太子暗殺未遂事件~存在しない容疑者~  作者: S屋51
第五章 謀略

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20/28

「わたし自身もですが、まだ成長する年頃ですから、落ち着かれる頃にはそれなりの身長になっているのではないでしょうか。

 王太子殿下も、昔はわたしより少し低いぐらいでしたよ」

 今の長兄はロゼより背が高いし、スタイルもいい。

 そう、まだまだこれからだから今の身長だけで考えても仕方ない。それぐらいは分かってる。

 僕はなんとはなしにロゼのドリル、巻き毛を摘まんだ。

 想像以上にふわっとしている。

 ドリルより発条かな、と思ったけど、本当にそうだ。ただし、とても柔らかく、触り心地のいい発条だ。

 引っ張れば伸び、放せば戻る。

「あの、殿下……」

 見やればロゼは顔を真っ赤にしていた。

 ?

 触っていいって言ったよね?

「すみません、本当に触られるとは思っていませんでしたので……その、思ったより恥ずかしくて」

 ええ~

 頭を撫でたとかじゃなくて、髪をちょっと触っただけだよね。そんなに恥ずかしいの?

 そんな風にされるとさ、なんか僕まで恥ずかしくなって来るじゃないか。

「ん、なんかゴメン」

 僕はロゼの髪を手放した。

 もうちょっとイジっていたかったけどね。そんな反応されるとね。

「すみません」

 もうね、なんでお互い謝ってんだか。

 ちらと見やればリルフィーネがなんかニヤニヤしてる。一応、護衛の心得として見聞きしたことを他言したりしないけど、確約取ってるわけじゃないから、他言するかどうかはリルの胸先三寸。まあ、他言したら信用問題だって分かってるだろうから、余計なことはしないだろうけど、リアルテには絶対言わないでよ。

 ……。

 なんでこんな浮気したみたいな気分にならないといけないんだか。

「そうそう、ついさっき思い出したんだけど、マルエイ伯爵家ってロゼの実家の遠縁じゃなかったっけ」

 貴族って政略結婚であっちこっち繋がりだらけだから、どことどこが縁戚とか覚えるの大変なんだよね。立場上、少なくとも現役と3世代前ぐらいまでの家系図は覚えなきゃいけなかった。幸い記憶力はいい方だからなんとかなったけど、面倒だよね。

 昔々の戦国大名たちだって、娘は政略の道具として嫁がせたり、離縁して戻ったらまた別に行かせたり、徳川の狸さんの母親も松平家から戻されたりしてたしね。

 家系図とか描くと、すっごく複雑なものになっちゃう。

 この国じゃ離縁はあんまりないかな。今、貴族少ないから余計にね。

 でも元々一夫多妻だったのが加速しちゃってるから、ちょっと大きな貴族だと10人ぐらい夫人がいても珍しくないという有様。

 この大きな貴族というのはお金がある、と言い換えてもいいかな。

 やっぱり家族を養えないとね。

 歴史が古く由緒はあっても経済的には潤っていない貴族だと奥方は2人ぐらい。さすがに一夫一婦は少ないし推奨されない。

 次兄のリューイ兄上は一夫一婦で行くらしいけど。

 今だと、3、4人が平均かな。

 1人や2人だと少ないと言われる。5人以上は多いと言われ、大貴族や王族でもないのに10人超えると性豪だなんだと陰口を叩かれる。

 大貴族や王族にとって子供は政争の具だからね。

 あっちから嫁貰って、こっちに嫁がせて~。

 男子不足の世の中じゃなけりゃ、僕も適当な年齢になったらどっか外国に婿養子に行くことになってたかも。

 王の兄弟なんてさ、王様にしてみりゃ自分の椅子取りに来るんじゃないかって不安な存在でしかないわけよ。血筋が同じだと、血統的資格はあるわけだから。

 じゃ、国のために外国に拠点築いてね、とかやると王様的には一安心。距離的に遠い国だとなお良い。

 パパンも弟であるリンドバウム公爵と仲悪いしね。リンドバウム公爵はリアルテをイジメてたから、パパンとは無関係に僕がイジメ返しておいたけど。

 あんな可愛い子を、しかも実の子を冷遇って、思い出す度に腹の立つ。

 いずれリアルテに公爵位を継がせるから、公爵家自体を潰せないのが残念だけどね。

 リアルテが成人したら、実家の権限は全部彼女のものになるよう手は回してある。そのとき、父親と継母、異母妹をどう扱うかはリアルテ次第。リアルテが好きにすればいい。

 現リンドバウム公爵は巻き返そうと頑張ってるみたいだけど、借金で雁字搦め状態でなにもできてない。

 元々ね、後妻の好きにさせた結果の莫大な借金。簡単に返せる人なら、そもそもそんな状態にまで陥ってないでしょ。

 王弟であり王族。そしてプライドだけは高い人みたいだけど、実務能力はないというどうしようもないボンボン。叔父なんだけどね、この人。

 この王弟殿下は前にも色々やらかしてて、父上に眼をつけられてた。僕ともリアルテのことを除いても因縁浅からぬ人なんだよね。すっかり忘れてて、思い出したのはリアルテの仕返しした後になってからだけどさ。余りにもどうでもいい人だったものだから、記憶の奥底にあっても思い出すまでに時間かかっちゃった。

 それを思うとまだまだ甘かったかもしれない。

 盛大に話がそれたけど、貴族家は結構複雑に縁戚関係で繋がってたりする。

 で、あのラッツという近衛騎士の実家ってロゼの親戚筋なんだよね。

「ええ、それはまあ、そうとも言いますか」

 ?

