第一話「始めの最後」
――死ぬ。
あんだけ、大口叩いたんだけどな
やっぱり、他人を信じるもんじゃない・・・・・・
簡単に裏切る。
‥‥体中に刃が突き刺さる
俗に言う、めった刺しというやつだ
最も今回は、氷で造られた刃だけども・・・・
血が臓物と共に体外に飛び散る感覚。
今まで経験したどんなケガよりも、熱い、熱い、熱い。
体中に、熱がこもる
氷は本来、冷たいはずだが、
体が体温を上げて"痛み"で意識を失うまいと。熱で抵抗しているようだ
だがそれとは反比例するように、どんどんと、視界が暗くなっていく
――――寒い。
腕と左足の感覚がない
眼も口も動かなくなってきた
叫びたくても――‥‥‥あー、動かない。
このまま死ぬ。
理解できる、これが最後の壁であり、‥‥絶対に乗り越えられない
詰み。
折角のやり直せる機会、もう二度は訪れないだろう
涙が頬を微かにつたった
――――‥‥‥‥死にたくねえよ。
死の恐怖が体をめぐる中、
最後の、力を振り絞り、暗い視界を少し上に向ける。
眼前にひらひらと、白いローブを纏った誰かが‥‥近くに
徐々にこちらに歩いてきている。
冷たい土煙が、絶え絶えの息に混じり、
血の味も、鉄の匂いもかき消えていく。
‥‥鼻に残った最後のにおいは、ほんの少しの花の香。
思い出せない微かな記憶‥‥‥
近づいてきている可憐な少女は、俺を殺したのだろう。
だが、俺は別にこの少女を恨んでいない、
かといって、きっぱりと軽い気持ちで、諦めているわけではない。
ただ、消えゆく意識の中で、これだけを思う
――――‥‥‥あの神は、必ず殺す。