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王太子暗殺未遂事件~存在しない容疑者~  作者: S屋51
第五章 謀略

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 誰が王太子、及び第2王子に毒を盛ったのか。

 それに関して僕はとても嫌な想像をした。

 次の玉座に近い2人。その2人を排してその罪を僕に着せることで得をする人物。

 僕ら兄弟が消えたら、かなり揉めることになる。僕の次の人もね、法的には決められているけれど、僕でさえ実際に王位に就くとなれば揉めること必至なんだから、僕より下位の人となると順番なんてあってないようなもの。

 誰が玉座に手を伸ばしても反対されるのは眼に見えてる。

 それというのも現国王の直系男子が他にいないからだ。

 継承権を持っていたとしても、実際に継げるかどうかも分からない状態で継承権上位を排することになんの意味があるのか。

 王子を消すってかなり危ない話なわけで、それを実行に移すからには王位を自分の手にできる、或いは自分の息の掛かった者に継がせることができるとか、そういう公算がないとね。

 他国がうちの国の内部混乱を狙っての調略というなら見事なものだけど、今のところそれを疑わせるだけの証拠がない。

 犯人が何者かを考えるために、ある仮定を当て嵌めてみたら、思いの外うまく嵌まってしまった。それは、とても気鬱な話なのだけれど、王族であればあり得ない話じゃない。

 まったくもって、本当にどうしてそんなことを思い付くのか。

 近衛騎士団の詰め所を出るとロゼが待っていた。

 もう陽も暮れている。

 季節も冬に近く、風が冷たい。

 今は貴族籍を失ったとは言え、高位貴族の令嬢だった人が外で1人で待っているというのはどういうものか。

「先に戻らなかったの?」

 貴族令嬢と言っても通じる優雅な一礼をしたロゼに僕が問うた。

 離宮にいるリアルテへの伝言を頼んだのに。

「リアルテ様には使いを送っておきました。少し、ご一緒しませんか?」

 ここから離宮まで歩いて30分ぐらいかな。ロゼ、令嬢の足だともっとかかるかも。

 王宮敷地内であっても、とにかく広いからね。貴族達は移動には馬車を用いるのが普通で、王宮内とは言えふらふら歩いてるのは僕ぐらいかな。

 自慢じゃないけど、専用馬車を持ってないからね。

 そんなだから、僕は歩くのに慣れてる。けど、ロゼはご令嬢だったわけだし、僕のところに来てからも貴族的な扱いをして来た。

 歩けるのかな?

「王宮でも夜だから馬車を呼んだ方がよくない?」

 今日は色々あったからね。

 近衛もまだばたばたしてて警備が不完全だ。僕だけならもし襲われてもどうとでも逃げる自信はあるけど、ロゼと一緒だとさすがに厳しい。

「ランタンありますよ」

 いきなり後ろからランタンを突き出された。

 って、リルフィーネがにこにこ笑ってる。

 意地悪いな。

 態と気配を消してたでしょ。

 リルがいれば大丈夫か。この世界のエルフって強いんだよね。並の騎士じゃ敵わない。人間に使えない魔法だって使えるしね。

 細剣も持ってるし、警護する気あるみたいだし。

「このランタンって便利ですよね。ガラスも、少し見ない間に凄く綺麗になって」

 ちょっと前まで、透明なガラスなかったからね。いや、透明だったけど透明度が低かった。

「早く帰らないと姫様が待ちわびてますよ、殿下」

 リルフィーネはどうにも僕を年下扱いする。いや、年下なんだけどね。こう、弟をイジる姉、みたいな。

 ロゼがカンテラを受け取り、リルは一歩下がる。

 僕とロゼが並んで歩き出すとリルは少し距離を置いて後ろから付いて来た。ついて来たけど、気配消してるから振り向かないと存在が確認できない。なんか、こわっ!

