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王太子暗殺未遂事件~存在しない容疑者~  作者: S屋51
第四章 庭師の少年

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「年端も行かぬレリクスを独り牢に閉じ込めておきながら、自分たちは身分に見合った対応をせよと? 恥知らずどもめ。陛下がお戻り次第、厳しい沙汰が下るであろうからそのつもりでおれ」

 ううん、次兄はどこかぽわんとした人だと思っていたけれど、ちゃんと王族仕様の顔があるんだ。ちょっと見直した。

 引き立てられて行く近衛騎士たちはある者は青ざめ、ある者は紙のような白い顔色になり、ある者はぶつぶつとなにか言っていた。

 ラッツだけは納得が行っていないようで、もう詰まらない発言をしないようにと猿轡を噛まされていたけど、僕を睨む眼はまだまだ元気。

 今日まで会ったこともなかったと思うんだけど、よくそこまで僕を憎めるものだ。

 今日の失敗は全部自分のせいなのに、認められないらしい。自分の落ち度をどうしても認められない人ってたまにいるよね。そういう人は常に責任は他人にあると主張するんだよね。で、この場合の対象は僕ってわけだ。

 彼は首を刎ねられるその瞬間まで僕を恨み続けるんだろうね。

 ああ、なんか、一件落着、って言いたい気分。だけど、落着してないんだよね、実は。

「さて、レリクス。たまには兄としておまえに説教したいと思う」

 え、なんで?

 しかも、なんか少し嬉しそう?

「おまえは生意気だし、口が減らないし、腹黒で陰険で性格悪いけれど、それでも可愛い弟だ」

 いや、それ前半部分要りました?

 可愛い弟だ、だけでいいんじゃないですかね。

 ロゼも将軍も納得顔しないように。

「あの騎士たちの行いは論外、おまえを侮るにもほどがあるというものだが、そうやって侮られているのはおまえも悪い」

「僕はなにも……」

「そうなにもしてない。それが問題なんだ。悪評を消す努力もせず、むしろそれを隠れ蓑にやりたい放題やっているだろう」

 反論したいけど、一部正しいからなあ。

 別に隠れ蓑にしてるつもりはないんだ。悪評立てられている当人が反論しても騒ぎが大きくなるだけなんだよね。強い後ろ盾があるならいいけど、孤軍奮闘じゃ疲れるだけだよ。

「それに、おまえは自分の離宮の管理も悪い。門も作らず、塀も作らず、だから誰でも好き放題に行き来できる」

 いや、9歳児なんですけど。

 昔からあった宮を使ってるだけだし、そもそも端っこだからちょっと人が通り過ぎるってところでもないです。

「近衛も配置してないだろ」

 プライバシーの侵害が嫌なんです。

 近衛にはラッツみたいなのいるし。

 ちょっと、ロゼ、君は僕の味方じゃないの? リューイ兄に一々頷くってどういうこと?

「そもそもだ、なんで近衛に連行なんてされてるんだ。おまえのところの客分殿たちならあんな連中どうとでもなったろ」

 そりゃ、アルティーネやリルフィーネなら制圧できたかも。

「リアルテ、公爵令嬢の前で暴力沙汰は避けたかったんですよ。子供に暴力を見せるのは良くない」

 それは甘い考えかもしれない。

 今は沈静化していても、いつかはどこかの国と戦争になるかもしれない。この国の歴史を振り返れば、今後二度と戦争がないなんてことは言い切れない。

 それでもさ、避けられるのならリアルテには暴力に係わって欲しくないよ。

「気持ちは分かるが、それでおまえの身が危険に晒されては駄目だろう」

「そうは言っても近衛騎士でしたから、命を取られるようなことにはならないだろう、と」

 それについては考えが甘かった。

 ラッツは想像以上の考えなしだった。なにかの切っ掛けで激昂すれば、本気で僕を害しかねない男だった。

 あ、副団長がビクビクしてる。

 リューイ兄上からお叱りあると思ってるのかな? あるかもしれんけど。

「誰が相手であろうとも、不当に拘束されるのを受け入れたら駄目だろう。庭師の子供に間違えられたのだってな、おまえが日頃から王族としてちゃんとしていれば良かったんだ。そうすれば利用されることもなかった」

