水曜朝の会
黄金時代という人もいるけれど、そんな高校時代を過ごした人はどれだけいるんだろう。
矢口はクラスでは、お調子者で通している。もっともいつだってお調子者というのは疲れるものだ。
「おい、矢口。きいてるか?」。
「おお、なんだ?」。
「お前でいいよな、文化祭の実行委員」。
「何で俺なんだよ」。
「だってお前そういうの好きだろう?」。
「はあ?なんでだよ」。
「みててわかるだろ。誰もこのクラスじゃあやれるやついないんだよ。やりたがるやつともいえるけどさ」。
サッカー部の練習だって忙しいしそんなゆとりあるのかな。少し同情しながら僕は彼を見ていた。 クラスでは学級委員の上野が面倒くさそうに彼のほうを見ていた。早く彼に決まってしまえばいいと言いたげだった。
「おい、ちょっとまてよー」。
間延びしたように矢口は言うとあたりを見渡した。僕を含めてやっぱり彼を見ていた数人が目をそらした。その中に内海もいた。彼はいつでも一人でいることで有名だ。
「わかったよ。やればいいんだろ。まったくこのクラスはしょうがないな、俺がいなかったらまとまらないだろ」。
「とかいって嬉しそうだよ。まんざらでもない顔しちゃって。ねえ」。
そういったのはさおりだ。何枚も重ねてつけたようなまつげをぱちぱちとさせている。指の爪は毒々しい紫色だ。こうしてみると爬虫類の何かみたい。
「よーし、そうと決まったら早速ダンスの練習な。毎年クラスごとでダンスをやって点数競うだろ。もちろん今年はこのクラスが一位でしょ。」
矢口がそういうのと、内海がうつむくのとが一緒だった。
チャイムが鳴って古文の先生が入ってきた。