 気配消してるのは僕とロゼの会話を邪魔しないようにとの配慮なんだろうね。

 離宮へ向かう道すがらには外灯なんて気の利いたものは殆どない。燃料費が嵩むからね。普段は最低限だけだよ。

 照明器具は松明。

 そのうちなんとかしたいと思ってるけど、まだ手が回ってない。

 普段なら近衛騎士や衛兵が巡回する。今日はどうかな。色々あってみんな忙しいから。

 空には月がある。

 うん、冬が近いせいか空が澄んでるね。月も綺麗だ。

 月が綺麗だ、と言うのをなんとなく躊躇うのは、別の意味があるのを知ってるから。

 夏目さんを知ってる人なんて、この世界で僕だけだろうけどね。

「なにかお悩みですか?」

「そう見える?」

 僕はやや上向きで問い返す。

 並んで歩いてるとね、うん、姉弟にしか見えないだろうね。僕のが小さいから。

 9歳、9歳だから。

 後数年したらロゼにも追いつき追い抜く……予定。

 ロゼは確か次兄と同い年だったかな。王太子より2つ下だから僕より4つ上。

 13歳か14歳

 にしては、大人びて見える。

 淑女としての佇まいが身についているせいかもしれない。

 金色の髪に巻き毛。

 ロゼの巻き毛がどうしてもドリルに見えて、以前は会う度に吹き出すのを堪えていた。今はさすがに慣れたけどね。

 よくよく見ると、ドリルってよりも発条みたいだ。

 歩くと振動で伸縮してる。

「9歳の子供がしてはいけないような沈痛なお顔ですよ。そんなお顔では、リアルテ様が心配なさいます」

 僕は自分の顔をペタペタと触ってみる。

 鏡がないと分かんないよね、自分の表情なんて。

「気を付けないとね。リアルテに心配かけちゃいけない」

「殿下は、そんなに急いで大人になられずとも良いような気もします」

 ロゼは、僕のことを心配してくれているんだろう。

 まだ子供なのに子供らしくない振る舞いの多い僕は、無理に早く成長しているようにも見えるのかもしれない。

 それは少し間違っているし、なにより、僕にはそれが求められたんだよ。

「立場上、子供をしていられないんだよ」

「ですが」

 彼女の眼は痛々しいものを見るようだった。

「僕はさ、王子であっても後ろ盾が無いでしょ。普通の子供だったら、今ここにこうしていられなかったと思うよ」

 僕の扱い、僕だからどうということはなかったけれど、普通の子供だったら心折れてたかもしれない。

「それにね、王侯貴族というものは可能な限りの国への奉仕者じゃないといけないと思うんだよ。

 王族だって人の子だからできないことはあるよ。でも、やりたくないことを出来ないことに含めちゃ駄目なんだ。そして、奉仕者であることが嫌なら身分を捨てればいい。

 国に人生を捧げるからこその特権だよ」

「ご立派なお考えと存じますが、それでもやはり殿下のお歳ではそれは厳しいのではないでしょうか? もう少し、子供でいる方がいいのでは?」

 言わんとすることは分かるよ。

 でも、やっぱりできるならやらないといけないんだよ。僕らは。

「僕はこうだから、リアルテを保護もできたし、君の修道院行きを止めることもできた。だから、僕はこれでいいんだよ」

 僕が無力な子供だったなら、実家で冷遇されるリアルテはもっと長くその境遇から抜け出すことができなかったろうし、政治的思惑で家から縁を切られざる得なかったロゼは予定通り修道院に行き、生涯をそこで過ごすことになったろう。

 僕が普通では無いから2人とも救うことができた。

 もっと言えば、あの森で怪物たちに出会ったとき、普通の7歳児だったらミリアを救えなかった。

 今の僕だから、救えた、と言うと言い過ぎかもしれないけど、少しだけ良い方に変えられた今の人生があるのだと思う。

「殿下」

 ロゼが立ち止まったものだから僕も立ち止まり、僕らはそこで見つめ合った。

 悲しいかな、身長差のせいで僕はちょっと上を向いてないといけない。

 改めて見ると、いや、そうでなくともロゼは綺麗だった。

 輝くばかりの金髪で、見事な巻き毛。

 王太子の婚約者候補の中でもかなり優位な立場だった。僕も次兄も将来ロゼを義姉と呼ぶことになるだろうと信じて疑わなかった。

 聡明で勤勉で、常に努力を怠らない人。

 真面目な人だったからこそ、保身より民のことを思ってしまった。

「もし殿下が普通の子供でしたら、そもそもわたしは修道院に送られるようなことになっていないかと思いますよ」

 ああ、気付いちゃったか。

 そうなんだよねえ。

 僕もね、言ってから気付いたけど、ロゼが王后殿下の不興を買ったのって僕が原因なんだよね。

 王太子が手掛ける事業について僕に相談に来たりしたから駄目だったんだよね。普通の子供に、そんな相談しないよね。

 原因が僕にあるのなら、そのフォローをしたところでちっともプラスじゃない。

「それって僕のせいかな?」

「割と」

 割とってなに?

 ロゼって、そんな冗談言う人だっけ?

 いや、冗談は別にいいんだけどね。まあ、あれだ。それだけ打ち解けて来たってことなのかな?

「殿下」

「なに?」

 見上げる僕にロゼは自分の巻き毛を手に取って、

「触ってみます?」

「え? なんで?」

「孤児院に慰問に行くと、小さい子にはこの髪が玩具に見えるようで、よく引っ張られるんです。

 殿下、昔から気になさってましたよね?」

 ……。

 気付かれていた、だと!

 そう言えば男の視線って女性は結構分かってるとは聞いたような。

 え、僕がいつもドリル状巻き毛を気にしてたの知ってた?

「いや、ええと」

「小さい子たちは遠慮しないものですのに、殿下は小さな頃から見るだけで我慢してらっしゃいましたよね」

 そりゃねえ。

 ドリルみたいだからって手に取って遊ぶわけにも行かないでしょ。

 いや、小さいときならそれが許されたのか……やっておくべきだった。

「いいんですよ、今もお小さいのですから」

 それは言わないで欲しい。

 9歳と13歳、体格差は大きい。

 9歳でもさ、大きい子はいるよ。でも、僕はそうじゃないんだ。

「リアルテに追い越されそうで気にしてるんだから、そこは触れないで」

 僕が素直に言うとロゼはちょっと驚いた顔をして、

「殿下がそんな子供のようなことを気になさってるとは思いもしませんでした」

 僕を子供扱いしてるのか、そうじゃないのか、どっちなのさ。

「リアルテ様は、殿下の背が高いとか低いとか、お気になさらないと思いますよ」

「だとしても、僕が個人的に出来れば同じか高くなりたいの」

 これはどうでも良いと言えばどうでもいい、僕の個人的な考えだ。

 男性の方が背が低いペアなんていくらでもいるし、そういう人たちを見たって別になんとも思わない。僕がそうありたいと思ってるだけの話なんだ。

 これを子供っぽいと言うんだろうか?

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