「そこは、僕だったから嘘が容易に見破れたと」

 本当に庭師の子供がいたら、調査だなんだと面倒なことになってたところだよ。

 僕のことを勝手に間違えていたから完全否定できただけでさ。

「褒められたことか」

「兄上のところに行った侍女の嘘も、僕のところが普通じゃないから分かったことじゃないですか」

 普通は侍女ぐらい数人いるからね。

「別に誰が来ても、柿を持って来たという時点で怪しんでたよ」

 そりゃそうか。

 と僕が納得する横から将軍が、

「何故、柿だと怪しいのですかな?」

 そっか、知らないからね、将軍は。

「確かに去年までは僕の離宮で採れた柿を贈ってたんだけどね。新しい宮を建てるのに邪魔だから移植したんだよ。リューイ兄上のところに」

 大掛かりな工事になるから伐った方が楽だったんだけど、柿が実を付けるようになるまで時間かかるし、もったいないからね。

「リューイ兄上は好物だし」

「好物? 柿とは、渋いでしょう。稀にそうでないのもあるそうですが、好物なのですか?」

 将軍も変なところに食いつくな。

 そうそう、この世界の柿はどうにも渋いのが多い。昔々知っていた柿とは似て非なるもの。色もね、ちょっと違うよ。

 そもそも柿は「かき」とは呼ばないからね。

 味や形状から僕が「柿」と言ってるだけで。

「干すと甘くなるんだよ」

「ほう、甘い」

「うん、甘い。結構人気なんだよ」

「レリクス殿下」

 急に将軍に詰め寄られた。

「なに?」

「娘のことは気に入っていただけていると思っておりますが?」

「カミラ? そりゃ気に入ってるよ。だから婚約したでしょ」

 上を目指していない僕が政略で婚姻相手を決める必要はない。

 カミラは容姿もいいし、頭の回転も速い。将来的に領主の仕事を手伝って貰える信用できる人材として有用だった。

 ロゼはいつかはどこか嫁ぎ先を世話してあげるつもりだし、秘書と奥さんじゃ違うからね。いや、秘書もできる奥さんになるのかな。

「干し柿なるものを当家がいただいた覚えが御座いません」

 ……

 ああ、そうか、そうだった。

 ドラクル将軍は名前が恐いし、顔も恐いけど、大の甘党だった。

 干し柿は一般的じゃないからね。甘いものと聞いて欲しくなったわけか。

「ああ、数がそんなになくて、カミラ嬢と会うタイミングが……いや、済まない。次の機会には将軍に届けさせるよ」

 柿の木は手を離れたから、次の機会があるかどうか知らんけど、こう言っておかないとまずい気がする。

 将来的には舅になる予定だからね、この将軍。

 カミラと将軍の父娘もそうだけどさ、遺伝子って時々サボってるよね。言わんけど。

 リーチェの父親であるノイグは分かり易く娘を可愛がっている娘馬鹿だけど、ノイグとはタイプが全然違うのにドラクル将軍もよくよく観察すると娘馬鹿なところあるんだよね。

 父娘だからね、それでいいのかもしれない。

 僕んところのパパンも継承者という点で息子は大事だけど、あからさまに娘の方を可愛がってるからね。

「柿や侍女の話がなかったしても、おまえを疑うことはないけどね」

「そこまで信頼していただいてるとは知りませんでした」

「おまえがその気なら、私は気付かぬうちに死んでいるだろ」

「……どういう意味でしょう?」

「失敗などしないと信じてるんだが?」

 なに、それ、恐い。

「兄上は、僕をなんだと思ってるんです?」

「弟だな。ただし、一般的かどうかに関しては他に弟がいないので比較できない。想像で言うなら、かなり別格だと思う」

 ホント、どういう意味?

 もうそこは突っ込まないことにした。どんどん嫌な気分になりそうだから。

間違い無く、その「弟」は標準的ではありません

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