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Story 7

 闇。前後も左右も分からない、暗闇。その中に、存在感を放つ扉がそびえ立つ。その扉の向こうからは、水の流れる音と人間の賑やかな声が聞こえてくる。


 扉の前には、黒猫が丸まっている。ここは、「未成年の自殺者の魂」がやってくる空間。この黒猫は、この扉の門番である。ここへ来た魂に選択肢を与え、送り出す役割をしている。


 今日もまた、一つの魂がやってきた。


 「・・・問おう、何故に自ら死を選んだ?」

 「私・・・、真面目すぎたのかな。他の皆よりちょっと成績がいいから、ってだけでいじめられたの。」

 魂は苦笑するように揺れ動く。

 「ふむ・・・、女子しかおらぬ学び舎なんぞそのようなものであろう。お前は肝が据わっているように見える。反抗できたはずだが?」

 「そんなの、できっこないよ。意気地なしだから。それに、女子高に進学したのは私が行きたかったからだし。」

 女子高が質の悪い場所だというのは、黒猫も知っている。経験上、女子高は悪の掃きだめ。黒猫に言わせてみれば、肥溜めも同等だ。

 「お前、かなり成績が良かったのだな。級の中で1番じゃないか。」

 「・・・他のクラスにもトップはいるのに、私以外皆、陽キャ女子とか、慕われてたりとか、明るい人ばかりなの。私は・・・、彼女たちと比べると暗いから。」

 魂はどんどんマイナスカラーに染まっている。黒猫は申し訳なさそうな顔をして話題を変えた。

 「お前の名前を聞いてなかったな。」

 黒猫はいつも通り名簿とペンを呼び出す。

 「花澤 蓮珠(はなざわ れんじゅ)。」

 「性別、年齢を。」

 「女、16です。」

 ペンはスラスラと名簿の上を走る。

 「では次に現世を見てもらおう。」

 黒猫が呼び出した蓮池鏡が映し出したのは、女子高内のとある一室。教室だろう。皆、困惑の「顔」はしているが、色は無を表している。

 『ねェ、どうすんの?蓮、死んじゃったじゃ~ん。』

 『知らないよ。どーせ弱虫だったんだし。仕方なくない?』

 全く反省していないようだ。むしろ、喜んでいるようにも見える。この様子を見た魂は悲しい色に染まっている。困惑顔をしているのは、彼女らでいう「おもちゃ」がなくなったからだろう。

 黒猫は嫌気がさしたのか、顔が険しくなっていく。次に映し出したのは、蓮珠の親と思しき大人。こちらは心の底から困惑しており、他にもいろいろな感情が渦巻いている。

 「お父さん・・・、お母さん・・・。」

 魂は悲しそうに光る。

 『私があの子の変化に気づけなかったから・・・。』

 『あまり自分を責めるな。これは俺たちの問題だ。俺もあいつのことはほとんど介入しなかった。俺にも責任はある。』

 『でも・・・。』

 『もうやめるんだ。深く考えて自分を責めるのは・・・。』

 そこで蓮池鏡は消えた。静寂が訪れると、魂は静かに涙、光の粒を落としていた。黒猫は顔色を変えることなく、いつもの質問をする。

 「お前は、これからどうしたい?生きるか、死ぬか。」

 「・・・?」

 魂は光の粒を落としながら、疑問を抱く。

 「選ばないのか?意味が理解できなかったか。お前はこれから生きるか死ぬか、どちらかを選べるのだ。」

 「・・・たい。」

 「何だ?」

 「私・・・、生きたい!!」

 魂は何かが吹っ切れたように叫ぶ。あまりの声量に驚いた黒猫は大きく目を見開いた。

 「・・・分かった。ではこの門を潜ることだ。」

 黒猫は身震いを一つして門へと向かう。いつものようにひと鳴きして門を開ける。門の先に白くまぶしい空間が現れる。

 魂がどうすれば良いのか分からず動かずにいると、黒猫は誘うようにうなずく。魂はゆっくりと前進し、門をくぐる。そしてそのまま進んでいくよう、黒猫が促す。見届けた黒猫は、定位置へ戻る。背後で門が大きな音を立てて閉まると、いつもの静寂が訪れる。


 いつもの暇な日、黒猫はいつもの場所でうとうとしていた。唐突に蓮池鏡が開き、黒猫の目を引く。そこに映し出されたのは、蓮珠の姿。どうやらイバラの道を抜けたようだ。蓮珠がいじめの主犯に反抗し、密かに反抗心を持っていた元いじめグループが蓮珠に同調したことでクラスのいじめはなくなり、蓮珠は友達も得て平和な日常を過ごしているようだ。

 蓮池鏡が閉じると、黒猫には再び退屈の時が訪れる。伸びをしてあくびを一つすると、黒猫はまた、魂を待つ。

遅ればせながら今月も更新することができました…

この調子でもう一つも進めばいいんですけどね…

そう上手くいかないもので…

やる気、どこ…?

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