 ロゼさんや、どうして目をそらすのかな?

 しかも、分かり易く動揺してるし。なにか後ろ暗いことでもおありでしょうか?

「ロゼ、怒らないから話して」

 こういうとさ、みんな絶対怒られる奴だ、って思うかもだけど、怒らないからね、僕は。

 事情を知りたいだけでロゼを咎める気は更々無い。大体、今回被害を受けたのはリアルテたちじゃなくて僕なんだから。それも怪我したとかでもないし。

「申し訳ありません」

 と頭を下げるってことは、今回のこととロゼがなんらかの形で関係してるってことかな?

「マルエイ伯爵家のラッツとは幼いときから交流があり、求婚されたこともあります」

「求婚て、王太子の婚約者候補なのに?」

 飽くまでも候補だから駄目ってことはないけど、普通はあんまりやらない。

「もちろん、王太子殿下の婚約者となれなかったなら、という条件付きでの求婚です」

「で、断ったんだ」

「はい。王太子殿下の婚約者となるべく努力していた頃ですので、今はそんなことは考えられない、と」

 そりゃ、大学入試に向けて頑張ってるときに、大学入れなかったときの話されてもね。

 おまえは人が大学落ちることを望んでるのかって話だよね。

 うん、喧嘩売ってる。

「それで縁は切れたと思っていたんです。彼も近衛として忙しい身の上でしたから。

 けれど彼は諦めていなかったようです。最近聞いた話なのですが、わたしが王后殿下のご不興を買って婚約者候補から外れたとき、彼はわたしが修道院に入れられたら迎えに行こうと考えていたとか」

 貴族籍を失い、修道院に入れられた令嬢に妻問いに行く。

 そこだけ聞くとさ、恋愛ものの美談にも聞こえるんだけど、良く考えれば修道院に入れられる前には手を差し伸べてないんだよね。

 修道院に入って数年も経てば王后殿下の怒りも収まるだろうから、頃合いを見計らってということなんだろうとは思う。でも、それってさ、恋愛より政治を優先してるでしょ。

 迎えに行くまでにロゼが辛い目に遭うかもとか、そういうのを無視して自己都合だけでタイミング計ってるわけで、それで恩着せがましく娶ってやる、と。それでいいのかって話。

 けど、まあ、ラッツが僕を目の敵にしてたのに納得が行ったよ。

 王太子派閥で元々が僕は仮想敵。

 加えて自分が懸想していた相手、しかも時機を見て手に入れる算段も立っていた相手を横から掻っ攫った相手。

 そりゃ目の敵にもするわな。

 ラッツが保身を考えず、ロゼが修道院に入れられるという話が出た時点で、ロゼの実家に嫁にくれと談判に言っていれば良かっただけの話なんだけどね。ロゼのためであっても王后殿下に喧嘩売る気はなかったらしい。

 社会人というか、貴族として間違ってはいないんだけど、それじゃ女性の心は掴めないんじゃないかな。

 けど、そんな個人的な言い掛かりみたいな話であそこまでやるのか……馬鹿じゃない?

「ロゼは、彼に嫁ぎたかったとか?」

 うわ、すっごく嫌そうな顔。

 淑女教育を受けたロゼのそんな顔、初めて見るよ。

 もしロゼが実は彼に思いを寄せていたとかだったらどうしようかと思ったけど、どうやらその心配はなさそう。 けど、

「そんなに?」

「いえ、まあ、友人ではありましたが、生涯添い遂げたいと思える方ではなかった上に、今回の殿下への無礼。

 貴族としての常識が備わっていれば、王族たる殿下に対してあのようなことできるはずもありませんのに」

 3番目とは言え王子を一般牢に入れるとか、あり得ないよね。

 しかも裏取りもしてない証言の他は単なる思い込みだけでなんの証拠もない話でさ。

 あういうヤバい逸材を早めに処理できただけ良かったのかもしれない。あんなのが爵位を継いだりしたら領民が可哀想だよ。

 マルエイ伯の次男がまともな人間であることを願うね。

 多少問題ある人だとしても、あそこまでのはそうはいないでしょ。

「じゃ、未練は無いんだね?」

「まったく」

 それを聞いて一安心。

「伯爵は優しい方でしたので、殿下のご温情にはわたしとしても感謝いたします」

 温情というか、取り潰しより生かした方がこっちにもメリットあることだからなんだけどね。

 ラッツ当人は廃嫡は免れないだろうけどね。

 家督を継げなくなって、その後に彼がどうなるかまでは僕の関知する所じゃ無い。

 貴族としては廃嫡になるだけで体面を失う。それでも貴族籍はまだ残ってる。大抵は貴族籍からも抜くけどね。

 貴族でなくたって生きて行けるけれど、貴族としての生き方しか知らないと厳しいかもしれない。

 平民になる。平民として生きて行くというのがどういうことか分かっていないとね。

 今は貴族男子が少ないから平民に婿入りとかは少ないらいしけど、3男4男が当たり前の時代には、家を継げない者の中には裕福な平民に婿入りする者も少なくなかった。

 身分ってさ、絶対のものじゃないから。

 下手な貴族より優雅に暮らしてる平民だっているしね。

 ニマール商会のハゲ狸とかも、貴族相手に商売してるけど、そこらの男爵子爵より生活ぶりはいい。

 平民だから貴族に因縁つけられないように気を付けてるらしいけど。

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